魔神と色欲とドS
戦ってる人が人のためちょっと……という表現が含まれています
グロではなくどっちかというとエロですが
「苛めてこそ、私の生き甲斐よ!」
スタイル抜群でバンテージ姿の美女は、手に持った鞭で白いワンピースを着た巨乳美少女を攻撃する。
「苛められるのも、結構いいものよ?」
清楚な格好とは正反対にニヤリとした笑みを浮かべる美少女は、何か見えない――いやキラリと光る細い糸をピンと張ってそれを弾く。
魔王アスモデウスとアンチ・ブレイズが一人、クアナの対戦である。
「スパルタビッテ!」
アスモデウスは何やらアビリティ名を叫ぶと鞭を高速で振るってクアナを攻める。
「……あら、お仲間が危ないわよ?」
クアナはしかし余裕そうな笑みを浮かべて糸で雁字搦めにした悪魔と魔族を二人ずつ自分の前に引き寄せてきて鞭を受けさせる。
「がっ!」
「ぐっ!」
「あ、アスモデウス様止め――いだっ!」
「おほぉ!」
……三人が痛そうな声を上げる中、一人だけ歓喜の声を上げた。
「……よくもやってくれたわね」
アスモデウスは部下を盾にされて怒ったのか、更に鞭を振るい続ける。だがそれらは全て部下四人に当たりクアナには通らない。
「……一人あなたのペットでもいるみたいね。じゃあ――」
クアナは平然と敵の攻撃を敵の仲間を盾にして受けながら、ニヤリとした笑みをさらに深めると思いっきり両手を引いた。
「「「っ!」」」
四人を雁字搦めにしていた糸が食い込んでいき、やがてぶつ切りにした。
「……このっ!」
目の前で四人を殺されたアスモデウスは盾を自ら失ったクアナに対して鞭を振るう。
「後ろ、気を付けた方がいいわよ?」
クアナはそれを大きく後ろに跳んで避けつつ右手を引いてアスモデウスに忠告する。
「? ……っ!?」
アスモデウスは怪訝な顔をしていたが、何かを感じ取ったのか慌てて屈む。その頭上を、キラリと光る一本の糸は通り過ぎていった。
「……どういうこと? さっき両手を引いて糸は全部こっち側にあるハズじゃ……」
アスモデウスは鞭による攻撃の手を休めないままクアナに聞く。
「簡単よ。小指の糸だけ最初から他よりも長く伸ばしていただけ。私の神的器用さがあれば小指の糸で大きく輪を作ることも可能なの。まあ最初から伸ばしていなくても引くと同時に糸を伸ばせばいいんだけど」
クアナは鞭をピンと張った糸で弾きながら答える。
「……チッ。じゃあこれはどうかしらね。あなた、Mっ気はある?」
アスモデウスは舌打ちしてしかし、ニヤリと笑って鞭を止めて尋ねる。
「……? 元々はSの塊だと思ってたけど、最近はMもいいんじゃないかって思い始めてるわよ?」
クアナは不審に思い、しかし正直に答える。
「……そう、それは良かったわね……っ!」
アスモデウスはそれを聞いてSの笑みを深めると、
「クイーンズ・ウィップ!」
鞭に金色のオーラを纏わせてクアナに向けて振るった。
「……?」
オーラを纏った以外には何の変哲もない。クアナは疑問に思いつつも先程と同じようにピンと張った糸で鞭を受けようとするが、
「っ!?」
何故か指が勝手に動いて糸を緩めて鞭を避けた。クアナは驚きつつも避けようと後退しようとするが、足が動いてくれない。
「っ!」
受けることも避けることも出来なかったクアナはまともに鞭を右脇腹にくらいワンピースが避ける。
「……な、何で……っ?」
クアナは驚愕したように鞭が当たり赤く腫れたそこを見やる。
「……私のクイーンズ・ウィップは攻撃する相手のMに直接効果を齎すのよ。そしてMの相手に快感を与える。分かる? つまりあなたの身体は私の鞭による快感が欲しいから避けたり防いだりなんてしないのよ」
