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99話 不安な要素

 村の広場に戻ると、大人たちが険しい顔をして、忙しなく動いていた。

 父さんと母さんの姿もあった。


「どうしたのかな?」

「わからないが……あっ」


 ジニーとアレクシアを見つけた。

 二人に声をかける。


「ジニー、アレクシア。いったい、なにが起きているんだ?」

「アルト君、エルトセルクさん! よかった、今、二人を探しに行こうと思っていたの」

「魔物が現れて、怪我をした人が出たみたいですわ」

「なっ……!?」


 予想外の事実を聞かされてしまい、動揺してしまう。


 小さな村ではあるが、きちんと結界が設置されている。

 魔物の侵入を許すことはない。


 しかし、自分から外に出てしまうことがある。

 薪の調達や、薬草や野草の採取……それと、他の村に交易に向かう。

 小さな村なので、そういうことをしなければ生活が成り立たないのだ。

 危険ではあるが、背に腹は代えられない。


 無論、村の人もなにも対策をしていないわけではない。

 結界の外に出る時は、腕の立つ人に同行を頼む。

 他の村など、遠出をする時は、村に立ち寄る冒険者などに護衛を頼む。


 そのようにして、自衛策をきちんと練っているはずなのだけど……


「その人はどこに?」

「村の治癒院にいるよ。不幸中の幸いっていうか、自力で歩けないほどの怪我は負っていないみたい」

「そうか……」


 ほっとした。


 小さなところ故に、村の人はみんな家族のようなものだ。

 もしも、命を落とす人が出ていたらと思うと、ゾッとした。


「俺たちも様子を見に行こう」

「うん」

「あうっ」




――――――――――




 村にある唯一の治癒院は、普通の家を軽く改装したところだ。

 外観は他の家と変わらない。


 治癒院の周りには、事件を聞きつけた村の人がたくさん集まっていた。

 皆、心配そうな顔をしている。


「あぁ、アルトじゃないか」

「アルトも事件を聞いて?」


 村の人の何人かがこちらに気づいて、そう声をかけてきた。


「状況は? 誰が被害に?」

「うちの隣のハイツさんだ。薪を調達していたら、いきなり魔物が襲ってきたらしい。グリーズさんに同行を頼んだみたいだけど、魔物の数が多くて……」

「ただ、二人共、命の危険があるとか、そういうことはないらしい。軽傷だってさ」

「なるほど……わかった、ありがとう」

「アルトも見舞いをするか?」

「いや、今はやめておく。後にするよ」

「そうか、そうした方がいいかもな」


 話を終えて、ユスティーナたちのところへ戻る。


「アルト、どうだった?」

「襲われた人の怪我は、そこまでひどいものじゃないらしい」

「そっか……よかったね」

「ただ……妙なんだよな」


 ハイツさんは、いきなり魔物に襲われたらしい。

 そのこと事態はたまにあることで、そこまで不思議に思うことじゃない。


 ただ、魔物の数が多い、という話は気になる。

 一匹二匹なら現れることはあるが、魔物が群れで行動するなんてこと、この辺りでは珍しい。

 そんな情報があれば、騎士団などに動いてもらい、討伐してもらうのが普通だ。


 しかし、騎士団が動いたなどという話、一つも出てこない。

 となると、最近になって急に魔物が増えたことになる。

 なにかしらの要因が重なり、魔物が異常繁殖したか。

 あるいは、他所から流れ込んできたか。


 どちらにしても、厄介なことになりそうだ。




――――――――――




 その夜……村長の家に村の人たちが集められて、緊急会議が行われることになった。

 議題は、もちろん魔物について。


「魔物の駆除はできないのか? それほど強い魔物じゃないんだろう?」

「無茶を言わないでくれ。相手は一匹二匹じゃないんだ。十匹以上……下手したら、数十匹はいるんだぞ」

「それだけの数となると、村の腕自慢を集めたとしても、対抗できるかわからないな……」

「なら、やはり王都に赴いて……いや、王都でなくてもいいか。他の街に行き、騎士に救援を求めた方がいいんじゃないか? それが確実だろう」

