445話 始祖竜、襲来
「やあやあやあ、出迎えごくろうさま」
そして、一週間後。
始祖竜が寮の部屋にやってきた。
これから三日間、一緒に暮らして、俺とユスティーナの絆をその身で実感してもらうことになる。
みんなは、なにもしなくても、普段通りにしていれば問題ないと言っていたが……
不安だ。
本当にうまくいくのだろうか?
「じゃあ、今日から一緒にさせてもらうよ。寮でも学校でも放課後も、ついて回らせてもらうからね」
「はい」
「あ、そうそう。絆を確かめさせてもらうことになっているけど、えっちはダメね? さすがに、そういうところを見る趣味はないし、見たくもないから」
「し、しません!」
「……」
俺もユスティーナも照れて、共に顔を赤くした。
一人、意味を理解していないノルンは小首を傾げていた。
「それじゃあ、君達の絆とやらを見せてもらおうか!」
――――――――――
「ねえねえ、アルト。えっと……手を繋いでもいい?」
「もちろん。というか、今更聞くようなことか?」
「だって、何度手を繋いでも、恥ずかしくなっちゃうんだもん」
「まあ……それを言われると、俺もドキドキするな。やっぱり、ユスティーナのことが好きだから、そうなるんだろうな」
「えへへ。アルトの手、大きくて温かい」
「ユスティーナの手も」
――――――――――
「アルト、教科書を見せてもらってもいい?」
「ん? 忘れたのか?」
「ううん、あるよ」
「なら、どうして?」
「見せてもらう、ってことにしておけば、授業中も近くにいられるでしょ?」
「そうはいっても、あまり変わらないだろう」
「いいの。ほんのちょっとでも、アルトの近くにいたいの」
――――――――――
「はい、あーん」
「あむ」
「おいしい?」
「うん、すごくおいしい。また料理の腕を上げたんじゃないか?」
「えへへー、日々精進あるのみ、だからね」
「それだけじゃなくて、なんていうか……俺の好みの味付けにどんどん近づいているような?」
「どうせなら、もっともっとおいしく食べてもらいたいからね。だから、ボク、がんばってアルトの好みを覚えたんだ」
――――――――――
「ねえねえ、アルト。ボク……」
「だぁあああああああぁぁぁーーーーーっ!!!!!」
放課後になったところで、始祖竜は、我慢の限界というように叫び声をあげた。
突然のことに、クラスメイト達がビクリと震えて驚く。
「どうしたんです、いきなり?」
「カルシウム不足かな?」
「ちーがーうー!!!」
ダンダンダン、と始祖竜が地団駄を踏む。
床にヒビが入っていないところを見ると、一応、加減はしてくれているみたいだ。
「なんなのさ、君達は?!」
「なんなの、と言われても……どういう意味ですか? なにをイライラしているんです?」
「これがイライラせずにいられるか! 朝からずっとずぅぅぅっとイチャイチャイチャイチャして!!! なに、なんなの!? 私に対するあてつけ!? ふーんだっ、始祖竜とか言われてるけど、どうせ私は独り身ですよ!!!」
「えっと……」
どうして、ここまでイライラしているのだろう?
その原因がわからなくて、俺とユスティーナは困惑してしまう。
ただ……
「あうー」
ノルンを始め、他のみんなは理解している様子で、やれやれとため息をこぼしていた。




