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第106階層

「え、えっと……今度は、何かな?」


 女王陛下の部屋に向かったのだが、本格的に体調不良なのか、まだ日も暮れていないというのに部屋を暗くしてベッドに横たわっていた様だ。


「いえ、この間の事で……」

「ああ、そうだ! 君に相談したい事があったんだよ!」


 こないだの謝罪しようとすると、慌てて遮って来る。

 オレが部屋に入った時からビクビクしていて落ち着きがない。

 何か、後ろめたい事でもあるのだろうか?


「相談は後程でも……」

「いやもう、どうせロクでもない用事なんだろ? そんなの後、あと」

「特に用事と言う訳ではありませんけど」


「本当に? 君が用事もなく私の部屋に訪れた事なんて今まで一度もないジャン」


 なんだがトゲのある言い方だな。

 いやまあ、事実、その通りなのだが。

 アクレイシス女王は用事がないならこっちの話が先でも良いよねって言ってくる。


「ダンジョンの中に国境を引こうと思うんだが、どうだろうか?」


 また何か、妙な事を言い出したな。


 今、日本円ダンジョンには世界各国から続々と子供達が集まってきている。

 各国の王族は競って、王子・王女まで寄越して来る。

 そんなお偉いさんが来るものだから、コバンザメの様に配下のお貴族様も集まっている。


 しかし親御さんはどう思って日本円ダンジョンに子供達を留学に出しているのだろうな?


 まるで前世の江戸時代の様に、お江戸に子息を人質として出している様なもんだろうに。

 また、カーラード王国が平民を集め出したのを見て、各国もそれに倣って平民まで送り出して来だした。

 部屋数拡張用のダンジョンコアのお土産と一緒に。


 下は本物のダンジョンがあるので階層を増やす訳にはいかない。


 なので、どんどん横方向へ広げていっている。

 問題はだ、無計画に増やしていっているので、仲の悪い国同士が隣り合ったり、ポツンと一軒家レベルで他の国に挟まれてしまったり。

 国も違えば文化も違う、食べ物や着る物もあれは許せねえ、ってのが出てくる。


 やっぱり国どうしてまとめた方が良いのじゃないかと。


「なるほど、正式に国境を引いて、こちら側で管理していこうと言う訳ですか」

「そうだね、部屋の大きさなんてそんなに変わらない、引っ越し費用を公営で賄うならそれほど問題も起こらないだろう」


 引っ越し費用と言っても、建造が必要な物がある訳でもない。

 ほぼ人件費だ。

 そして通路にはムービング・ウオーク――――動く、通路もある。


 荷物の持ち運びも楽に行える。


 問題は場所選びだな。

 リニアモンスターカーがあるステーションや、転移エレベーターがある近くが良いと言う人も多い。

 ならば、中央から外側に向かって伸びるように縦に長く国境を設置して、後は国の内部で決めてもらえれば、こちらの手間も減るというもの。


 ハーキャットさんにお願いして、転移エレベータの数を増やしてもらおう。


 そうすれば中央部ばかりに人気が集中するという事もなくなる。

 むしろ外側の方が静かで良いという人も居るかもしれない。

 しかし、国境を引くという事はダンジョンの中に複数の自治が出来る事でもある。


「そうだね、だから誰かそれを束ねる人が必要となる」


 なので、旧カーラード王国の王都で行われている制度、大統領制度をこのダンジョンでも立ち上げればどうか、と言ってくる。


 ふむ……前世のアメリカ合衆国の様にするわけか。

 オレは少し、考え込む。

 参画するのは州ではなく、国だ。


 その権限も州とは大きく異なる。


 中には大統領の指示に従わない国だって現れるだろう。

 強権的な大統領制より、議長程度に収めた方が良いのではないだろうか。

 アメリカ合衆国より、ヨーロッパ連合体――――そう、EUに近い形の方が良いと思う。


「ただ、王様の様な国の代表が大統領になるのには少々問題がある」


 まあ、あるでしょうね。


 例えば、アクレイシス女王が大統領になったとして、世界一を豪語する帝国が従うだろうか?

 だからと言って帝国皇帝が大統領になったとしても、今一番嫌われ者の帝国に従順に従うだろうか?

 帝国支配を嫌っている国だってある訳だし。


「そこで帝国皇帝陛下とも少し話をしてみたのだが、イース君、君を日本円ダンジョンの大統領に推薦しようと」


 いやいやいや、何を言っているのこの女王バカ


 しかも皇帝陛下と話がついているだって?

 今や、オレだってカーラード王国の王家の一人だぞ?

 えっ、王家の一員まで省いてしまうと話が進まないだって?


 そりゃ、そうかもしれませんがね。


「もっと良い案がありますよ」


 とりあえず、帝国皇帝陛下並びにダンジョン運営に関わっている貴族たちを呼び出し、一つの提案を行う。


「ふむ、各国の代表者が持ち回りで議長を務めるのか?」

「はいそうです。とりあえず最初は1年または半年ごとで、初代は皇帝陛下が勤められるのが良いと思います」


 あくまで議長だ。


 大きな権限はない。

 ただし、各国の代表を集め、会合を開く権限は持つ。

 気に入らなければ何回でも会合を開けるし、変えたくなければ会合を開かない事もできる。


 それぐらいの旨味は必要でしょ?


「別にダンジョンの運営を会議に任せると言う訳でないのだな」

「そうです、各国の要望などをまとめる役目ですね」

「ふむ……まあ、いろいろと言いたい事がある国もあろう、その発散の場にも良いかもしれぬな」


 という事で、大統領制はお流れになりました。


 なお、わが女王陛下は議長になるのは一番最後で良いよ、という謙虚さを発揮されました。

 というか、やりたくないんだろ、そう言うの。

 人の意見をまとめるのなんて、どう考えても向いていない。


 というか王様だったら、普通は皆の意見をまとめるのが本業なのに、それに向いていない女王陛下って一体……

 こいつの頭なら連邦制だって思いついただろうに、大統領制を推してきたのはきっと自分がやりたくなかったからに違いない。

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