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Dive in the world   作者: 星長晶人
第四章 魔界大戦争編

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魔神と最終決戦、開始

 空に漂う雲の群れが流動する。


 ……動いてるって言えねえな。どんよりしてる。


 俺は苦笑して、どんよりと暗雲立ち込める、今にも降り出しそうな雲の下、崖の上に立って強くなり始めた湿った風に煽られていた。


「……さて、と。そろそろだぜ、お前ら。覚悟決めたか?」


 もう三日前から野営している。四日前、セイアからゲートから大魔王軍が出現したと連絡があり、俺達アンチ・ブレイズは三日前にここに来た。一日間があったのは準備のためだ。キャンプを張り、待つ内に双方の全戦力が集結し始めていた。


 ……戦争前のこのピリピリした空気、堪んねえよな。


 俺は後ろに控えるメンバーに顔を向けずに言いつつ、思う。


 これから大量虐殺が行われ、血を血で洗う戦争が巻き起こるのだと、そう思わせる空気。


「分かるのかよ、ジーク」


 メンバーの一人、眼鏡微ケメンのリューシンが言う。


「……分かるさ。戦争前のこの空気。間違いなく来るぜ」


 俺はニヤリと口端を吊り上げて笑う。


「……お前の勘は当たるからな。俺ちょっと覚悟促してくるわ」


 アンチ・ブレイズのいじられキャラたるリューシンだが、俺との付き合いは少しの差だが一番長いと言えるだろう。そんなリューシンは俺の勘の的中率を知ってるので、呆れて嘆息しつつも他のギルドの顔見知りに注意を促すため、どこかに去る。


 人間側、戦力は約五十万。


 魔界側、戦力は約三十万。


 世紀の大戦争になりそうだ。俺が楽しみにしない訳がない。


 これでもあと二十万と言うプレイヤーがいるのだが、各々の事情で来ていない。初心者だったり、奇抜な職業だから戦争では役に立たなかったり、と言う理由だ。


 人間側の主戦力は、LORDロードの残党を取り込んで最大のギルドとなった、マスターのセイア率いる盟約城騎士団。


 今戦争の作戦指揮及び参謀長官、レギオンのマスター、リンク。レギオンの各部隊は主力部隊に加わっている。


 主力部隊左翼担当、マスターのフリード率いる虚夢の宴。


 主力部隊右翼担当、マスターのネスト率いる昼寝王国。


 その他多数の中小ギルドが主力部隊に任命された。


 大多数を占める主力部隊の他に、後方支援部隊、回復部隊、波状攻撃部隊、そして先陣突撃部隊がある。あとは戦争に直接関係のない給仕部隊だろうか。


 後方支援は魔法を得意とし、あまり近接が得意じゃないヤツが集まった部隊だ。


 回復は回復を得意とするヤツが集まった部隊。


 波状攻撃はネシスオクスの戦場と言うこの場所の主な戦場となりそうな平野を囲むように崖があることを利用して奇襲をかける部隊。


 給仕にはアンチ・ブレイズのメンバー、セリアもいて野営時の食事管理を任されていた。


 そして先陣突撃部隊。その名の通り先陣切って敵に突っ込む部隊だ。


 そこに、俺達アンチ・ブレイズは任命されていた。


 他にはアンチ・ブレイズ解散危機の時にレアが体験入団したと言う屍鬼グールが入っている。そのギルド名に相応しい怪物がうじゃうじゃといた。いつか戦ってみよう。


 レアの話だと、あいつらはモンスターを喰ってパワーアップ出来ると言う。この好機に大魔王軍を喰って力をつけようと言う魂胆かもしれない。レアはゾンビだし喰えるかもしれないが、生理的に受け付けなくて無理だったらしい。……一人くらい仲間にしたいな。モンスターとか人を喰うヤツ。


「……来たぜ」


 俺は感情が昂るのを感じるがギリギリで抑え、言った。


 地鳴りのような雄叫びが、ここまで聞こえてくる。


 地響きのような行進が、ここまで振動を伝えてくる。


 おそらくは向こうの主力部隊十万以上の悪魔及び魔族、魔物が蠢いて、じわじわと、しかし確実に近付いてきている。


 中には空を飛んでいるヤツもいて、そいつらは多分悪魔かシュリナのように魔物の力を使えるヤツの鳥タイプだろう。


「向こうも相当化け物揃いだぜ? 魔物に変化するヤツもいるんじゃねえか?」


 鼓動が早くなるのを感じる。身体が熱くなるのを感じる。


「ジーク! 攻めてきてるぞ! そろそろ出撃準備!」


「うるせえ黙れ雑魚が! こっからでも見えるわボケ!」


 俺は少し焦った様子で走ってきたリューシンに怒鳴る。……今いい感じにエクスタシーなんだよ、邪魔するな。


「……お前酷い」


 リューシンががっくりと項垂れて落ち込んでいたが、そんなことどうでもいい。


「いくぜ、お前ら! 戦争だああぁぁぁぁぁ!」


 俺が吼えると、メンバーは各々頷く。


「魔神ソウル“第一形態ファースト・フォルム”!!」


 俺が叫ぶと、全身に濃い紫のオーラを纏う。背後に半透明で漆黒の筋肉隆々な巨体に、漆黒の角が生えた紅い瞳の魔神が現れた。


「我、汝の枷を解き放つ! 汝、不死の炎を持つ神意の鳥にして、最強の生命なり! 我の命に基づき我が身体に宿れ! 我、フェニックスの化身なり!」


 中二臭い詠唱を終えたシュリナの姿が、変わる。


 白い火の粉がシュリナを包んでいき、白く輝く炎の渦が巻き上がる。


 渦を突き破って、白く輝く炎で身体を構成する五メートル程の美しい鳥が姿を現す。


 新しく手に入れたスキル、フェニックス化だ。


「ダブルデュアルエンブレム!」


 リューシンが右手に籠手と剣、左手に丸盾と小刀を装備し、エンブレムを輝かせる。


「……神威憑依」


 ティアナが全身に漆黒の禍々しいオーラを纏う。


「ジェットウイング、展開」


 ジンオウがウィーン、と言う機械音を伴って背中に飛行機のような翼を出現させる。


 ……ロボットだよな。もう完全に人間じゃない。風呂入っても肉体の八割が鋼だったし。


「リミットブレイク」


 レアが見た目に変化はなくしかしパワーアップする。


「紙龍」


 薄ら笑いを携えたアレンシアが、紙で龍を形取り、自分の周囲にとぐろを巻かせる。


「シルフ、お願い」


 カリンが風の精霊に頼んだのか、周囲に風を巻き起こす。


「……来て、アンチ・ブレイズ」


 例によってリューシン以外のメンバーの人形が召喚される。


 それ以外のメンバーは何もしなかった。


屍鬼グール、先行くぜ!」


 俺はリューシンの胸ぐらを掴む。


「えっ? ちょっーー」


 驚くリューシンは無視して、思いっきりぶん投げた。


「待てこらあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 リューシンが叫ぶが、飛べないヤツが悪い。


「んじゃ、リューシンに続いて、行くぞ!」


 俺は強く地面を蹴って、その勢いのまま飛び、先行したリューシンの上空で止まる。少し遅れて、ジェットウイングで飛ぶジンオウ、紙龍に乗るアレンシア、風に乗って飛ぶカリン、俺の人形に抱っこされているカレン、飛べないヤツらはシュリナの背に乗って到着した。


「一人残らず、ぶっ殺せ!!」


 俺の楽しげな声に呼応するように、進軍してきた大魔王軍の雄叫びが轟いた。

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