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Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編

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魔神と希望と絶望

寝落ちしました

 魔王と戦っているシュリナとリューシンの二人を除き、アンチ・ブレイズのメンバーが揃った。


「……いいとこ取りすぎだろ」


 ジークは呆れて言うが、少し表情に安堵が混じっていた。


 仲間達はジークの前に現れて、大魔王が呼び出した異形の怪物達を減らし心が折れそうになっていた連合軍を救った。


「……てめえらぁ! そっちは任せたからな!」


 ジークは仲間達に向かって叫び、大魔王と再び対峙する。だが、波動が使えなくなる代わりに超越的な身体能力を得る魔神ソウル“最終形態(ファイナル・フォルム)”でさえ、大魔王に軽くあしらわれている。


「……人間風情が」


 大魔王は吐き捨てるように呟いて、虚空より刃渡りが二メートル程もある禍々しいオーラを纏った日本刀を出現させる。


「……それがてめえの武器かよ?」


 ジークはあまりの禍々しさに可視出来るオーラとなって禍々しさを顕現させている日本刀を見て眉を寄せながら尋ねた。だが大魔王はそれに答えず、近くにいた怪物(・・)を切り裂いた。


「……っ? おい、てめえ――」


 ジークが訝しんで聞こうとしても大魔王は無視して近くにいる味方を切り刻む。よく見てみると、切り裂かれて死んだヤツは黒い光となって大魔王の持つ日本刀に吸収され、大魔王が持つ圧倒的な負のオーラが増したのを、ジークは感知した。


「……チッ!」


 ジークは舌打ちして大魔王に突っ込みつつ、衝撃で周囲のヤツが吹っ飛ぶように拳を振るう。だがそんな戦い方をしていれば隙が生まれるのは当然であり、大魔王は近くに来た味方ごとジークを薙ぎ払った。


 ジークは大きく吹き飛ばされるが、これ以上大魔王の好きにさせるのはマズいと直感しているからこそ、すぐに再度突っ込む。だが大魔王は近くに味方がいなくなると、今度はジークを無視して別の場所に移動し、敵味方関係なく近くにいるヤツを切り裂き始めた。


「……チッ。てめえら、大魔王を止めるぞ!」


 ほとんどを狩り尽くした仲間達に告げ、大魔王を追うジーク。


「……おう! って、何だありゃ? 仲間を斬ってんじゃねえか」


 返事をしたのはリューシン。ジークに言われた通りに大魔王を視認すると、強大で禍々しいオーラを全身に纏った大魔王がいて、次々に敵味方を切り裂いていた。


「……だ、大魔王様! これは一体――」


 ルシフェルが殺戮を繰り返す大魔王の傍に跪くと、あっさり首を刎ねられて死に、一撃死のエフェクトで血飛沫を巻き上げながら消えていく。


「……る、ルシフェル様っ!?」


 レヴィアタンが一番動揺し、戦っているシュリナを無視して消えていくルシフェルに駆け寄り、大魔王に胴体を真っ二つにされる。


「……な……んで、大魔王様……」


 レヴィアタンはギリギリHPが残って呟くが、地に伏せた頭を日本刀で刺し貫かれて死に、消えていく。


「……ひっ! だ、大魔王様が乱心したぞーっ!」


「……た、助けてくれーっ!」


 幹部であるハズの魔王をあっさり切り捨てたことで動揺が広まり、大魔王軍から散り散りに逃げていく。


「……敵前にして逃亡とは、情けない」


 ブン、と横薙ぎに振るわれた日本刀から禍々しい黒の斬撃が放たれ、逃げる味方共々敵を無数に葬り、大量の黒い光が吸収され、さらに大魔王の力が増幅していく。


「……はははははっ! 力が溢れてくるぞっ!」


「……ふむ。味方を斬るとは感心せんのう」


 高笑いをして日本刀を乱雑に振るう大魔王に突っ込んでいく人影があった。トッププレイヤーのスレイヤである。


「……生意気な!」


 大魔王が大上段から日本刀を振るうのに対し、高速で突っ込むスレイヤは無数の斬撃を放ってそのまま駆け抜けた。


「……くっ」


 無数の浅い切り傷が大魔王の身体に出来るが、一方のスレイヤは右腕を深く切り裂かれていた。


「……おいおい、あのじいさんが斬られるとかおかしいだろ」


 ジークが半笑いで呟くが、それは間違っていない。スレイヤは見た目こそ老人だがチート職を手に入れたため最強と言っても差し支えない程の実力を持っている。


「……すまんが、長時間の戦闘は腰に響いてのう」


 スレイヤは剣を杖代わりに地面に突き立て腰をトントンと叩いて言った。どうやら老人らしく、ぎっくり腰が弱点らしい。


「……貴様も俺の軍勢に加えてやろう!」


 だがそれはかなり隙だらけであり、大魔王は仮にも自分に傷をつけたプレイヤーの力を吸収しようと、日本刀を振り被る。


「……何が、軍勢だ!」


 だが横から飛び出してきたジークの蹴りによって吹っ飛ばされ、邪魔される。


「……何故邪魔をする!」


「……てめえの言う軍勢ってのは、その背中に背負ってる怨念のことか?」


 怒鳴る大魔王に、ジークは冷めた声で尋ねる。ジークの言う通り、大魔王の背中には怨念に満ちた表情の殺された者達が半透明になった姿で集合していた。


『……殺ス。殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス!』


 譫言のように怨念の言葉を吐き続けるルシフェルの瞳は虚ろだが狂気に満ちていて、とても正気とは思えなかった。


「……ああ、そうだ。俺のスキルには殺した者の力を一時的に自分のモノに出来るモノがあってな。こいつらも俺の力になれてさぞ嬉しいだろう」


 大魔王は笑う。


「……はっ。そんな怨念に満ちた力なんて、なるのも嫌だし貰うのも嫌だな!」


 だがジークは鼻で笑った。


「……確かに戦闘が終わるまで怨念に包まれて復活も出来ないのは不便だと思うが、大魔王軍が勝つためには必要なことだろう」


「……はっ! そんな力ならいらねえし、受けたくもねえな! ただ怨念に囚われるだけなんて真っ平ごめんだ! いくぜ、てめえら! てめえらの魂は、俺が背負ってやる!」


 大魔王は苛立たしげに目を細めたが、ジークはなおも嘲笑する。


「……プレイヤーソウル“シュリナ”!」


「……いいわよ、ジーク。その代わり、ちゃんと倒しなさいよね」


 ジークが魔神ソウルを解除して叫ぶと、シュリナの身体が倒れ半透明になった魂だけがジークの下に飛んでいく。ジークはそのまま仲間全員の名前を呼び、魂を背負う。


「……儂も頼んでいいかの? この身体じゃ、どうせ役に立たん」


 煌めく黄金の輝きを纏うジークにスレイヤが言い、頷いたジークが「プレイヤーソウル“スレイヤ”」と呟いてスレイヤの魂もジークが背負う。


 その後も各トッププレイヤーや名前も知らないプレイヤー達が次々に名乗りを上げて、ジークに魂を背負わせる。


「……てめえらの魂は俺が受け継いでやるよ。だから安心して、俺に力を貸せ!」


「……ほざけ! その程度の人数で俺に勝てると思うな!」


 ジークの背負った魂の数は、殺戮を繰り返した大魔王よりも遥かに少ない。だがそれでも、ジークは告げる。


「……てめえは、俺達が倒す」

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