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100話 魔物の巣

 翌朝。

 陽が昇り始めたところで、俺とユスティーナとアレクシアは村の外に出た。

 ノルンとジニーとグランとテオドールは、念の為に村を守ることにした。

 みんな頼りになるし、問題はないと思う。


「魔物の巣があるのは、おそらくこちらの方だ」


 村で一番の腕自慢のゲンさんが先頭を行く。

 あれから、いくらかのことを話し合い……

 さすがに俺たちだけに任せるわけにはいかないと、ゲンさんが案内と同行を申し出てくれた。


 ゲンさんは40を超えるものの、歳の衰えは感じさせないほどの剣の達人だ。

 村のみんなに頼りにされているし……

 俺も、ゲンさんのことは尊敬している。

 子供の頃、時間があれば剣を教えてとせがんだものだ。


 今は、そのゲンさんと肩を並べて、魔物の討伐に向かっている。

 妙な気分だった。


「アルト、無理はするなよ。いざという時は、俺に任せろ」

「そういうわけにはいきません。俺も戦える」

「そうだよ、アルトはすっごく強いんだからね?」

「アルトさまならば、そこらの魔物、敵ではありませんわ!」

「ふむ」


 ユスティーナとアレクシアが俺をフォローすると、ゲンさんが考えるような仕草をとる。


 ゲンさんとしては、俺の保護者でいるつもりだったのかもしれない。

 それも仕方ない。

 ゲンさんにして見れば、俺は子供のようなものだろう。


 ただ、俺も成長しているということを見せたい。

 強くなっているということを、認めてもらいたい。


 もちろん、村を脅かす魔物を排除することが一番の目的ではあるが……

 そのおまけとして、ゲンさんに認めてもらいたいという思いがあった。


 自分の過去を知る人に、今の自分を認めてもらう。

 たぶん、それは、すごくうれしいことだと思うから。


「そろそろだ。注意しろよ」

「はい」


 俺が小さく返事をして、ユスティーナとアレクシアも頷いた。


 そこからは一言も喋らず、物音を立てないようにゆっくりと進んだ。

 そして、目的地の近くまでたどり着いたところで、茂みに身を隠す。

 そっと顔を出して、先を確認する。


「見つけたぞ」


 ゲンさんが小さな声で言う。


 その視線の先に、オオカミに角を生やして巨大化させたような魔物が見えた。

 木の枝などを組み合わせた巣を背にして、ゆっくりと休んでいる。


 他は……見当たらない。

 一頭だけだ。


「おかしいですね。みんなの話だと、複数いるはずなんですけど……」

「出かけているのかもしれないな。少し様子を見てみよう」

「はい」


 その後、様子を見てみるものの……

 魔物の仲間が戻ってくる様子はない。

 それどころか、魔物も休む体勢のまま、ぜんぜん動こうとしない。


「様子がおかしいな……?」

「仲間がいるはずなのに、仲間がいない……あいつは、いわゆる門番のような役目を与えられていると思うんですが」

「なんで、そんなことがわかるんだ?」

「あー……色々とありまして」


 ユスティーナが犬型の魔物を飼っているから、一緒にいる俺も、なんとなく習性を理解するようになった。

 ……なんていうことを説明したら、混乱させてしまいそうなので、今は伏せておくことにした。


「とにかく、様子がおかしいことは確かです。このまま見ていても解決しないと思うので、もう少し近づいてみましょう」

「……そうだな、わかった。アルトの言うとおりにしよう」


 茂みに身を潜めたまま、もう少しだけ魔物に近づいた。

 これだけ近くに寄ると、姿が隠れていても、匂いでバレてしまうかもしれない。

 そんな心配をするものの、魔物が動く気配はなく、じっとしていた。


 いや……じっとしているわけじゃない。

 動けないんだ。


「怪我をしている……?」

「動かないわけじゃなくて、動けないということみたいですね」


 犬型の魔物は、腹部の辺りに裂傷が見えた。

 かなり深い傷だろう。

 そのせいで動くことができず、休んでいたというわけだ。


 しかし……なるほど、そういうことか。

 今、なにが起きているのか?

 その全体像が少しずつ見えてきた。


「少し厄介ですね」

「どういうことだ?」

「この魔物も村を襲った魔物も、脇役でしかないということです。こいつらは、自分たち以上の強敵に追われて、ここにやってきた。そして、運悪く、村のみんなが巻き込まれた」

「……つまり、こいつを狩るような大物が近くに潜んでいると?」

「その可能性が高いです」


 まいったな、と言うように、ゲンさんは顔をしかめた。

 気持ちはわからないでもない。

 単なる魔物退治と思いきや、思わぬ大物と戦わないといけないのだから。


「アルト、お前たちは今すぐ村に帰れ」

「どうしてですか?」

「急いで、騎士団か竜騎士の派遣要請を。それと同時に、避難も促してくれ。これはもう、俺たち個人の手に負える問題じゃない」

「ゲンさんは?」

「誰かが魔物を探して、見張らないといけない。相手の動きがわからないほど、厄介なものはないからな」

「反対です。ゲンさんの危険が大きすぎる」

「俺は大人だからな。お前ら子供を危険な目に遭わせるくらいなら、これくらい、どうってことないさ」

「俺たちは子供じゃないですよ」

「俺から見れば子供みたいなもんだ。ほら、早く行け」

「お断りします」


 ゲンさんのことは尊敬しているし、兄のように慕っている。

 しかし、時に聞けないこともある。

 今回がまさにそれだ。


「ここにいたら危ない。いつ、そこの魔物をやったヤツが来るか……わかるだろう?」

「わからないです。ゲンさんが危険なことに変わりはない」

「俺はいいんだ。それよりも、お前らが……」

「ゲンさんになにがあってもいいという理由、納得するように説明してもらえますか?」

「それは……」


 ゲンさんが口ごもる。

 それはそうだ。

 ゲンさんの言っていることは、自己犠牲のようなものだ。


 他に手がなくて、どうしようもないというのならわからないでもないが……

 この場合、それは適用されない。

 なにもしないうちから諦めたくない。

 それ以上に、尊敬する人を見捨てるようなことはできない。

 そんなことをしたら、俺は、一生自分を許せないだろう。

 立派な竜騎士になるという夢を果たすこともできない。


「俺たちも戦います。ゲンさんを一人にはしない」

「もちろん、ボクも残るからね」

「私も戦わせていただきますわ」

「いや、しかし……」

「それに……もう手遅れですよ」


 ビリビリと刺すような威圧感が俺たちを襲う。

 視線を横に向けると、巨大な影が立ち上がる。


100話、到達しました!

いつも応援、感想、ありがとうございます。

これからもがんばりたいと思うので、お付き合いいただけるとうれしいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
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[一言] 「竜騎士だけど、バハムートに一目惚れされた件について」100話おめでとうございます!
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