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Dive in the world   作者: 星長晶人
第三章 大魔王軍の侵略編

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魔神とスカルデッドドラゴン

遅れました、すみません


次話から魔界との戦争になります


次は今週中に更新出来ると思います


普段は二千を目安にしてるので三倍ぐらいの長さなってしまいました

「悪魔ソウル“溶岩悪魔"!」


 俺は叫ぶように言って悪魔ソウルを発動させる。


 黒々とした岩石の鎧と、隙間を埋める紅赤橙黄の四色が混じり合うマグマ。翼膜はマグマのような色合いで、角や尻尾は黒い岩だ。


 ……ゴツいな。防御も攻撃もいけるから強いんだが。


 強いってのも理由の一つだが、骨系の敵には光と火が効くってのもある。マグマは火の上位だしな。ついでに土の上位でもある。


「フェニックスナイト!」


 傍らに立つシュリナが言うと、紅蓮の鎧姿がさらに炎に彩られ、鳥のような炎の翼が生える。ヘルムも追加された。


 リューシンも何やら叫んでいたが、無視。エンブレムを使ったんだろう。


 他の面々も各々武器を構えたり、顔を真剣なモノにしたり、カレンの場合は人形を召喚したりした。


 全員の視線が、眼だけが紅く怪しく光っている、ドラゴンをそのまま白骨化させたようなヤツを睨んでいた。……いや。一人だけ、リーニャは熱っぽい視線を向けていた。


 ……こいつってそんなに可愛いか?


 俺には全く分からない感性だ。さすがは変人テイマー。まあ、小さい時ぐらいは可愛いことを願おう。


「ってか、早くそいつらを臨戦態勢にしろ」


 俺は呆れてリーニャに言った。リーニャが今持っているテイムモンスターの三匹が、やる気なのに対し小さいままだ。自動的に大きくなる訳じゃないらしい。


「グロウアップ!」


 リーニャは素直に従い、三体を大人の姿へと変える。


 三匹は可愛いが、三体は威風堂々たる姿。……この三体を、目の前のスカルデッドドラゴンの一撃で倒されるヘボテイマーが使役してるとか、笑える。


 ファイブスターボニーのウリは、猪のでかい図体とは裏腹に、魔法による攻撃が充実している。突進も強いんだが、魔法で攻撃した方が強い。


 ガトリングファルコンのファルとユグドラシルエグザドラゴンのユザは互いに銃器を使った空中戦が得意だが、ファルは風、ユザは炎を得意とする。


「注意事項だ! スカルデッドドラゴンのブレスは運が悪ければ即死! 確率だが、ティアナは絶対にくらうな! あと魔法吸収のスキルを持ってる! タイミングが合わないとダメだが、一個につきその分吸収する! 分かるか? もしシアスの増殖させた全てが吸収された場合、滅茶苦茶体力回復するからな!」


 リューシンがスカルデッドドラゴンへと走り込みながら言った。リューシンは一応壁役だからな。一体が相手なら真っ先に突っ込む。


「脊髄砕いたら動けなくなるとかねえのか?」


「ある訳ないだろ! 破砕ダメージ分のプラスはあるが、再生する!」


 リューシンは無造作を振られた左腕をジャンプして避けながら、俺の言葉に答えた。


 そういや、ドラゴンにしては異様に腕が長いよな。


「いいから早く戦え!」


 リューシン一人で戦わせていると、怒鳴られた。……あの野郎。後ろから攻撃してやろうか? 平の癖にマスターに命令しやがって。


「……今はリューシンを囮に攻撃することだけ考えるぞ。だが、リューシンを背後から攻撃しても俺は咎めない!」


「何言ってんだ!」


 リューシンがこっちを向いてツッコんできた。……ほらほら。バトルに集中してないと、危ないぜ?


 俺はリューシンにスカル野郎の右手が迫るのを見て、ニヤリと笑う。


「がっ!」


 リューシンはあっさりと薙ぎ払われて、壁に吹っ飛んでいく。……ふむ。防御に重点を置くリューシンでも半分くらい。まともに三回くらったら死ぬな、あいつ。俺の場合だと二回で死ぬ。


