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Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編

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魔神と怠惰の魔王

遅れました、すみません

「……ベルゼブル、代われ」


 ジークと戦うベルゼブルの下に、一人の男が現れた。


 ヨレヨレのスーツを着込んだ、だらけた男だ。手には二丁の銃を持っている。だがダラリと両手を下げていて戦う気があるようには見えない。


「……もうお前が出るのか、ベルフェゴール」


 ベルゼブルはそのだらけた男――ベルフェゴールを見て少し驚く。


「……もう、面倒だしな」


 ベルフェゴールはダラリと言って右手を上に大きく伸ばす。


「……」


 黒の化け物と化したジークは突如現れたベルフェゴールへ警戒を露わにし身構える。


「……ま、お前が来たならもう大丈夫だろ。俺達は他の始末に回るぜ」


「……勝手にすればいい。俺はもう、怠けたいんだ」


 ベルゼブルに応えつつベルフェゴールは上空に向けて銃を撃つ。銃声と共に何か空気の波のようなモノが戦場全体に広がっていく。


「……?」


 ジークは怪訝そうな顔でそれを見上げていたが、次第に構えを解いてダラリと上半身を力なく垂らす。


「……だりぃ」


 ジークは心の底からだるそうに呟く。いや、ジークだけではない。戦場にいるベルゼブル、マモン、サタン、レヴィアタン以外の連合軍と大魔王軍全員がだらけていた。


「……ベルフェゴールの怠惰の波動(レイジ・ウェーブ)。敵味方問わず怠惰に見回すベルフェゴールの備えつきスキルか。実際に目にするのは初めてだけどよ、かなり凄いよな。俺達魔王以外全員だらけてやがる。戦争中だってのによ」


 ま、魔神の魂を宿してるジークの野郎に効くかどうかは分からなかったけどな、とベルゼブルは笑う。


 戦うのがだるい、立つのがだるい、座るのがだるい、寝るのがだるい、呼吸するのがだるい、生きるのがだるい、死ぬのがだるい。


 そうやってだるいループに入り虚無に苛まれていく。


「……あー、だりぃ。もう全部だりぃ」


 ジークも比較的ゆっくりとしただるい進行に苛まれ、だらけていく。


「……戦うのとか超だりぃ」


 今まで魔王を倒すのに助力してきたジークが敵前でだらけているとなれば、倒さない手はない。この戦争は死に戻りした後再び参加することが出来るのだが、デスペナルティがあるため最初よりも弱くなっている。それが重なればいくらトッププレイヤーと言えども戦争でさらに活躍するのは無理だろう。


 まだ大魔王軍は、最強であり大将である大魔王を参戦させていない。この間にトッププレイヤーが全滅させられれば勝機はない。


「……あーもういいやぁ、戦いとか、戦争とか。そんなだりぃことやってないで――」


 ジークはダラリと上半身を力なく下げたままブツブツと呟く。


 そんなジークがもう少しでだらけて抵抗もなく殺されてくれるだろうと見たベルゼブルとベルフェゴールは、様子を見守っている。その間にもレヴィアタンは真っ先に飛ぶことを止めたシュリナを追い、サタンは技を中断したカナをつまらなさそうに見据え、マモンは作戦通りにトッププレイヤーをナイフで狩っていく。ついでに大きく数を減らすため無造作に無数のナイフを投げてその他のプレイヤーも倒していく。


「……全部、殺そ」


「「……っ!」」


 そう呟いて上半身を起こしたジークの眼は、ゾッとする程に凍てついた殺意が漲っていた。


「……魔神ソウル“最終形態(ファイナル・フォルム)”」


 今までの戦いでの表情と比べるとかなり暗い殺意を纏ったジークは、ボソリと呟いた。


「なっ……! もう最終形態までいってんのかよ!?」


 ベルゼブルは金色に輝き出したジークを見て驚愕する。ベルフェゴールも表情は変わらなかったが驚いているようだった。


「……もう面倒だし、もういいよな。俺は充分我慢したって。――だから、これからは戦争じゃねえ。虐殺だ」


 ジークは金色の輝きに包まれながら呟いて姿を変えていく。


 髪と瞳が黒から金に変わる。だが、それだけだった。金色のオーラを纏ってはいるが黒の化け物であった姿からすると拍子抜けしそうなくらいの些細な変化だったが、現実でのジークを知る者は恐怖を思い出していた。


 ジークが中学生だった頃の、凶暴だった頃の姿。


 地域一帯を恐怖に陥れた最強最悪の不良、血塗れの真紅、ジークである。


 東京で有名になったせいか、ジークの名は全国に知れ渡っていた。


 染めていた髪を戻しカラーコンタクトを取れば顔つきを知る者は少なく高校では気付かれることなく過ごしていた。


「……はっ! やっぱいいよなぁ、これ! 戻ってきたぜ、あの頃の俺が……!」


 ジークは打って変わって戦闘狂の笑みを浮かべると、一歩を魔王二人に対して踏み出した。魔王二人はジークに身構えつつも最悪の状況だと思っていた。今までの黒の化け物でもベルゼブルは苦戦し、真の姿を現しても勝てるかどうか分からなかった。それなのに怠惰の波動(レイジ・ウェーブ)を発動させて齎す結果の内、最悪なモノだった。


 だるいループに嵌まる時、戦争が面倒だと思った後に思うだるいの大半は戦うのが面倒、がほとんどだが他にも厄介な思考回路をしている者がいると異なったことを思う。


 だるいループは結論が出ないところに隙が生まれる。それ故に結論が出てしまうと効力を失うのだ。


 ジークの場合、戦争が面倒だ。ならどうするか? 殲滅してさっさと終わらせる。


 という戦闘狂丸出しの思考回路だったというだけだった。


「……死ね」


 ジークはほぼ動作なしで魔王二人に高速突っ込むと、驚く二人の顔を掴み思いっきりぶん投げた。


「……てめえら全員殺すから、覚悟しとけよ」


 ジークはニヤリとした笑みを浮かべながら投げた二人が飛ぶ速度と同じ速度で走って言い、更なる攻撃を二人に加えた。

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