155話 そして……
ユスティーナとククルをメインのアタッカーに。
他のみんなはサポートに。
そして俺は、中間に位置するような感じで、それぞれの補助、連携を手伝う。
そのような形の作戦を組み立てて、ヒュドラの討伐にあたる。
それはうまい具合にハマり、時間はかかるものの、着実にダメージを与えていた。
ヒュドラの頭を5つ、潰すことに成功。
それだけではなくて、体の各部に傷を作り、動きを鈍らせることもできていた。
このままうまくいけば……!
そんな希望を抱いて、俺を含めて、みんなはさらに奮闘する。
ヒュドラの苛烈な攻撃に晒されてボロボロになり、体力も残っていないのだけど……
それでも、最後の力を振り絞り、攻撃を続ける。
「おおおおおぉっ!」
ユスティーナに協力してもらい、遥か上空へ。
そのままダイブをして、ヒュドラの頭を、上から下に貫く。
激しい衝撃と反動が体を襲い、あちらこちらに痛みが走る。
槍は耐えることができず、粉々に砕けた。
それでも、頭を一つ、潰すことができた。
残りは二つ。
流れはこちらに傾いているのだけど、
「あと一歩が届かないか……!」
これだけのダメージを与えても、ヒュドラはまだ動いている。
全ての頭を潰さないとダメなのか、それとも、胴体部分に大きなダメージを与えないとダメなのか。
どのようしたら倒すことができるのか?
勝利条件がわからない。
なにしろ、ヒュドラなんてものを相手にしたのは初めてだ。
どこが急所なのかわからなくて、それらしい頭部を集中的に攻撃するしかない。
でも、現状、未だ敵は活動を続けていて……
そろそろ限界だ。
みんなの体力も怪我もギリギリのところだし、学院に対する被害も、これ以上は看過できないレベル。
いい加減にケリをつけたいのだけど、どうするべきか。
「アルトさま」
後方からアレクシアが駆けてきた。
あちこちが汚れて、傷だらけになっている。
それでも弱音をこぼすことなく、戦い続けている。
その姿に、いくらかの勇気をもらう。
「みなさん、限界が近づいています。これ以上、戦いが長引いたら……」
「やっぱりか……あと、どれくらい保ちそうだ?」
「なんともいえませんが……10分がいいところかと」
「10分か……」
なにか手を打つとしたら、これが最後のチャンスになる。
「やはり、私たちだけでは、これほどのものの相手をするなんて……時間を稼ぐことに徹底すれば、まだなんとかなると思います。竜騎士の到着を待つという手は?」
「……いや、それはダメだ」
アレクシアの言う通り、防御に徹すれば、まだいくらかは戦うことができるだろう。
でも、それは援軍が確実に到着するとわかっている時に使える手だ。
事件が起きているのは学院だけじゃない。
アルモート全体が戦火に包まれている。
そんな中、ピンポイントで竜騎士が学院を助けに来てくれるかどうか、なかなかに難しい。
「やはり、俺達で決める必要がある」
「しかし、どのようにして……」
「……少し無茶をしてみるか」
思いついた作戦を伝えると、アレクシアは目を大きくして驚く。
「そ、そのようなこと無茶ですわ!」
「無茶でもなんでも、やらないといけない。それに、ここで退けば、どちらにしても後はない」
「それは……しかし……」
「ボクはアルトを信じるよ」
話を聞いていたらしく、ユスティーナがこちらにやってきて、そんなことを言う。
「エルトセルクさん……しかし、このような作戦は、アルトさまが危険に……」
「大丈夫! アルトだもん。きっと、うまくやってくれるよ」
ユスティーナからの強い信頼を感じた。
「……どうして、そのように信じられるのですか?」
「うーん……なんでだろ? 特に深い理由はないんだけどね。でも、女の子なら、好きな男の子のことを信じてあげないといけないと思うんだ」
「あ……」
電気に打たれたようなショックを得たような感じで、アレクシアがぽかんとする。
ややあって、小さく笑う。
「エルトセルクさんには敵いませんね……」
「うん?」
「わかりました。アルトさまの案でいきましょう、私達も、最大限、お手伝いいたしますわ」
「ああ、ありがとう」
――――――――――
伝説で語られているヒュドラは、6つの頭と3つの心臓を持つという。
目の前のヤツとは少々違うが、そこは、竜の心核を使い、無理矢理変身した結果なのだろう。
そんなヒュドラを倒す方法は、全ての心臓を潰すことと言われている。
心臓の位置は、胴体の中央、首の根元、尻尾の付け根。
その情報を信じることにして、俺達は一斉に動く。
これ以上、戦いが長引いたら勝機はない。
そう判断したアレクシアたちは、後のことを考えず、全力で攻撃を行う。
「グギャアッ!?」
今までで最大の援護が行われて、ヒュドラが怯む。
その隙を狙い、俺とユスティーナとククルが駆けた。
それぞれ心臓を狙う。
最大限に接近しなければいけないため、危険は倍増だ。
下手したら痛烈なカウンターを食らい、そこでリタイアということもありえる。
正直、確かな勝算というものはない。
ここは賭けになる。
そして……俺たちは賭けに勝利した。
「これでっ!」
「いい加減にっ!」
「終わりにするっ!!!」
ユスティーナの拳が尾の付け根に炸裂する。
ククルは巨大な剣を直上から振り下ろして、胴体の中央に深々と突き刺した。
そして俺は、暴れ回る二つの頭をかいくぐり、接近して、首の根元に予備の槍を突き入れる。
「グルァアアアアアアアアアアッ!?」
背筋が震えるような、おぞましい絶叫が響き渡る。
ヒュドラは、その巨体を何度か痙攣させて……ほどなくして地面に倒れるのだった。
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