「よしっ。連続二回以内なら死なねえな! いくぜ!」


 俺は言って、足に力を込め跳躍と同時に翼を羽ばたかせる。


「俺は実験体かよ!」


 リューシンが怒鳴ってくるが、無視だ。


 スカル野郎の瞳が俺に向けられている。


「はっ! 何だその目は? 俺に喧嘩売ってんのか? いい度胸じゃねえかよ!」


 俺は楽しげに笑って、滑空しながらスカル野郎に近付いていく。


 伸ばされた骨の手を避けながら顔面へと近付き、吸う肺もない癖に息を大きく吸うブレスのモーションをするスカル野郎へと突っ込む。


「バカ! 即死ありのブレスだぞ!」


 何も分かってないバカが叫んでくる。


「はっ! バカはてめえだ!」


 俺はさらに飛翔速度を上げて、右手にマグマの球を作り出した。


 スカル野郎がブレスを吐く直前にすれ違い様、マグマを開けた口に突っ込んだ。


「ははっ!」


 マグマを食ったスカル野郎は口の中でブレスとぶつかったマグマの暴発により、頭が弾ける。


「……美味いだろ? てめえを死に近付ける味だ」


 俺はスカル野郎の後ろまで飛ぶと振り返ってニヤリと笑う。


「……無茶苦茶だろ……!」


 リューシンが頭を抱えていたが、当然だ。格闘家は格闘術を使うが、不良はただ殴り合うだけ。そこにあるのは型にハマらない意地と意志だけだ。


「……」


 チッ。もう頭が再生してやがる。頭潰しても出来る隙は一瞬か。面倒だな。


「……では、切り崩すか」


 俺と同じことを思ったヤツがいた。


「柳田流刀術三の型」


 ポニーテールを揺らしながら走ってくる、カナだ。左腰に差してある鞘を左手で、柄を右手で握る構えーー抜刀術だ。


「螺旋迅!」


 スカル野郎の足元手前で立ち止まったカナは、一瞬で足をすり抜けた。……俺でも相対してねえと見えねえな。さすが。


「ガガ……!」


 スカル野郎の左足が付け根まで、螺旋状に切り刻まれていた。それによってスカル野郎はバランスを崩し、左手を着くような姿勢になる。……ちょっと斜めになった程度だな。しかもすぐに再生するんだろう。


「……その腕、貰うよ」


 右手を突き出した姿勢のディシアがニヤリと笑う。木剣がいくつも召喚され、左腕を串刺しにしようと飛ぶ。が、スカル野郎はそれを右手で薙ぎ払った。


「……」


 しかし、ディシアはさらに笑みを深める。……木剣の後ろに、炎出来た剣ーー炎剣を隠していたからだ。


 薙ぎ払いをした右手がすぐに戻ってくるハズもなく。


「グギャオ……!」


 左腕は炎の剣に焼かれ、左側の支えをなくしたスカル野郎は倒れた。


 倒れた直後に左足が再生するが、左腕が再生するまでしばらくは立てないだろう。


 ……しかし、あれだな。再生速度が違う。頭みたいな重要な部分程再生が早く、腕や脚はちょっと遅いんだろうか。


「畳み掛けろ! ーーいや、待て! 死骨砲だ!」


 追撃に走っていた皆に叫んだリューシンだが、スカル野郎が大きく開けた口に黒いモノを溜めているのを見て止める。


「あれの直線上にいるな! くらうぞ!」


 リューシンの叫び声を聞いて散り散りになる。その瞬間、それが放たれた。


 亡者の怨念の呻き声のような唸りを上げて黒い光線が発射される。


 向かう先には、ジンオウがいた。


「っ! ジンオウ!」


 ジンオウにあれを避けられる程の回避力はない。標的としては最悪だ。


「問題ない! キャノン砲!」


 ジンオウは焦る皆に言うと、両手をキャノン砲へと変えて、自分の横に向けた。


「そうか!」


 俺はジンオウがどうやって避けようとしているかが分かり、安心する。


「発射!」


 キャノン砲を発射し、その推進力で横に大きく跳ぶ。


 無事、死骨砲とやらを避けた。


「……ん?」


 だが、死骨砲が治まる気配はない。壁に当たっても、まだ続けている。


「伏せろ!」


 リューシンが言って、皆は伏せるが、俺は空中だ。……俺に攻撃するには首を一回転させて見上げる必要があるんだが。


「……マジかああああぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は叫び声を上げて、急いで滑空する。


 ぐりん、とスカル野郎がかなりの早さでこっちを向いてきた。もちろん、死骨砲付きで。


「こいつ関節ねえのかよ! あっ、骨だけか!」


 俺は舌打ちしながら言って、しかし自分でツッコんだ。


「……くそっ。しかも防御クソの割りには体力の減りがイマイチじゃねえかよ。一応、弱点突いてんだが」


 スカル野郎の体力は、やっと十分の一が減ったところだ。


「防御低い割りに体力と攻撃が半端ねえってのが普通だ。防御めっちゃ高くて体力めっちゃ少ないヤツの逆!」


「はぐれたメタル的なあれか!」


「それだ!」


 なら納得。防御ゼロに近い癖に体力と攻撃が半端ねえ。……いいじゃねえか。俄然、面白くなってきた!


