435話 思い出をください
本当は竜で。
しかも、その最上位に位置する神竜バハムート。
その力は圧倒的で、人間や魔物相手なら簡単に無双できてしまう。
それだけの力を持っているが……
でも、ユスティーナは女の子だった。
俺達と変わらない心を持っていて。
かわいらしい女の子で。
世界で一番、大事な愛しい人。
「俺がなんとかしてみせる」
「……アルトぉ……」
「絶対に呪いの原因を突き止めてみせる。約束するよ。必ず助けてみせる。そして、これからもずっと一緒に歩いていこう」
「……」
しばしの沈黙。
そっと離れて、ユスティーナの顔を見てみると……
「うぅ……」
ぽろぽろと涙をこぼしていた。
両手の甲でぐしぐしと涙を拭う。
でも、涙は止まらなくて……
「……ばぁるどぉ……」
「だ、大丈夫か?」
美人が台無しになっていた。
ハンカチを取ってきて、彼女の涙を拭う。
「ごめんね……なんか、こう、すごくうれしくて涙が止まらなくなっちゃった。嬉し涙、っていうヤツ」
「そっか」
「えへへ」
少し元気を取り戻したみたいだ。
いつもの笑顔がユスティーナに戻る。
「ありがと。ちょっと落ち着いたよ」
「それならよかった。ひとまず、今日はもう寝た方がいい。明日も色々と情報を集めないといけないから、早く休んでおこう」
「……」
「ユスティーナ?」
「……あ、あのね。アルト、お願いがあるんだけど……」
もじもじとした様子で、ユスティーナがこちらの目を見る。
その瞳は、しっとりと潤んでいて……
なぜか、妙に艶めかしい気がした。
「ずっと先のことだけど、ボク、下手したら呪いで死んじゃうんだよね……」
「そんなことは絶対にさせない」
「絶対、なんてものはないよ」
「それは……」
「あ、ごめん。アルトの決意に水を差すつもりはなくて、ただ……後悔したくないな、って思ったんだ」
そっと、ユスティーナが抱きついてきた。
ぴたりと体が密着して……
どくん、どくんという彼女の鼓動が聞こえてくる。
「メルクリアが来たことで、もしかしたら未来が変わっちゃうかもしれない。呪いがすぐに発動して、ボク、明日にでも死んじゃうかもしれない。そう考えると怖いんだけど……もっと怖いのは、そうなった時、メルクリアがいなくなっちゃうこと」
「そう、だな……その場合は、メルクリアは生まれてくることができない。たぶん、消えてしまうだろうな」
物語でもよくある展開だ。
だから、話はスムーズに進む。
「だから……ね? そんなことは絶対に避けたいの。ボクとアルトの子供が消えちゃうなんて、絶対にイヤ」
「それは……」
「だから……って、ううん。これは言い訳だね。うん。なんていうか、その……」
ユスティーナは俺を見た。
その視線は熱っぽい。
「ボクに……前に進むための勇気をちょうだい?」
「……ユスティーナ……」
「本当は、もっとロマンチックな場面で、その、初めてを……でもでも、今は、どうしようもなくアルトのことが……わぷっ」
こちらからもユスティーナを抱きしめ返した。
「俺……ユスティーナが好きだ」
「……うん」
「愛している」
「……うんっ」
「だから、一緒になろう」
「うん!」
ユスティーナと唇を交わして……
それから、彼女をそっとベッドに押し倒した。




