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Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編

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魔神と嫉妬と不死鳥、決着

活動報告で新作のアンケート? を実施しています


四月から始まる予定なので少し見ていってもらえたらと思います

 カナがアンチ・ブレイズ四人目となるSに目覚めて獲物を狩り出している時。白い炎の不死鳥と化したシュリナは漆黒の巨大な竜と化したレヴィアタンと壮絶な戦いを繰り広げていた。


「はああぁぁ!」


「……っ!」


 シュリナとレヴィアタンが互いに炎と水を纏ってぶつかり合う。


 白き炎が水を蒸発させるのが先か、黒き水が炎を鎮火させるのが先か。


 そんな戦いであり、行く先は誰にも想像出来ない。


 だが拮抗していた今までとは違い、シュリナが怒涛の攻めを見せていて逆にレヴィアタンが防戦一方という形になっている。


 それにはシュリナが怠惰から戦闘狂へと変わったためにあった。


 カナもそうだがシュリナは真面目であり怠惰の経験がほとんどなかった。だからこそ怠惰を受けた影響は大きく、しかしジークの呼び声に反応した結果の振り幅が大きくなってしまって他の者よりも強く影響を受けてしまっているのだ。


 カナはそれによって「殺した敵の血を浴びる」ことに快感を得てSへ覚醒しまった。シュリナはSになることはなかったものの、ジークの影響を強く受けたせいで「一方的な虐殺」に近い戦いを好むようになっている。それらは一時的なモノであったり後にも強く残ったりするのだが、シュリナは前者。因みにカナは後者に当たる。


 だから、シュリナは目の前にいるレヴィアタンという敵を攻撃し続けているのだ。そろそろMPが切れてしまうことも視野に入れなければならないが、シュリナはそんなことお構いなしに攻撃する。湧き上がる自らの本能に従い、目の前の敵を蹂躙するために攻め続ける。


「……くっ!」


 防戦一方のレヴィアタンもMPが残り少なく、むしろシュリナの猛攻に押されて少しずつだがHPが減っている。


「……何なのよ!」


 レヴィアタンは誰に向けてかそう言って舌打ちする。チラリと見た下では金色の輝きを纏うジークが暴食と怠惰の魔王二人を相手に善戦していた。


 ……何よ、あれ! あれじゃあ大魔王様と同等――いやそれ以上なんじゃ……!


 レヴィアタンはジークの恐るべき強さに戦慄を覚え、それが隙を生む。


「……しまっ――」


「……ホーリーフレイム!」


 気づいた時にはすでに遅く、シュリナが放った白い聖なる炎に焼き尽くされる。


「……あああぁぁぁ!」


 レヴィアタンは痛覚が軽減されているというのに激しい痛みに呻き声を上げ、HPがガクンと減ったの尻目にしながら激しい濁流を放ってシュリナの追撃から逃れる。


 ……影響力が大魔王様の比じゃないわ。敵味方の戦闘意欲を極限まで上昇させる能力とかふざけてるでしょ! ベルフェゴールと同等かとも思ったけど、どうやら違うわね。まさか私達まで影響を受けてるなんて……!


 レヴィアタンは目の前の白い炎の不死鳥と下の戦況を見比べ改めて戦慄しつつ、目の前の敵を倒すことに集中する。


「……っ!?」


 だが不意に、シュリナが大きく急上昇した。


「……これで、決めるわ」


 そしてよく通る声でレヴィアタンを見下ろし、告げる。MPが残り少ないのを見ての行動だろう。それはレヴィアタンにとっても悪くない申し出だった。


「……いいわよ、地に堕としてあげるわ!」


 だからレヴィアタンは挑発的に言って構える。


「……」


 シュリナはそれに応えずさらに上昇していく。戦場に広がっている暗雲の中を突き進み、それでもまだ上昇していく。


「……大魔王様、私に力を!」


 シュリナがどこまで上昇しようが関係ない。捻り潰すだけである。レヴィアタンはここにはまだいない大魔王を呼ぶ。


 するとレヴィアタンの身体を二回り以上も大きな青い水の竜が覆った。大魔王の付与系魔法、リヴァイアサン・エンチャントである。大魔王が持つ水系統付与魔法で一番のモノだ。


「……っ」


 しばらくすると上空の暗雲が半分程消し飛ばされた。それ程の光が降りてきたのだ。


 その中心にいるのは、巨大になった白と紅の炎で出来た身体を持つ不死鳥――シュリナである。


「……っ! まさか太陽の炎を食べたの!?」


 レヴィアタンには大魔王から注意すべきプレイヤーのとっておきについて聞かされていたので、この現象に心当たりがあった。


「……そうよ。よく知ってるわね。宇宙空間に行った時はどうなるかと思ったけど。太陽の炎を食べた時にだけ発動出来るアビリティ、お見舞いしてあげるわ」


「……負けない!」


 二体の巨大なモンスターが、下降と上昇でぶつかろうとしていた。


「……サンフレア・スターフェニックス!」


「……レヴィアタン・リヴァイアサン!」


 白と紅の炎で出来た身体を持つ巨大な不死鳥と、青い竜のオーラを纏い漆黒の水を撒き散らす巨大な竜が、激突する。


「「……っ!」」


 互いにフルパワーでありステータスが上昇するこの姿で激突し合えば、簡単に押し切れるのではないかという自負があった。しかし、拮抗している。


 押し負けることも、押し勝つこともなく。


 下降と上昇で押し合って動かない。


 だがその間も二体は攻撃し合っている。漆黒の水を蒸発させてオーラを削り、白と紅の炎を鎮火させて削り。


 互いにHPを徐々に削る形となり、ほぼ同じ速度で減少していく。となれば元々HPが低かったシュリナが負けてしまう。


「……凝縮っと」


 だからかもしれない、シュリナは不意にそう呟いて白と紅の炎で出来たシュリナ本来の姿になる。


「……?」


 レヴィアタンは怪訝そうにそれを見るが、すぐ異変に気付いた。シュリナの身体を、攻撃がすり抜けているのだ。


「……な!?」


 完全無敵状態。そんなアビリティは知らなかった。というか存在しているのかさえ分からないようなモノ。


「……気にしなくていいわ。これは凝縮っていうアビリティで、通常状態じゃなければいつでも発動出来るアビリティなの。効果は自爆する代わりに数秒の間だけ無敵状態になる」


 そう言ってシュリナは炎の身体でリヴァイアサンのオーラをすり抜けレヴィアタンの下に向かう。上昇していたレヴィアタンは逃げられない。


「……自爆の威力は、残りHPと強化の状態に関係してくるんだけど、HPはもうレッドゾーンなのよね」


 シュリナはそう言いながらレヴィアタンの首元に抱き着く。


「……や、止め……っ!」


 レヴィアタンはシュリナがやろうとしていることに気付き暴れるが、無敵状態のシュリナを振り解くことは出来ない。


「……大丈夫よ、一瞬だから。あなたは私と一緒に死ぬのよ。さようなら」


「っ……!」


 どこか宥めるような口調のシュリナが言って、シュリナの身体が少し凝縮する。そして次の瞬間、音もなく白と紅の炎が周囲に広がった。


「「「……」」」


 ジークの声で戦闘狂と化していた者達が、全員漏れなく音もなく爆発した炎の球体を見上げていた。


 それが収まった空には、誰もいなかった。

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