魔神と奮起
お待たせしました
お久し振りです
遅くなってしまいすみません
八月中にもう一度は更新します
これから一日一つずつ更新ぐらいの予定です
まあ、三日ぐらいですが
「あー、楽しかった」
俺は晴れやかな表情で、アンチ・ブレイズのギルドホームに戻ってきた。
「……おう。ってかマジで一人で大魔王軍倒したのかよ」
リューシンが呆れで頬を引き攣らせて言ってくる。
「まあな。向こうも俺の売った喧嘩を分かってくれたことだし」
喧嘩なら負けなしな俺の喧嘩を、正々堂々真正面から買うとはいい度胸だが。
「そうかい」
リューシンは呆れを滲ませて苦笑しながらも、どこか微笑ましい様子で俺を見ていた。……リューシン如きが俺をそんな目で見やがるとは生意気だ。しかし、まあ、ここのところ何のやる気も起きなかったので、ここは自重してやろう。
「おごっ!?」
――ジャーマンスープレックスで。
「って、何でだよ! 何でジャーマン決められてんの!?」
「当たり前のことだろ。普通なら抹殺してるぞ。そこんとこをジャーマンで自重してやってんだから、ありがたく思え」
「理不尽だな!」
リューシンと言い合いしつつ、俺はいつもの調子が戻りつつあるのを感じていた。……やっぱり、喧嘩しねえとやる気出ねえのか。これからは定期的に殴り込みに行こうかな。
俺はそんなことを思いつつ、ギルドホームのプライベートビーチに向かう。途中でウインドウを呼び出し、装備を水着とパーカーに変更しておく。
「おーっす、お前らも何かやれよ」
「「「いきなりどうした」」」
俺が湖でキャッキャウフフと遊んでいるメンバーに声をかけると、少し驚いたような表情で聞き返してきた。まあ別に何をしても俺がやることは喧嘩なので、特に答えを聞く必要もないか。
俺は驚くメンバーを他所に、ビーチのベンチに横になる。
真っ青な大空を眺めながら、ほぼ真上にある太陽の光に目を細める。手を頭の後ろで組んで日の暖かさを感じ、少し眠気がやってくるように思えた。
……ふと、現状を鑑みてみる。
今は第一回グランドクエストが終わり、第二回への手がかりを探すために、他のギルドが行動している。俺達はこうしてほぼ毎日グータラ遊んでいるだけだが、他のギルドは攻略に精を出している。
中小ギルドも先の戦争でレベル上げを果たし、攻略組に匹敵する実力があるヤツらもいる。敵対していた大魔王軍がギルドとして和平を結んだことにより、こちら側の戦力も大幅に上がったと言える。
つまり、皆前に進んでいるのだ。または、前に進もうとしている、か。
俺達だけが停滞し、低迷している。
何をすればいいか、なんてつまらないことを考えて、動けなくなる。俺達が――いや俺がすることなんて、戦い以外にないというのに、そんなことで悩んでいた。
グランドクエストが終わり、新たなフィールドや街、システムの更新が行われているというのに、こんな場所で怠惰に過ごしている。
そんなことが、あっていいモノか。
「……っ」
改めて思考し、俺はニヤリと笑った。
「よしっ。てめえら、出るぞ。遊びの時間は終わりだ。さっさと支度しろ」
俺はベンチから跳ね起き、遊んでいるメンバー全員に声をかける。そんな俺の呼びかけに対し、メンバー達はやっとか、というような笑みを浮かべていた。……何だよそれ。俺が勝手に燃え尽きてただけみたいじゃねえかよ。
「……気に入らねえが、しゃーねえか」
それよりも、さっさと行動を開始する方が先決だ。仲間内で争っている場合でもない。
「お、おい! 出るってどこにだよ!」
唯一遅れてやってきて、空気を読まないリューシンが尋ねてくる。
「はっ。どこにってな、お前。そんなん決まってねえよ」
「はあ? 行き先も決まってねえのに、何でそんなにやる気出してんだよ」
理解力に乏しいリューシンは、訳が分からないというような表情をしていた。……全く、これだからバカは困るんだ。
「お前、長い付き合いの癖に俺のこと分かってねえのな。そんなもん、俺がそうしたいからに決まってんだろうが」
「……」
「戦場はどこにでもあるんだよ」
俺がニヤリと口端を吊り上げると、リューシンは押し黙った。ようやく、理解が回ったらしい。
「……ああ、そうだったな。お前はそういうヤツだったよ。最近大人しくしてたし、結構フラストレーション溜まってんだろ? いい相手なら、知ってるぜ」
リューシンは呆れて苦笑したかと思うと、ニヤリと笑って自信たっぷりに言ってきた。
「ほう? もし俺の意に沿わないような雑魚だったら、てめえの首捥ぎ取るからな」
俺は面白くなってきた、と笑みを深め、リューシンに忠告する。リューシンはその光景を想像したのか右手で首を擦り、苦笑気味に告げてくる。
「大丈夫だろ。最近トップギルド入りしたヤツらで、お前とも因縁ある相手だからな」
俺と因縁ある相手か……分からないな。数が多すぎる。何にせよ、俺と一番付き合いの長いリューシンがオススメしてくるようなヤツらだ。きっといい相手なんだろうな。
戦いの予感が、高揚感を増してくる。
やっぱり俺のこと、分かってんじゃねえか。




