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Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編

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魔神と再戦

遅れました

 次回はもうちょっと早い予定です

「大魔王軍を蹴散らせ!」


 主力部隊を率い、今回の最高責任者であるセイアが悪魔を斬り倒しながら味方を鼓舞する。


「敵大将はすぐそこだ! 討ち取れ!」


 対する大魔王軍の先頭は、元々魔王だったが潜入してきていた傲慢を司る魔王、ルシフェル。


 サタン、レヴィアタンが駆け付けて戦闘を開始するその間に、大魔王軍を鼓舞するため、自ら前線に立って人間を斬り倒していく。


 その手に持つのは、二メートル程の漆黒の大剣。しかも、二刀流である。


 左手に持つのは馴染みのある魔剣・グラム。


 右手に持つのは漆黒だが紅い筋が入った魔剣・レーヴァテイン。


 双方共がこのゲームでもレアな武器、魔剣である。


 それを軽々と片手で振り回すルシフェルの怪力も凄まじいが、βテスト時に出てきた二つの魔剣は、こんな序盤では到底手に入らない代物だ。


 そして、特に新しくルシフェルが持つレーヴァテイン。これは推奨レベル七十以上の高難易度の入手方法を誇る。


「……唸れ!」


 斬り込む最中、ルシフェルが二つを魔剣を擦り合わせる。


「まずい!」


 セイア以下数名、魔剣の力を知る者は防御体勢を取るが、一部はルシフェルに突っ込んでいく。


「……ふっ」


 ルシフェルは口元を笑みに形取ると、魔剣が奮えた。


 漆黒の衝撃が周囲数メートルに当たり、八つ裂きにされる。


 魔剣の共鳴による攻撃だった。


 魔剣は互いにエネルギーを発しているので、合わせると共鳴して周囲に破壊をもたらす。


「くっ! ルシフェルは俺がやる!」


 セイアが呻いてルシフェルと戦おうと前に出る。


「……俺に勝てる者などいない。退け、一対一で充分だ」


 両者が味方を退けることによって、二人の間に空間が出来る。


「っしゃぁ!」


 しかし、そのまま激突するかと思いきや、第三者が割って入った。


 ボゴッ、と着地に合わせて地面が隆起する。礫が宙を舞った。


「「ジーク!」」


 両者は第三者を見て同時に呼ぶ。だがそこに込められた思いは全く違う。


 セイアは心強い味方が現れたと言う歓喜。


 ルシフェルは一度苦汁を飲まされているので厄介なヤツが現れたと言う忌々しい苛立ち。


「……見つけた」


 ニヤァ、とジークは悪魔の笑みを浮かべる。


「……ジーク。援護してくれるのか? だったら俺より他を……」


「……俺は二対一でも構わんが、そいつ一人では俺は倒せん」


 二人はジークへここへ来た理由を聞きたいようだった。


「……セイア。お前、ガイアだと思って戦うだろ。だからどうせ、甘っちょろいこと考える。だから絶対勝てねえ。大将が序盤で殺られちゃ、話にならねえからな」


 ジークは真面目な顔をして言った。


「っ……!」


 それにセイアは反論せず、俯いた。


 ……が、その甘さ、嫌いじゃあねえぜ。


 ジークは内心でいいセリフを言って、ルシフェルに向き合う。


「お前は部隊率いて進め。ここは俺が引き受けた!」


「助かる!」


 ジークが言うと、セイアは駆けていった。


「……正直に言ってみろ。何故セイアを逃がした?」


 セイアが去った後、ルシフェルはジークに尋ねた。


「……何って、決まってんだろ?」


 ジークは楽しそうな笑みを浮かべる。


「てめえと、一対一で戦うためだ!」


「……やはりか」


 呆れたようなルシフェルの表情。


「……ま、セイアが倒されると士気がた落ちってのもあるけどな。一番はやっぱ、てめえと戦うためだぜ」


 ジークはそう言うと、魔神を引っ込めた。


「?」


 ルシフェルは怪訝そうな顔をしてそれを見る。今から戦闘開始だと言うのに、何故戦闘態勢を解除するのか。


「……てめえとは戦いたい、ってのも大きいんだが、こいつの魂が俺にルシフェルと戦えってうるせえんだよ」


 ジークの言葉に、さらにルシフェルは怪訝そうな顔をする。


 ジークが魂を喰らい強くなるソウルイーターだということは聞いている。だが、その魂が煩いなどということは知らない。ここはゲームであって世界じゃないのだから。


「……見せてやるぜ、堕天使ソウル」


「っ!? まさか、貴様……!」


「“ルシファー”!」


 ジークの堕天使ソウルと聞いて、もしやとは思ったルシフェルだが、その予感は的中した。


 ジークの姿が変わっていく。


 左が漆黒、右が純白の六枚翼が生え、右が漆黒、左が純白の輪が頭の上に浮き、黒髪に白い筋が入っていく。全身に黒い筋が入っていき、右手に漆黒の片刃剣、左手に純白の片刃剣が現れる。


「んー。ルシファーは黒ばっかだったんだけどな」


 白と黒が混じり合う姿のジークは自分の身体を見て呟く。


「聖剣・アロンダイト! 魔剣・アロンダイト!」


 ルシフェルがジークの持つ剣を見て驚愕し叫ぶ。どうやら、聖剣と魔剣らしい。


 同じ名前なのは、同じ形なのでいいのだろう。


「二刀流なのかよ。ったく、剣なんて久し振りだな。カナに教えてもらった程度なんだが。しかも一刀流だったし」


 ジークはブツブツ言いながら、二刀をだらん、と下げて構える。一見隙だらけだが、隙がない。


 ルシフェルとジークの持つ剣について、解説しよう。


 魔剣・グラム。それは北欧神話の英雄ジークフリードの愛剣だと言われている剣で、古ノルド語で怒りと言う意味を持つ魔剣。ジークフリードがファフニールと言う竜を倒すために使ったと言う話が有名だ。


 魔剣・レーヴァテイン。北欧神ロキが作り出したとされる、魔法の剣。スルトが持つ炎の剣と同一視されることが多い。名前の意味は破滅、わざわい、不吉なこと、害、そして裏切り。


 まさにルシフェルに相応しい剣だ。


 アロンダイト。アーサー王物語に出てくる円卓の騎士、ランスロットの剣とされる。彼のエクスカリバーと打ち合っても折れない頑強さを持つ。最初は聖剣だったのだが、戦友の弟達を殺してしまい、魔剣に堕ちた。


 その両方がこのゲームには存在している。


「っ……らぁ!」


 ジークが跳ねるようにルシフェルに突っ込むと、ルシフェルは魔剣の二刀流でそれを迎え討つ。


 魔剣と魔剣の共鳴で周囲に衝撃が散り、破壊する。


 一方聖剣と魔剣と言う、対になる二つは反発し合い、輝きを放つ。


「ちっ!」


 それを見たルシフェルは舌打ちして後退する。


 ズバァン! と先程までルシフェルがいた位置に亀裂が走る。


 聖剣と魔剣が、互いに互いを破壊しようとした結果である。


「……いくぜっ!」


 楽しげに笑うジークが、魔剣と聖剣を擦り合わせながら突っ込んだ。

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