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Dive in the world   作者: 星長晶人
第三章 大魔王軍の侵略編

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魔神とリーニャの頼み事

遅れました

すみません

「お願いがあります!」


「ウリウリ!」


「キュィ」


 狩りの休憩に、セリアが淹れてくれた紅茶でティータイムと洒落込んでいる中、変人テイマーことリーニャと、そのテイムモンスターである二匹、茶毛に黄色い星模様のあるチビ猪のウリと、翼にガトリングをつけた白いチビファルコンのファルが絨毯の敷かれた床に頭を擦りつけて土下座した。


「……それが人に物を頼む態度か? 頭が高い!」


 俺は言い、クリーム色のソファーの上に胡座をかいて座っていた俺の上にいた翼が大きく尻尾が長い赤色チビドラゴンのユザを床に立たせて言った。


「ユザ!? あんたもこっち側でしょ!?」


 それを見たリーニャが驚いて顔を上げてツッコむ。


「いやいや。お前の頼み事を、ウリやファルに付き合わせるなよ。この場合は、ユザが正しい」


 俺が言うとユザは胸を張った。ファルは土下座を止め、俺の肩に飛んでくる。ウリはファルとユザ、リーニャを交互に見て戸惑っていたが、やがて俺の方に駆け寄ってきた。


「薄情者!」


 リーニャが怒っているようなので、三匹を抱える。


「よしよし。お前らはいい子だな。お前らのマスターみたいに、人に物を頼む時に他のヤツを巻き込むようなヤツにはなっちゃダメだぞ」


 俺は三匹を撫でてやる。


「クッキー食べますか?」


 セリアがクッキーを焼いてくれたようだ。小さいクッキーを三匹に差し出している。香ばしい匂いが漂ってきた。……むっ。俺以外は食べているだと? セリアのヤツ、俺を最後にしやがったのか。


 ……俺は何故気付かなかったんだ。


「俺にも寄越せ」


 はぐはぐとクッキーを頬張った三匹が、美味しそうに顔を輝かせるので、余計に食べたくなった。


「はい、ご主人様」


 セリアは言って、俺の前の机の上にクッキーの山が乗った皿をことん、と置いた。


「……」


 俺は一つ、口に運ぶ。……これは!


「美味いな。さすがはセリアだ。よしよし」


 俺は程よい甘さが口に広がり、サクッとした食感のクッキーを褒め、セリアの頭を撫でてやる。


「……ふふっ」


 セリアは嬉しそうに顔を綻ばせた。


「で、何の用だ、リーニャ?」


 俺は他のヤツがセリアのクッキーに夢中なので仕方なく、リーニャに聞いた。


「クエストを受けたいのよ。テイムモンスター獲得が報酬のクエスト。ボスバトルだからさすがに私達だけじゃ勝てないし」


 ……ふむふむ。ボスバトルか。


「……よしっ。レベル上げも出来るし、やるか! 全員出動するか?」


 俺はやる気を出し、ベランダからぶら下がっているリューシンに聞く。


「推奨レベルは?」


 リューシンは答えずリーニャに聞く。


「五十五」


 ……おぉ。結構高いな。俺のレベルよりも高い。三つな。


「……パーティ平均よりも高いな。全員ならいけないこともない、か。全員出動でやろう。だから俺を下ろしてくれ」


 ……やっと五十越えたんだが、やっぱりもっと挑戦しないとな。


「んじゃ、リーニャ。全員召集するから、行くぞ」


「っ……ありがとう!」


 リーニャは嬉しそうに言った。


「ああ、セリアは留守番な。掃除でもしてレベルしててくれ」


 俺は言い、三匹を下ろして立ち上がる。


「……俺を下ろしてください」


 ベランダから逆さ吊りにされているリューシンが弱々しく言った。


 理由は、昨夜のことだが、ベランダによじ登り、ベランダ側の女子の部屋を覗こうとしたためだ。俺が妙な気配を感じて捕まえて事なきを得たが、クアナがベランダ側に住む女子の八名は怒り、クアナが代表して逆さ吊りにしたのだ。……アホだろこいつ。


「……もうしないって誓う?」


 シュリナがリューシンの鎖骨辺りにレイピアを突き刺して言う。


「いでっ! 誓います! 誓いますから!」


 痛いリューシンは足掻きながら言う。シュリナが嘆息してレイピアを抜くと、ホッとして涙を溜めていた。


 ドスッ!


「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 シュリナのレイピアが全く同じ場所を、今度は貫いた。


「……次やったら目だけでも済まさないから」


 レイピアを抜いたシュリナは、冷たい目で言った。


「……はい」


 リューシンは震える声で頷くと、糸が緩んで頭から地面に落ちる。


「んじゃ、アンチ・ブレイズ、出撃だ!」


 俺が言うと、着々と戦闘準備を始めた。


 ▼△▼△▼△▼△▼△


 そこは、暗い洞窟の中だった。


 ドーム状になっ洞窟は薄暗く、不気味さを漂わせている。


 そこに、光る一対の赤い瞳があった。


「こいつは……!」


 カタカタとそいつが近付いてきて、やっと正体が見える。


「スカルデッドドラゴン!」


 リューシンがウザいぐらいに演技がかった声で言った。


 高さは五メートル程度で、全長は七メートルくらいだろう。骨だけで瞳だけが赤く光っている。翼膜のない翼に筋肉も皮膚も脂肪もない骨だけの四肢や胴、顔。


「どんだけダイエットしたんだよ!」


 俺はビシッとスナップを利かせてツッコんだ。


「いや、もう死んでるから!」


 それにリューシンがツッコミで返してくる。


 生前は立派なドラゴンだったであろう凛々しい風貌をしている。


「……リューシン! 弱点と傾向!」


 俺はニヤリと口端を吊り上げて笑い、指示する。


「弱点は火系統と光系統だ! 特に聖属性は効く! 武器は鈍器の方がいい! 攻撃方法は爪と尾と牙とブレスだ! あと飛べる!」


 あの翼で飛べるんだな。


 俺が変な所に感心し、身構えると、前に人影が飛び出してきた。


「待って!」


 リーニャだ。


「あの子超可愛い!」


「「「可愛い!?」」」


 リーニャの言葉に全員が聞き返した。……さすがにこいつを可愛いとは思わねえ。小さくなったらマシかもしれないが。


「可愛いから攻撃しちゃダメ!」


 ああん?


 リーニャが骨竜を庇うように立ちはだかる。


「……そうかそうか。じゃあ一緒に死ね! 魔神ソウルーー」


「ごめんなさい! 倒せば貰えるからお願いします!」


 俺が頷いて魔神ソウルを発動しようとすると、リーニャは謝って後ろに逃げていく。


「さあお前ら! カルシウムを搾って搾りまくるぜ!」


「「「カルシウム取る気か!?」」」


 俺が笑って言うと、全員が驚いていた。


 ……カルシウム云々は冗談だとして、久し振りに格上のヤツとやる。


「油断せず、殺せ!」


「そこは油断せずいこうでいいだろ!?」


 リューシンが言うがそれだとパクリだ。


 おそらく、最終決戦前最後のアンチ・ブレイズでの戦いが始まった。

最終決戦は二話後からになります

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