第101階層 恋するアクレイシス・カーラードその2
あぁあああ~~~……! ヤっちまったぁぁあああ!!
いやでも仕方無いよね!?
人工衛星の打ち上げ成功の熱気も冷めやらず、ほろ酔い気分にあてられて、ふと気づいたら、隣に好きで好きで堪らない人が眠っているのだよ?
どうして手を出さずにいられるものか!
ロケットの姿勢制御と言う大きなプレッシャーの中、彼が現れたのを見て、彼ならやってくれる、そう思ったらコントローラーを差し出していた。
戸惑いながらも文句一つも言わず、コントローラーを受け取る彼。
必死で操作し、最後に画面が回り出した時はもう駄目だと思った。
だが、彼は決して諦める事がなく、最後までコントローラーを放り投げず全てのボタンを駆使してロケットの姿勢を保つ。
真っ黒になった画面に、全員が失敗を覚悟した、その瞬間、青く輝く地平線が画面に映りだす。
思わず抱き着いて頬ずりしたいぐらいだった!
そんな愛しい愛しい彼が隣で無防備に寝ている。
そんな彼と私は抱き合っている。※多少の誇張が混ざっております。
そうなれば続きが発生するのも必然な事。
彼だってその気がないのに一緒の布団で寝ようとはしないよね?
それに私たちは夫婦なのだ、そういう事があっても自然な事ではないか。
むしろ今まで、なかった事自体が不自然である。
そんな言い訳を心の中で並べていた所、衝撃の報告に耳を疑う。
なんでも旧皇都の宝物庫で素っ裸のクレスフィズ皇子とイース君が居たと言う。
は?
なんでそうなっているの?
男同士で何をしていたんだろう、と皆が言うが、クレスフィズ皇子は本当は女性だ。
女性と男性が裸で何をするかって言うのは、そんなの決まっているだろう?
は!?
なんで!?
そう言えば最近、クレスフィズ皇子はイース君にしきりと付きまとっていたと聞いた。
それはイース君自身からも聞いた話だ。
その時は冗談で、クレスフィズ皇子も君の事が好きになったんじゃ、なんて言ったけど……
まさか、噓から出たまこと!?
どっ、どっ、ど、どう言う事?
イース君はどちらかと言えばクレスフィズ皇子を嫌っていたはず。
あっ、でも、その嫌っていた相手が女性だと気づいた。
そこでクレスフィズ皇子が胸の内を打ち明ける。
それまで嫌っていた反動でその場に流されるイース君。
うぉぉおおおお! と心の中で吠える。
いや待て、まだ早急だ。
うん、例えそうだとしても、あのイース君がそうやすやすと手を出すはずがない。
オキクさんとして告白してベッドインするまで、どれだけ時間がかかった事か。
…………決して、私に魅力がなかった訳じゃないよね?
そう思ってしばらく二人を観察してみる。
何やら、以前と違って親密気な気がする。
偶に、二人っきりで隠れて話をしているのを見かける。
どうして隠れるの?
あれ? ちょっと待って、コレ、ヤバくね?
向こうは正真正銘の女性、対してこちらは、男と思われている女性。
さらに、まもなく私たちは家族となる。
おお、なんという事だ。
体面上は、私(女性)×皇子(男性)とイース君(男性)だが。
実際は、イース君(男性)×皇子(女性)と私(女性?)となる。
この?部分を取り除かない限り、イース君(男性)×皇子(女性)のカップルが成立してしまう。
今からでも皇子との婚姻はなかった事に出来ないだろうか?
ああ、なんであの時の私はあんな事にうなずいてしまったのだ!
女性だから良いかって、女性だからこそ、ダメじゃないか!
このままではイース君を取られてしまう!!
思わず、ガー様に泣きついてしまう。
「涙と鼻水が汚いので、顔をくっつけないでくれませんか?」
「ガー様、なんとかしてよ~」
ガー様は嫌そうな顔をしながらも「私も少々、焚き付けたかもしれませんし」と話を聞いてくれる。
「そんなに心配なさる様な事ですかね?」
もう少し、イース様を信じてあげても良いのでは、と、なぜだか私のおなかを見ながら言ってくる。
「何? ちょっと太った?」
「いえいえ、何でもありませんことよ」
ともかく、まずは、イース様がクレスフィズ皇子の事を女性だと気づいているかどうかを調べてみてはどうでしょうか? と提案される。
なるほど、その前提条件さえ崩れてしまえば、男同士の友情に収まる。
いやでも、裸で一緒にいたんだから、さすがに女性だと気づくだろ?
「その話ですが、裸だったのはクレスフィズ皇子だけで、イース様は服を着ていたそうですよ」
「いや、皇子が裸だったら駄目じゃない?」
「そうとも言い切れませんよ? イース様なら例え相手が男性であろうとも視線を逸らすぐらいはするでしょう」
なるほど、でもどうやって調べる?
「普通に聞いてみてはどうでしょうか、皇子までTS薬でも飲んだらどうするとでも」
そこでいつも通りの嫌そうな顔をすればシロ。
多少でも動揺するならクロ。
ですわね。と言う。
さっそくガー様の助言を受け、イース君に聞いてみる。
「そもそも、TS薬――――――性転換する薬など、本当にあったのですか?」
「へっ?」
突然そんな事を言われ、思わずしどろもどろになってしまう。
イース君はため息を一つだけつくと、
「もし、私との行為が嫌でそう仰ったのでしたら、心配なさらずとも、手はだしませんよ」
などと言う。
えっ、ちがっ……
そう言うとイース君は立ち上がり部屋を出て行ってしまう。
…………どうして、こうなるの?




