433話 そんな存在はいる?
ユスティーナ以上の力を持つ者が黒幕だとしたら、納得はできる。
強引に耐性を突破して、呪いをかけることもできるだろう。
しかし。
しかし、だ。
ユスティーナはまだ15歳だけど、それでも神竜だ。
そこらの魔物なんて敵ではないし、同じ竜と戦ったとしても、大抵は圧勝してしまうだろう。
そんな彼女を上回る存在なんているのだろうか?
親であるグレイシアさんやアルマさん、姉のフレイシアさんなどは、ユスティーナより強いだろうけど……
呪いなんてかけるような人じゃない。
他の竜に関しても、強い力を持つほど高潔な魂を持っていると言われているし……
同胞に呪いをかけるなんてバカなこと、するわけがない。
「まあ、可能性の話じゃ。そこまで深刻に考えるでない」
「……わかりました」
頷いたものの、すぐに思考を切り替えることはできない。
「……ちなみに、そんな存在に心当たりは?」
「ふむ」
老竜は少し考えた後、再び口を開く。
「姫様はまだ幼いが、その力は本物。アルモートの中に限定すれば、四番目に強いじゃろうな」
四番目……
グレイシアさん、アルマさん、フレイシアさんの次、ということか。
そして、エルトセルク家が最強、という話になる。
改めて考えると、とんでもない一家だな。
その気になれば、世界征服とかできそうだ。
まあ、そんなことをする人達ではないけれど。
「ユスティーナ以上に強い存在となると、家族だけ……そうなると、犯人が誰なのかわからなくなりますね」
「ただ、過去を含めるのなら話は違う」
「え?」
「現代の最強といえば、姫様達になるのじゃが……過去、それ以上に力を持った竜がおったのじゃよ」
そんな話、初耳だ。
ユスティーナもメルクリアも知らないらしく、キョトンとしている。
「……その竜というのは?」
「始祖竜様じゃ」
「始祖竜……?」
「始まりの竜と呼ばれている御方でな。いわば、最初の竜。その方を起点として、様々な竜が生まれることになった。いわば、全ての竜の母、というところか」
「そんな竜が……」
それほどの竜がいたのなら、伝承などで後世に語り継がれていてもおかしくないのだけど……
でも、そういったことはない。
伝承だけじゃなくて、おとぎ話ですら聞いたことがない。
「それ、ボクも知らなかったかも」
「姫様が知らないのは無理もありませぬ。始祖竜様は遥か昔に旅立たれたのです。我ら竜でさえ記憶があやふやになってしまうほど、遥か昔に」
「そっかー。それじゃあ、お父さんは覚えてなくても仕方ないね」
ユスティーナ……それは、遠回しにグレイシアさんの記憶力に問題があると言っていないか?
「始祖竜様ならば、姫様に呪いをかけることも可能じゃろう」
「でも……」
「うむ。始祖竜様は、もうこの世におらぬ」
「そうですか……」
手がかりを得たと思ったのだけど、でも、そうでもなかったみたいだ。
すでに亡くなっているというのなら、ユスティーナに呪いをかけることは不可能。
別の者が犯人なのだろう。
ただ……
不思議と、その始祖竜のことが気になった。
「儂も長く生きておるが、それでも知らないことは多い。アルモートの外に出れば、姫様以上の猛者がおるかもしれん。そういう者が犯人という可能性はあるな」
「……わかりました。貴重な話をありがとうございます」
面白い話を聞くことができたものの、得られた情報はゼロ。
前途多難だ。
でも、諦めるわけにはいかない。
ユスティーナと……それと、メルクリアの未来がかかっているんだ。
絶対に助けてみせる。
「またなにかあったら来るがよい」
「はい、ありがとうございます。では」
頭を下げて、外に出ようとして……
ふと思い、老竜に尋ねる。
「ところで、その始祖竜はなんていう名なんですか?」
「始祖竜ミドガルズオルム……そう呼ばれていた」




