408話 かっさわれた
足音は複数だ。
暗闇に潜んで様子を見ていると、五人の男が現れた。
30代くらいの男が四人。
背の高さ、体の大きさはバラバラではあるものの、いずれも鋭いオーラを放っている。
歴戦の戦士だ。
そんな四人に囲まれるようにして、10代の少年が見えた。
男たちに連れられているのではなくて、男たちを連れている立場だ。
先頭を歩き、この世の支配者のような顔をしている。
これから歓楽街へ向かい、思う存分に楽しむつもりなのだろう。
「……間違いない」
彼が親友を脅し、好き勝手にしようとしている卑劣漢。
貴族ではあるものの、本来の役目を全うしようとせず、好き勝手にする愚者。
ハインズ・エードリヒだ。
「……」
クラリッサは、標的を目の前にしても、あくまでも心を落ち着かせていた。
殺気を抱いてはいけない。
そのようなことをすれば、たちまち護衛に感づかれてしまうだろう。
だから、高ぶらせるのは決意だけ。
親友を救う。
その一念を持って、剣を振る。
「……」
ひたすらに集中してタイミングを図る。
護衛は目に入らない。
ターゲットはハインズだけだ。
護衛に邪魔されることなく、確実に彼を殺す。
その後、どうなろうと知らない。
ひたすらに集中力を磨いて、研ぎ澄ませて……
「……っ!」
いざ、一歩を踏み出そうとした、その時。
「……え?」
風が吹いた。
そう思った時には、すでに男たちは消えていた。
ハインズも。
四人の護衛の男たちも。
最初からいなかったかのように、どこにも見当たらない。
「どういうこと……?」
クラリッサはなにもできず、呆然と立ち尽くすだけだった。
――――――――――
とある貸倉庫の中。
薄暗い倉庫内に、五人の男が転がっていた。
「……」
いずれも意識はない。
ただ、念の為に手足を拘束させてもらっている。
「にひひ、うまくいったみたいだね」
「そうだが……」
「アルト、なんでそんなに苦い顔をしているの?」
「これは、誘拐以外の何物でもないからな」
ユスティーナが発案した内容は、こうだ。
クラリッサたちを苦しめる相手が何者かわからないなら、クラリッサを尾行することで突き止めればいい。
そして、犯人を突き止めた後、彼女が凶行に及ぶ前に拉致。
そうすれば自分たちで犯人を好きにできるし、クラリッサが罪に問われることもない。
「アルトさま、他に方法はないと思うので、仕方ないと思います」
「そうそう。こいつは女の敵なんだから、手加減なんてする必要はないよ」
アレクシアとジニーは、けっこう過激なことを言う。
まあ、女性の敵というのは、まさにその通りなので同情するつもりはない。
せっかくだ。
ここまできたら、とことんやってやろうじゃないか。




