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Dive in the world   作者: 星長晶人
最終章

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魔神と喧嘩祭開催

昨夜更新し忘れていました。……GE3に夢中になってたとか言えない。

 いよいよ俺が待ちに待った喧嘩祭の開催日だ。零時開始ということもあり、俺は待ち遠しくて泊まった宿屋の屋根で屈んでいた。


 五分前になってからウインドウが表示され、喧嘩祭一日目に参加するかどうかを問われる。迷わず「YES」を選択して参加表明した。すると視界の左下に現在の取得ポイントが表示される。街の上空にでかでかと画面が出てきて、そこに個人獲得ポイントランキングを書かれた一覧が見えた。まだ始まっていないので同率一位の状態だ。全員が十ある状態で表示されている。他にもギルド参加累計獲得ポイントランキングなどもあった。おそらくギルドの中でも協力して参加する者達が全員で獲得したポイントで競うのだろう。つまり俺はソロでやると決めたから《アンチ・ブレイズ》としては加算されないということだな。


 それらの変化を確認していると、十秒前からおそらく参加を表明したプレイヤーの眼前でカウントダウンが始まり、やがて零時を回った。


 街のあちこちで花火が打ち上がり、喧嘩祭の開催を示す。カウントダウンの表示も「START」となっていた。


 湧き上がる高揚感を抑え切れず立ち上がる前に、四方から跳びかかってくる影がある。


「覚悟しろ、ジークッ!」

「初っ端で決着つけてやんよぉ!」


 とかそんなことを叫んでいやがった。周囲にも俺がここにいることをバラした上で襲いかかってくるという丁寧な手際だ。よく見ると全員が悪魔や魔族だった。《大魔王軍》の連中か。


「――魔神ソウル“第一形態ファースト・フォルム"」


 呟くと俺の全身を濃い紫色のオーラが包み込み、背後には筋肉隆々の黒い肌と黒い角を持ち、紅い瞳をした半透明の魔神が出現する。


「まとめて吹き飛べや」


 それぞれの方向に漆黒の球体を作り出して放ち、敵の初撃を相殺する。その間にも球体を無数に作り出しておき、次々と四人へ叩き込んでやった。表示されたポイントが十四になってから攻撃の手を止め悠々と辺りを見回す。


「そこら中でやってんな、おい」


 嬉しくて笑みを零してしまう。

 つい先程まで戦闘すらできなかった街中が、阿鼻叫喚の戦場と化していた。なんて楽しいイベントなんだろうか。


 俺は既に戦いが始まっているところやまだ戦闘せず構えている連中のところへ行って倒し、しばらくポイント稼ぎを行っていた。


 ポイントがキリ良く五十になったところで周囲に人がいない位置で手を止める。

 ふと個人ランキングを見て、眉を寄せた。


「……一位がリューシンだと?」


 二位が最強プレイヤーの一人であり範囲攻撃が得意で有利そうなスレイヤという名前だった。今回のイベントでは優勝候補筆頭とも言われている。だが二位の獲得ポイントが百四十二なのに対し、一位のリューシンは二百五十一と百以上の差をつけている。三位が百を越えた程度なので、圧倒的なリューシンをスレイヤが追う形で、それ以外はかなり厳しい状態だった。……俺は見える範囲で十位以内にも入ってねぇのか。


 俺が思っていたよりも速いようだ。これは、もう少し気合い入れてやらないと一位なんて無理だな。


 ってか、あいつに負けっ放しで終わるのだけは避けたい。


「――魔神ソウル“第二形態セカンド・フォルム”」


 俺は魔神ソウルをもう一段階上げる。詳細なステータス量は気にしていないが、形態を上げていくことで段々とステータスも上がっていく。さっきよりはポイントを稼ぎやすくなるはずだ。

 俺の髪が逆立ち、紫のオーラが黒に変わる。角が二本生えて瞳が赤く染まり、全身に黒い筋が浮き上がった。


 魔神を呼び出す第一形態とは違い、俺自身が魔神を取り込むのが第二形態だ。


「さて、と。行くとするかぁ!」


 俺はにやりと笑ってプレイヤー狩りを続行するのだった。


 その道中、俺もようやくポイントが二百を越えた頃だったろうか。どこからか斬撃が飛んできて、俺から十数メートル離れた位置にいるプレイヤーが真っ二つにされていた。こんなことができる人物は一人だけだ。そう思うと湧き上がる戦ってみたいという欲望が抑え切れない。

 俺は嬉々として斬撃の飛んできた方角へ移動する。その先には予想通りの人物が佇んでいた。


「よぉ、爺さん」

「なんじゃ、ジークか。久しいのう」


 俺が爺さんの前に着地し軽く手を挙げて挨拶すると、スレイヤの爺さんも応えてくれた。先程剣を抜いていたからか腰に差した長剣の柄に手をかけた姿勢だ。

 ようやく比較的関わりのあるプレイヤーと出会えた、からと言って和やかな雰囲気になるわけがない。


 スレイヤの手がブレる。と思った瞬間に俺は反射で屈んでいた。頭上を遥か遠くまで切り裂く斬撃が通りすぎ、二本の角が半ばから切断される。


「ほう。よく避けたわい」

「避けられないようなら、あんたの前に出てくることすらしねぇよ」

「それもそうじゃな」


 白髪と白髭を蓄えた老人だが、その実力は計り知れない。動体視力はそれなりにいいはずの俺ですら霞むほどの速度で剣を振るい、しかもその剣は百メートルにも届き得る射程を持つという。


「あんたと戦いに来たんだ。ワクワクしてんぜ」

「光栄じゃな。じゃが初日からペナルティを受けに来るとは、些か浅慮がすぎるのう」

「別に負けるって決まったわけじゃねぇだろ?」

「儂もまだまだ、若い者には負けんよ」


 意外と強気な性格らしい。勝ちを譲るつもりはないようだ。だったら実際に戦って確かめてみるしかないだろう。


 さて、ここからが本番だ。

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