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Dive in the world   作者: 星長晶人
最終章

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89/108

魔神と奮起

お待たせしました

お久し振りです


遅くなってしまいすみません

八月中にもう一度は更新します


これから一日一つずつ更新ぐらいの予定です

まあ、三日ぐらいですが

「あー、楽しかった」


 俺は晴れやかな表情で、アンチ・ブレイズのギルドホームに戻ってきた。


「……おう。ってかマジで一人で大魔王軍倒したのかよ」


 リューシンが呆れで頬を引き攣らせて言ってくる。


「まあな。向こうも俺の売った喧嘩を分かってくれたことだし」


 喧嘩なら負けなしな俺の喧嘩を、正々堂々真正面から買うとはいい度胸だが。


「そうかい」


 リューシンは呆れを滲ませて苦笑しながらも、どこか微笑ましい様子で俺を見ていた。……リューシン如きが俺をそんな目で見やがるとは生意気だ。しかし、まあ、ここのところ何のやる気も起きなかったので、ここは自重してやろう。


「おごっ!?」


 ――ジャーマンスープレックスで。


「って、何でだよ! 何でジャーマン決められてんの!?」


「当たり前のことだろ。普通なら抹殺してるぞ。そこんとこをジャーマンで自重してやってんだから、ありがたく思え」


「理不尽だな!」


 リューシンと言い合いしつつ、俺はいつもの調子が戻りつつあるのを感じていた。……やっぱり、喧嘩しねえとやる気出ねえのか。これからは定期的に殴り込みに行こうかな。

 俺はそんなことを思いつつ、ギルドホームのプライベートビーチに向かう。途中でウインドウを呼び出し、装備を水着とパーカーに変更しておく。


「おーっす、お前らも何かやれよ」


「「「いきなりどうした」」」


 俺が湖でキャッキャウフフと遊んでいるメンバーに声をかけると、少し驚いたような表情で聞き返してきた。まあ別に何をしても俺がやることは喧嘩なので、特に答えを聞く必要もないか。


 俺は驚くメンバーを他所に、ビーチのベンチに横になる。

 真っ青な大空を眺めながら、ほぼ真上にある太陽の光に目を細める。手を頭の後ろで組んで日の暖かさを感じ、少し眠気がやってくるように思えた。


 ……ふと、現状を鑑みてみる。


 今は第一回グランドクエストが終わり、第二回への手がかりを探すために、他のギルドが行動している。俺達はこうしてほぼ毎日グータラ遊んでいるだけだが、他のギルドは攻略に精を出している。

 中小ギルドも先の戦争でレベル上げを果たし、攻略組に匹敵する実力があるヤツらもいる。敵対していた大魔王軍がギルドとして和平を結んだことにより、こちら側の戦力も大幅に上がったと言える。

 つまり、皆前に進んでいるのだ。または、前に進もうとしている、か。

 俺達だけが停滞し、低迷している。

 何をすればいいか、なんてつまらないことを考えて、動けなくなる。俺達が――いや俺がすることなんて、戦い以外にないというのに、そんなことで悩んでいた。

 グランドクエストが終わり、新たなフィールドや街、システムの更新が行われているというのに、こんな場所で怠惰に過ごしている。


 そんなことが、あっていいモノか。


「……っ」


 改めて思考し、俺はニヤリと笑った。


「よしっ。てめえら、出るぞ。遊びの時間は終わりだ。さっさと支度しろ」


 俺はベンチから跳ね起き、遊んでいるメンバー全員に声をかける。そんな俺の呼びかけに対し、メンバー達はやっとか、というような笑みを浮かべていた。……何だよそれ。俺が勝手に燃え尽きてただけみたいじゃねえかよ。


「……気に入らねえが、しゃーねえか」


 それよりも、さっさと行動を開始する方が先決だ。仲間内で争っている場合でもない。


「お、おい! 出るってどこにだよ!」


 唯一遅れてやってきて、空気を読まないリューシンが尋ねてくる。


「はっ。どこにってな、お前。そんなん決まってねえよ」


「はあ? 行き先も決まってねえのに、何でそんなにやる気出してんだよ」


 理解力に乏しいリューシンは、訳が分からないというような表情をしていた。……全く、これだからバカは困るんだ。


「お前、長い付き合いの癖に俺のこと分かってねえのな。そんなもん、俺がそうしたいからに決まってんだろうが」


「……」


「戦場はどこにでもあるんだよ」


 俺がニヤリと口端を吊り上げると、リューシンは押し黙った。ようやく、理解が回ったらしい。


「……ああ、そうだったな。お前はそういうヤツだったよ。最近大人しくしてたし、結構フラストレーション溜まってんだろ? いい相手なら、知ってるぜ」


 リューシンは呆れて苦笑したかと思うと、ニヤリと笑って自信たっぷりに言ってきた。


「ほう? もし俺の意に沿わないような雑魚だったら、てめえの首捥ぎ取るからな」


 俺は面白くなってきた、と笑みを深め、リューシンに忠告する。リューシンはその光景を想像したのか右手で首を擦り、苦笑気味に告げてくる。


「大丈夫だろ。最近トップギルド入りしたヤツらで、お前とも因縁ある相手だからな」


 俺と因縁ある相手か……分からないな。数が多すぎる。何にせよ、俺と一番付き合いの長いリューシンがオススメしてくるようなヤツらだ。きっといい相手なんだろうな。

 戦いの予感が、高揚感を増してくる。


 やっぱり俺のこと、分かってんじゃねえか。

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