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Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編

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魔神とドSと色欲の魔王、決着

 アンチ・ブレイズのクアナ対色欲の魔王アスモデウスの戦いは、アスモデウスが真の姿となり終盤へと移ろうとしていた。


 アスモデウスの姿はボンテージと鞭を装備した美女のような姿だったが、真の姿として羊の毛のようなモコモコと厚みがあり膝裏まで届く長髪を生やし、顔とスタイルは人間のままで、ただし五メートルの美女である。尻の方からは蠍の尻尾のようなモノが生えていて、身体を最低限に覆う装備も蠍の甲殻のような形をしている。両手には鞭を一つずつ持っている。


 二つの鞭を持った五メートルの絶世の美女である。


 右手の鞭は金色のオーラを纏うクイーンズ・ウィップ。相手のM気質を引き出し当たることで快感を得るためM気質が少しでもある場合、避けることは出来ない。だが威力は弱いというモノだ。


 左手の鞭は銀色のオーラを纏うスパイラル・ウィップ。こちらは特殊な効果がなく、しかしアスモデウスが持つスキルの中でも最も燃費のいい高威力スキルである。鞭の先に凝縮させた竜巻が触れた瞬間に相手を攻撃する。


 対するクアナは職業上、両手の五指の先からピアノ線のように細く丈夫な糸を出すのみ。だが職業が進化しレベルが上がり、その長さは一対多数の戦争において有効な手立てとなるまでになっている。


「……っ!」


 クアナは周囲の地面や人、装備などで糸を折り返し、アスモデウスへと向ける。指一本で何キロも伸びる糸を正確に操るのは彼女の持つスキル、『神の手』と『万能な手』による効果が大きい。この二つのスキルにより器用さに関係するステータス――DEXが上限の分からない測定不能となっているのだ。


 クアナの思考はクイーンズ・ウィップの効力で右手が攻撃出来ない状態となっているが、そう思わされているのなら代案を思い浮かべればいい、ということはアスモデウスが真の姿になる前の戦いで分かっているため、右手は攻撃出来ないが「HPが切れたらもうこの快感は味わえない」という思考を浮かべて左手を攻撃し高威力の鞭を出来るだけ避けていた。残念ながら真アスモデウスには再生の能力が加わっているのかすぐにHPが回復されてしまうため一時的な効果しか得られなかったが、それでも出来る限りのことは続けていた。


 ……一撃死を狙うしかないわね。


 戦いの中で昂ぶる心と身体があっても、クアナの思考は冷静だ。クイーンズ・ウィップは避けられないので無視し、その他の攻撃を受けないことに集中していた。


 だがそれではジリ貧。自分が負けるのは目に見えている。それなら首を切り落とす、心臓を貫くしかないのだが、それは今のところ出来ない。相手を倒してしまうと快感が得られないという思考に邪魔されるからだ。


「ははははははっ! 無駄な足掻きをしないで一思いにやられればいいのよ!」


 アスモデウスの高笑いが響く。すでにクイーンズ・ウィップを何十回と受けてクアナのHPはレッドゾーン、二割を切るところまできてしまっていた。


 さらにクイーンズ・ウィップで四度攻撃し、残り一撃を入れれば倒せるというところまできて、


「っ!?」


 クイーンズ・ウィップが弾かれた。


「……っ」


 それに驚愕するアスモデウスに対し、クアナはニヤリとした笑みを浮かべていた。


「……な、何でっ! 何で私の鞭が弾かれるのよ!」


 予想外の出来事にアスモデウスは混乱しながら右手の鞭を振るう。だがやはり、弾かれた。


「……あなたを倒したらもうこの快感が味わえない。けど、私が倒されてももうこの快感が味わえない。そうは思わないの?」


 フッ、と笑みを零したクアナは言う。


「……けど……っ! これで最高の昇天が味わえるのよ!?」


 アスモデウスは驚きながらもクアナにバラバラにされる左手ではなく右手で鞭を振るう。だがアスモデウスのその言葉にもクアナのM気質は反応しないようだった。――弾かれる。


「……そうかもしれないわね。でも私としてはこの戦いだけじゃなく先も見据えてみたのよ。私は元々苛めるのが大好きなのよ? そんな私がここで死んでこの先にある肉を抉り骨を絶つ快感を思えば死んで昇天するなんて以っての外だと思わない? あなたを苛めて倒し、この先でも私はSの快感を得ていく。そう思ったら防げたのよ」


 クアナは笑って、アスモデウスの全員に糸を張り巡らせて縛る。


「くっ……! まさかこの私が、あなた如きに……!」


「……そこから間違ってるわよ。私はアンチ・ブレイズ。このゲームで最強のギルドのメンバーだもの」


 フフッとクアナは楽しそうに笑い、アスモデウスの全身を縛っている糸を出している左手ではなく、右手の糸を伸ばす。


「……な、何をする気!?」


「……もちろん、苛めてあげるのよ。今までいくつもの生物を苛めてきた女王様ならきっと、いい鳴き声を聞かせてくれるでしょうね」


 クアナがSの笑みを浮かべると、アスモデウスはひっ、と息の詰まったような声を漏らす。


 その後しばらく、戦場には高笑いや嘲笑などの似合うドS美女だったアスモデウスの悲鳴と絶叫が響き渡っていた。

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