「てめえら! リューシンが時間稼いでる間に作戦会議だ!」


 俺は言って、飛んで後方へ戻っていく。リューシン以外は皆戻ってきた。


「俺は作戦に入らねえの!?」


「誰かが時間稼ぎしねえといけないだろ。頼りにしてるぜ、最弱の囮」


「そこは最強にしてくんねえ!?」


 喚くリューシンはとりあえず無視だ。ああは言っても頼めば断らねえからな。道理でMな訳だ。


「で、作戦だが。俺とシュリナで羽と腕吹っ飛ばす。脚をディシアとカナでぶった切る。ジンオウが土手っ腹に風穴開ける。弱ったところへ残りが一斉攻撃。オッケ?」


「「「いやいやいやいや」」」


 全員に手を振って否定された。何故だ? 完璧な作戦のハズ。


「魔法吸収はどうするの? それに、一斉攻撃って雑」


 シアスが文句を言ってきた。……むぅ。まあ魔法吸収は厄介だよな。一斉攻撃全部吸収されたら倒しかけても全快するんじゃないかって思う。


「……雑って何だよ。じゃあシアス。お前は当たる直前で何か発動するか見切ってから増やすかそのままか決めろ。そうすれば最低限の回復でいける」


 最悪、弓での援護射撃でもいいしな。


「……分かった」


 シアスが頷いたので、もういいだろう。


「……じゃあいくぜ、シュリナ。ツートップのコンビネーション、見せてやろうぜ!」


 俺はシュリナに向けて拳を突き出す。


「……まあ、これでも長い付き合いよね」


 シュリナは苦笑して俺の拳に拳をつけた。


 二人同時に翼を羽ばたかせ、飛ぶ。


 風を切って、左右に分かれて飛んでいく。


「マグマ・インフィニアート!」


 俺は全身にマグマを纏い、伸ばしてきた左腕を掻い潜って途中、折り砕いていく。


「脆いぜ、骨野郎!」


 俺は腕を破砕しながら飛び、翼を根元からもぎ取った。


「全くね。カルシウム足りてないんじゃない?」


 シュリナも右側も殺ったようだ。翼と腕が火葬されている。燃やしたらしい。


「……脚の一本や二本、私一人でも問題ない。柳田流刀術三の型、追の字」


 両腕両翼を失ったスカル野郎の足元にカナが走り込んでいた。追の字ってのは、二連続でそれやるよってことらしい。


「二連螺旋迅!」


 さっきと同じ抜刀術の構えで、加速して脚をすり抜けた。スカル野郎の両足が螺旋状に切り刻まれる。


「グオオォォォォ……!」


 スカル野郎は胴体と頭だけになって倒れる。


「主砲、発射!」


 スカルの正面にいるジンオウが胸元にある主砲を展開していた。光が収束し、放たれる。


「ガアアアァァァァァ!」


 スカルも応戦しようと死骨砲を放ってきた。二つはぶつかり合い、しかしジンオウが押されている。


「ぐっ! 押される!」


 ジンオウは険しい顔だ。


「……想定内」


 その横を、ティアナが走っていた。……ティアナって結構考えて動くタイプだよな。


「……ツインノヴァ」


 ティアナは鎌の先端をスカルの頭に向けると、黒い波動を放って頭を吹き飛ばした。そのため死骨砲が途切れ、ジンオウの主砲がスカルの胴体へと叩き込まれる。


 ……消し飛んだな。だが、何だあれ? HPバーだけが虚空に残っている? ……七割減らしたが、まだ体力は残ってる。つまりは、そういうことだ。


「……しぶとい野郎だ」


 白骨の腕が現れて、呟く。……小さいな。全身が程なくして再生するが、一回り小さい。


「ギャグオオオオオオオォォォォォォォォォ!!」


 スカルは奇怪な雄叫びを上げると、跳躍すると同時に飛んだ。


「何だと!? あの羽で飛びやがった!」


 俺は驚愕の声を上げる。……スカルは残りがいる後方へと飛んでいく。まずいな。


 シュリナが驚くことが違うでしょ、と言う呆れた視線を向けられるが、今は置いておこう。


「この距離なら届く! 柳田流刀術二の型」


 カナがいち早く反応し、またもや抜刀術の構えをしていた。


「大切閃!」


 カナは抜刀する。高速に振られた刃は空を切るだけだが、スカルの尻尾と翼が斬れた。ついでに壁も斬れたが。


 大切閃ってのは、刃の直線上の障害物を両断する技。所謂飛ぶ斬撃ってヤツだな。