アスモデウスがクイーンズ・ウィップの効果を説明する。確かにクアナの頬は紅潮し少し恍惚とした色を持っている。
「……私の身体が鞭を受けたがってるって言いたいのね?」
だが気丈にもクアナはいつもの調子で聞く。
「ええ。防ぎようがないこの攻撃、威力は低いけど絶対にくらうのよ」
そんなクアナを嘲笑うように、アスモデウスはクアナには当たらない場所、クアナがいる場所から三メートル程左に向かって鞭を振るう。
「んっ!」
だがクアナは自らそこへ向かって突っ込み、左肩で鞭を受ける。
「……ほら、分かったでしょ? あなたの身体は鞭が欲しいのよ」
恍惚を深めるクアナにアスモデウスはSの笑みを浮かべ、
「ほら、もっとあげるわよ!」
クアナに向けて連続で鞭を打ち込む。クアナは避けようともせずに全身に鞭を受ける。鞭はクアナの白いワンピースを切り裂き脚や腕に蚯蚓腫れを作る。だがその度にクアナは歓喜を抑え込むような艶かしい声を上げ、恍惚の色を強くしていき目がとろんとし始めていた。
「……なかなかやるわね。まさかこれだけ打ち込んでも私に媚びを売らないなんて。でもこれで、終わりよっ!」
アスモデウスは僅かに驚きつつ、恍惚の中にあり戦闘中の意識ではないだろうクアナが堕ちるその時までもう少しだと見て、鞭を走らせる。その鞭が向かう先は美少女であるクアナが男の視線を惹きつけて止まない部分――胸である。
「……」
クアナはそれを防ごうとしたのか、両手を軽く開くようにしていつの間にかアスモデウスの鞭を持つ右腕に絡みつこうとする糸を締めつけるようにするが、依然として緩いままで、クアナは右胸の側面から左に向けて鞭の直撃を受けた。
「んぅぅっ!」
クアナは寸でのところで大きな嬌声を堪えたような声を上げ、ペタリと地面にへたり込んだ。
「……」
ワンピースはかなり破れ扇情的な格好になったクアナが、アスモデウスをとろんとした恍惚の目で見上げる。
「……」
これは堕ちたと確信したアスモデウスはどんな従順さを見せてくれるかという想像にかき立てられ、気付かなかった。
クアナが思いっきり両手を大きく広げるようにして、自分の右腕に糸を絡ませているのに。
ボキボキボキッ。
「ぐ、あああぁぁぁぁぁ!?」
バラバラになるくらいに力を込められ右腕が骨折する痛みに悲鳴を上げるアスモデウス。
「……あはっ♪」
何が起きたか分からないと言うようなアスモデウスに対し、クアナはさらに恍惚を深めて笑う。しかし先程とは違いSな笑みだったが。
「……な、何で……!」
「簡単よ。確かにあなたの鞭は気持ち良くってもっとして欲しいけど、相手を傷つけて悦ぶSな私のMが、鞭だけで満足するようなモノだと思わないで欲しいわ。それに、あなたの攻撃は避けられないけど私が攻撃出来ない訳じゃないんでしょ? 右腕で鞭を持ってるから右腕を攻撃したら鞭が来ないから一回目は攻撃に失敗したけど、二回目は考えを変えてみたの。右腕がなくても左腕があるじゃないって」
「っ……」
アスモデウスは左手で右腕を支えるようにしながら驚愕する。
「……さあ、もっとシましょう? もっと私を苛めて、もっとあなたを苛めさせて。私の快感とあなたの悲鳴でこの私を、濡れさせてみせなさい」
クアナはSな微笑みを浮かべて立ち上がり、挑発するように言った。
「……いいわよ。この私の真の力、見せてあげるわ!」
そんなクアナに応じてアスモデウスは、真の姿へと変化していく――。