「でも、そのためには、どちらにしても結界のない村の外に出ないといけないんだぞ? そこを襲われたらどうする?」


 会議は難航していた。

 みんなであれこれと話し合うものの、なかなか話が前に進まない。


 声を荒げるなど、紛糾することはないものの……

 うまい解決策を見つけることができず、みんなに焦りの色が見てとれた。


「……いいだろうか?」


 ある程度、話し合いが行われたところで、端で会議の様子を見守っていた俺は、発言の許可を求めて挙手した。

 長が不思議そうにしつつ、問いかけてくる。


「どうしたんじゃ、アルト?」

「その魔物の調査、及び討伐……よかったら、俺に任せてくれないか?」

「なっ……」


 長が驚きに目を大きくして……

 その他の人も、同じように驚いてみせた。


「なにを言っているんじゃ。そのような危険なこと、アルトにさせられるわけがなかろう」

「そうだ、無茶を言うんじゃない。殺されてしまうぞ」

「力になりたいという気持ちはうれしいが、でも、勇気と無謀を履き違えたらダメだぞ」


 みんな、揃ってダメ出しをしてきた。

 心配してくれているところはあるが……

 それと同じくらい、俺では無理だと思っているのだろう。


 それも仕方ない。

 みんなの中の俺のイメージは、村にいた頃の俺だ。

 あの時の俺は、なにもできない、力がない子供だった。


 でも、今は違う。

 学院に通い、ユスティーナに出会い、仲間と出会い……

 それなりの力を身に着けたと、自信を持って言うことができる。


「アルトなら大丈夫だよ!」


 俺の援護をするように、ユスティーナが大きな声でそう言う。

 ユスティーナと面識のない長は、首を傾げる。


「お嬢ちゃんは……?」

「ボク? ボクは……アルトの未来のお嫁さんっ、えへへ♪」


 竜と言っても信じてもらえないと思ったのだろうけど……

 その紹介はいかがなものか?


 長を始めとして、みんな、さらに驚いているぞ。

 父さんと母さんは、あらまあ、というような感じでニヤニヤしている。

 後で追求されるな、確実に。


「話の途中、横から失礼します。私、イシュゼルド家の娘のアレクシアと言います」

「僕は、アストハイム家の次男のテオドールだ」


 同じく、会議の様子を見ていたアレクシアとテオドールが口を開いた。


 その口から語られた内容に、村の人たちはざわついた。

 当たり前だ。

 いくら辺境の村でも、五大貴族の名前を知らない人なんていない。


 アレクシアとテオドールのことを、名前を騙る偽物と思う人なんていない。

 なぜなら、それ自体が大きな罪になるからだ。

 偽称は立派な犯罪であり……

 五大貴族の名前を使ったなんてことがバレれば、よくて強制労働の刑。

 悪くて死罪だ。


 普通に考えて、騙る者なんていない。

 故に、誰もが二人の言葉を信じたのだろう。


「私たちが、アルトさまのことを保証いたしますわ。アルトさまならば、見事、魔物の調査と討伐をやってみせるでしょう」

「僕も保証しよう。この問題はアルトと、僕らによって見事に解決されるだろう……と」


 さりげなく自分のこともアピールするテオドールだった。


「……わかった。そこまで言うのならば、アルトに任せてもよいか?」


 長が折れて、こちらを見た。

 半信半疑という感じではあるが……

 それでも、他に頼るところがないのだろう。


「任せてほしい」


 学院に入学してから、色々な事件に関わってきたけれど……

 思えば、自分から動くのは初めてかもしれない。


 村の人のため。

 故郷のため。


 誰かのために力になりたいと思い、竜騎士学院の門を叩いたけれど……

 今、その成果が試されそうとしている。


 そう思うと、やや緊張はある。

 それでも……


「アルト、がんばろうね!」


 ユスティーナと一緒なら、なんとかなるような気がした。

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こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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