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198話 思わぬ参戦者

 ユスティーナに宣戦布告をした後は、ひたすら鍛錬に励み、瞬く間に時間が流れた。

 鍛錬ばかりの時間が続いていたのだけど、少しずつではあるが強くなれるという実感があり、充実していた。


 そして、大会前日。


 俺は一人で、大会の舞台となる学院の訓練場に来ていた。

 屋内用の訓練場で、講堂よりも広い部屋の中央に、闘技場となるリングが。

 その周囲に観客席。


 この訓練場は、鍛錬を目的として利用されることは少ない。

 それよりも、テストなどで、日頃の成果を披露する時に利用されることが多い。

 故に観客席がついていて、観覧できるようになっている。

 他人の技を見ることも、強くなるための一歩なのだから。


「ふむ」


 この訓練場へ足を運ぶのは久しぶりだ。

 前回、足を運んだたのは……数ヶ月前か?

 最初の試験で、この訓練場が使用された記憶がある。


「あの時は、ひどい記憶しかないな」


 セドリックにいじめられていたことを思い返して、思わず苦笑してしまう。


 あれから数ヶ月。

 それなりに強くなることができたと思うが……

 それは、ユスティーナに届くほどなのか?

 彼女の隣に立つことがふさわしいと、そう言えるほどなのか?


「明日……答えが出るわけか」


 緊張する。

 同時に、期待もした。


 今の俺ならば、きっと届くはずだ。

 いや、届いてみせる。


「必ず勝つ」


 大会の舞台を下見することで、決意を新たにした。


「さて……」


 もう少し、下見をしておくことにしよう。

 実際に使用される会場で、明日の戦いをシミュレートすることは、それなりに必要なことだろう。


 体を動かすトレーニングは昨日で終わりだ。

 さすがに、本番を明日に控えた中で、疲労が残るような真似はしたくない。


「……」


 リングの中央に立ち、目を閉じる。

 思い描くのは、戦闘時のユスティーナ。

 彼女の力強くも、流れるような華麗な戦い方を思い描いて、それに抗う自分をイメージする。


「っ!?」


 イメージトレーニングを続ける中、突然、殺気が叩きつけられた。

 物理的な衝撃を伴うような、それほどまでに強烈な殺気。


 思わず、俺はその場から飛び退いて、身構える。

 その先には……


「……あれ? エルトセルクさん?」


 ユスティーナではなくて、フレイシアさんがいた。

 彼女のことは、まだ名前で呼ぶことを許されていない。

 故に、名字で呼んでいる。


「どうしたんですか、こんなところで」

「あなたを探していたのよ!」


 胸を張り、ビシリとこちらを指差してくる。


 相変わらずというか、彼女には嫌われているみたいだ。

 大好きな妹に手を出した悪い虫、という認識だから、それも仕方ないのかもしれないが……


 これから、展開によっては告白するとなると知ったら、どんな反応を示すだろう?


 ……殺されるかもしれないな。

 冗談ではなくて、本気でそんなことを思い、ハハハと心の中で乾いた笑みをこぼす。


「えっと、俺になにか用でしょうか?」

「あなた、明日の大会に出場するみたいね?」

「あ、はい。ユスティーナから聞いたんですか?」

「あなたの邪な企み……私が阻止してあげる!」

「え?」


 邪と言われても……え、なんのことだ?

 ユスティーナに勝つことができた場合、告白するつもりだ。

 なので、邪と言われればそうかもしれないが、しかし、言い過ぎのような気がしないでもない。


「あなたの狙いは、ズバリ、旅行ペアチケットね!?」

「えっと……」

「ユスティーナちゃんと二人きりで旅行! そして、旅先の宿で無理矢理迫り、ユスティーナちゃんの清い体を毒牙に……不潔! 変態! 鬼畜!」


 ゴミを見るような目を向けられてしまう。


 俺は、一ミリたりともそんなことは考えていないわけで……

 というか、優勝賞品のことは、今の今まで忘れていたわけで……

 完全な誤解……と言うか、フレイシアさんの思い込みだ。

 否定しようとするが、それよりも先に、怒涛の勢いで彼女が言葉を並べる。


「いい! あなたなんかに、ユスティーナちゃんの貞操は渡さないわ! ユスティーナちゃんは、ずっとずっと清い体のままでいるの! あるいは、私がもらうの! そうなることが運命で決まっているのよ、ふふんっ、悔しい? でも、それが定めなのよ!」


 この人、勢いに任せてとんでもないことを言わなかったか?


「つまり、あなたの男の欲望にまみれた願いが叶うことはないわ」

「えっと……そんなことをするつもりは、欠片もないのですが」

「なによ!? あなた、ユスティーナちゃんに不満があるわけ!?」


 グレイシアさんと似たようなことを言う。

 やはり親子なのだなあ、と呑気な感想を抱くのだった。


「ちょっと、なんでほのぼのした顔をしているの?」

「いえ、なんでもありません」

「ふんっ。まあいいわ。私がいる限り、あなたの野望が達成されることは、ゼロパーセントと知りなさい」

「そう言うことは、もしかして……」

「ふふんっ、察したみたいね? そう……私も大会に出場するわ!」

「……そういう展開になりますか」


 思わず頭を抱えてしまいそうになる。

 まさか、こんな展開になるなんて……

 フレイシアさんのユスティーナに対する愛を甘く見ていた。

 こんなところまで関与してくるなんて。


 まいった。

 本当にまいった。

 フレイシアさんは、ユスティーナ以上の強敵だ。

 もしも激突すれば、99パーセントの確率で敗北するだろう。

 ユスティーナ対策で身につけた技も、彼女には通用しない可能性が高い。

 それほどまでに実力差があると思われる。


「ふふんっ、明日を楽しみにしていなさい。あなたのくだらない野望は、私が打ち砕いてあげる。ふふっ……あはは、あーっはっはっは!」


 どこからどう見ても悪役のような高笑いを響かせつつ、フレイシアさんは訓練場を後にした。

 残された俺は、フレイシアさんの対策を必死で考えて、頭を悩ませるのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] そしてユスティーナからまた、人間と竜の関係を壊す気かと怒られるのが容易に想像できる(笑)
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