「……直接攻撃なんて、嘗められてるよね、姉さん」


「……うん。大丈夫、いける」


 それぞれの使い魔を置く姉妹が言った。


「イフリート!」


 カリンが傍らに立つ半透明な炎の巨人に言う。イフリートと言うらしいそいつは、炎を拳に宿すと、落ちてくるスカルをぶん殴った。


 ……精霊って確か、実体を持たないんじゃなかったか? 炎っぽいけどサラマンダーとは違うしな。上位精霊だから存在感強いとかそんな感じだろうか。


「……来て、アンチ・ブレイズ」


 カレンの言葉に応じ、アンチ・ブレイズのメンバーの使い魔が召喚される。


 ……リューシンがいないのはあれだ。お約束ってヤツだ。どうしてもカレンが作りたくないって聞かないもんでな。無理に作らせる訳にもいかないし、諦めた。


 メンバーの一斉攻撃とイフリートの拳でズタボロになるスカルだったが、徐々に再生していた。


「……尻叩きだな」


 寡黙な大工、ガラドが木の板でスカルの尻部分をぶっ叩いた。さらに奥に吹き飛ばされたその先には、


「行き止まりれすよ」


 ゾンビっ娘、レアが立っていて、殴られガラドの方へ吹っ飛ばされる。


「私にも活躍の場をちょーだい。炎天地」


 シャリアがそこにいて、上下から放たれる炎の奔流を巻き起こした。


「細切れにしてあげるわ」


「……紙吹雪」


 クアナの糸とアレンシアの紙で細切れにされる。


 ……まあ、再生するんだが。うちのヤツらってこんなにSだったか?


「エクスプロージョン!」


 最後はシアスが決めた。


 爆発を巻き起こす魔法を増殖させ、爆発に爆発を重ねていく。


 残っていた破片が少なかったからだろう。爆発が収まった後に人ぐらいの大きさをしたスカルが出現した。体力はほぼ真っ白。ギリギリのギリギリだな。


「ユザ」


 俺が言うと銃弾がスカルの頭を撃ち抜いた。


「よしっ。これで勝利だ!」


 スカルが完全に倒されると、俺は言った。歓声が上がる直前にレベルアップのファンファーレが鳴った。何人かがレベルアップしたんだろう。


「卵!」


 リーニャが黒の卵に白で骨の模様が書かれたモノを抱えていた。


 ピキッ。


 卵にヒビが入り、だんだんと広がっていく。すぐに生まれるらしい。


「カルッ!」


 中から出てきたのはスカルデッドドラゴンに瓜二つの、ちっちゃいヤツだった。……結構可愛いじゃねえかよ。


 不気味なだけだったあいつとは違い、愛嬌がある。


「あなたはカルよ! カルー!」


 リーニャが早速命名すると、あまりの可愛さ故にか頬擦りしていた。


 何はともあれこれで戦力強化完了だな。


「……ところでウリ、ファル、ユザ、レイナ、リーニャ、リューシン」


 俺は低い声で一人ずつ見据える。


「今日全然働いてねえな」


「俺は働いてたけど!?」


 リューシンが喚くが、無視。


「だって私の力ってアンデット系には効かないかもだし」


 レイナがしれっと答えた。


「ウリ!」


 ウリ、ファル、ユザが抗議してきた。……何何?


「リーニャが出番なさそうだから手を出すなって言っただと?」


 俺は三匹の話を聞いて、ギロッとリーニャを睨む。


「「「言葉分かるの!?」」」


 皆が驚いていたが、これくらい訳ない。


「当たり前だ。三日間ぐらい意志疎通してみ? 分かってくるから。……まあ、ってことで、リューシンとリーニャに罰を言い渡す!」


「何で俺まで!? 理不尽か!」


「ああ。仕事しなかったレイナに命ずる。二人を恐怖のドン底に陥れろ」


「「!?」」


「了解、ボス。それならーー私の得意分野よ」


 レイナは楽しげな笑みを浮かべて、すでに怯えている二人に顔を向ける。


「……ねえ。呪いとか怨念って、信じる?」


「「いやあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」」


 絶叫が聞こえたが、無視だ。そろそろ飯の時間だしな。セリナの作る飯が待ってる。


 と言う訳で、さっさと帰った。

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