416話 焼き払う?
「そうだ!」
思いついた、という感じでユスティーナが声をあげた。
「なにか案が?」
「うん。どうせ壊すっていうのなら、これ、全部まとめて焼き払うっていうのはどうかな?」
「……なんだって?」
思わず真顔で問い返してしまう。
「大丈夫、ノルンの心配ならいらないよ」
「焼き払うのに?」
「ノルンなら怪我はしないよ。同じ竜だもん」
そう言われるとそうかもしれないが……
だからといって、まとめて焼き払うという選択肢が出てくるか?
最近のユスティーナは過激になっているというか、思考回路が単純になっているというか……
誰だ? 誰の影響を受けている?
もしかして俺か?
だとしたら、かなりショックなのだけど……
「アルト?」
「あー……ダメだ。焼き払うのはなし」
「えー」
「状況は極めて黒に近いが、まだ誘拐と決まったわけじゃない。もしかしたら、困っている人をノルンが助けているだけかもしれない。それなのに、いきなり焼き払うなんてできるわけがないだろう」
「うーん、ボクは黒だと思うんだけどなあ」
俺も黒だと思うが、しかし、断定はできない。
もしも白だったら取り返しのつかないことになる。
「それに、再開発地区とはいえ、全てを焼き払うわけにはいかない。下手したら、他の地区に被害が出るぞ」
「大丈夫! その辺りは、ボクがちゃんと加減をするから」
妙なところだけ成長しているみたいだ。
「ひとまず、気配を探りつつ、ノルンを探していこう」
「らじゃー! 二手に別れる?」
「……いや、一緒に行動しよう」
「アルト、ボクと一緒にいたいの? えへへー」
ユスティーナが勘違いしていたが、訂正はしないでおいた。
なにをやらかすかわからないから、一緒にいた方がいい。
そう思ったのだけど……
真実は伝えない方がいいだろう。
――――――――――
その後、再開発地区を探索して……
30分ほどしたところで、複数人の足跡を発見した。
「新しいな」
「それに、一人は小さいよ。ちょうど、ノルンくらいだと思う」
「この辺りにいることは間違いなさそうだけど……」
場所が厄介だ。
元は工業地帯だったらしく、大きな建物や倉庫が建ち並んでいる。
この中を一つ一つ確認していたら日が暮れてしまう。
「やっぱり、焼き払う?」
「ダメ」
「ちえっ」
そんなに焼き払いたいのだろうか……?
そのよくわからない衝動は、どこから出ているのだろう?
ちょっとだけ、ユスティーナの将来に不安を覚えるのだった。
「ノルンと一緒にいたという男たちを探し出して……いや、待てよ?」
必ずしも男たちを探す必要はないのか。
それよりも、ノルンを探した方が早いかもしれない。
「アルト、なにか思いついたの?」
「少し試したいことがあるんだけど……ユスティーナ、携帯食は持っているか?」
「うん、持っているけど? お腹空いたの?」
「俺たちじゃないさ。ノルンだよ」
そろそろ良い時間だ。
あれからなにも食べていないとすれば、かなりの空腹のはず。
ユスティーナから携帯食を受け取り、封を開ける。
それから、そこらに落ちているガラクタで即席のキャンプセットを作り、携帯食を火で炙る。
「これで様子を見てみよう」
「そんな……犬猫じゃないんだから」
ユスティーナは呆れるのだけど……
意外というべきか、ほどなくして効果が現れるのだった。




