425話 閉ざされた未来
「ユスティーナを……助けるため?」
その言葉の意味をすぐに理解できず、ついつい繰り返してしまう。
どういう意味なのだろうか?
未来のユスティーナは、なにかしらの災厄に襲われてしまうのだろうか?
それとも……
「ママ、落ち着いて聞いてね」
「う、うん」
「未来のママは……死んじゃうの」
最悪の予想をして、それはあってほしくないと願っていたが……
その願いは簡単に裏切られてしまう。
「ボクが……死ぬ……?」
ユスティーナはキョトンとした顔に。
その顔に恐怖の色はない。
いきなり未来から娘がやってきて、自分が死ぬという運命を告げられる。
そんな急展開に、実感が湧かないのも当然だろう。
とはいえ、メルクリアの話を無視することなんてできない。
彼女の言葉が正しいのなら、ユスティーナは死んでしまう。
そんな未来、絶対に受け入れるわけにはいかない。
「詳しい話を聞かせてくれないか?」
――――――――――
今から五年後、俺とユスティーナは結婚するらしい。
ユスティーナの性格を考えると、五年後というのは遅いように感じるけど……
人間と竜ということで色々な障害があるらしく、それくらいの年月が必要になったという。
ここは細かい話は聞いていない。
それだけで一日かかってしまいそうなほど、大冒険らしいからだ。
で……
結婚から一年後、メルクリアが生まれた。
人間と竜のハーフ。
無事に生まれるかわからないし……
それに、竜の新しい王族の誕生だ。
そのことは大体的に宣伝されて、国を挙げてお祝いされたらしい。
愛する妻がいて、子供が生まれて……
そこが人生の絶頂期。
……後は、転落していくだけだった。
ある日、ユスティーナが体調を崩した。
単なる風邪かと思いきや、なかなか熱が引かない。
微熱が一ヶ月以上続いて……
一向に治らないで、徐々に高温になっていく。
咳や関節の痛み、吐血など、症状がどんどん増えていく。
何度も治癒院で調べてもらったものの、原因を解明することはできなかった。
そこで未来の俺は、病気ではなくて呪いの類ではないかと考えたそうだ。
その推測は正しく、ユスティーナは呪いに侵されていた。
しかし……その時にはすでに手遅れだった。
いや。
症状が出た時……それよりもはるか以前に手遅れになっていたのだ。
ユスティーナは、何年も前に呪いの因子を植え付けられていた。
呪いは何年もかけて、ゆっくりとユスティーナの体を蝕んでいき……
確実に呪殺できる段階になったところで発動した、というわけだ。
「それで、ママはもう起き上がることもできなくなって……うぅ」
未来のユスティーナを思い返したらしく、メルクリアは泣きそうな顔に。
「……大変だったな」
「あ」
俺は、気がついたらメルクリアを抱きしめていた。
娘が泣いている、悲しんでいる。
そう思ったら、なにかせずにはいられなかったのだ。
「もう大丈夫なんて、そんな適当なことは言えないけど……でも、もう一人じゃないから」
「……う……」
「俺たちがいるから。ここにいるから。だからもう、一人でがんばる必要はないんだ」
「うぅ……」
「だから……今まで、よくがんばったな」
「うっ、ひっく……うぁあああああーーーーーん!!!」
メルクリアは大粒の涙をこぼして、大きな声で泣いて、俺に抱きついてきた。
小さな体をしっかりと受け止めて、頭を撫でて……
娘が泣き止むまで、ずっとそうしていた。




