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Dive in the world   作者: 星長晶人
第三章 大魔王軍の侵略編

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魔神と決戦まで数日

「今日は各自部屋の模様替えとレベル上げをする」


 俺は全員がきっちり目覚めた所で今日の予定を発表する。


「いつまでもこうして寝てる訳にもいかないし、そろそろ大魔王軍との決戦が近くなってきてるからな。レベル上げしとかないと出遅れる」


 俺としては、大魔王軍相手に先陣切って突っ込めるくらいにはなって欲しい。俺がそうするのについてきてもらいたいからな。


「……なるほどな。じゃあ俺を下ろしてくれ」


 リューシンミノムシが頷いていた。


「レベル上げだが、個々と全体とグループ、どれがいいと思う?」


「そりゃ個々だろ。全体だと経験値が分配されるからな。難易度が高いとこ行くんならペアとかグループでもいいけどな。さあ俺を下ろしてくれ」


 ゲーオタのリューシンから助言を貰ったので先に進めるか。


「……ふむふむ。じゃあそんな感じで」


 俺は締めて、行動を開始しようとする。


「待て待て待て待て! 俺を下ろしてくれってさっきから言ってるだろ!? 何でジークどころか全員無視すんの!?」


 ミノムシが喚き始めた。……ウザいな。


「……喚くな、ミノムシが。消すぞ」


 言葉に殺気を滲ませて言う。


「怖っ! 確かに今はミノムシっぽいけど、俺にだって人権っつうもんがあるんだぞ! 法律と戦えんのか?」


「それはお前、俺と敵対するってことか? 日本政府滅ぼすぞ」


「ホントにやりかねないよな! ごめんなさい下ろしてください!」


 リューシンはやっと自分の立場が分かったらしい。


「よしっ。手っ取り早く外で消し飛ばすか」


 俺は言ってクアナがリューシンをミノムシのまま外に連れ出す。


「ちょっ、待って! デスペナあるんだからな!?」


 制止するリューシンの声は無視だ。


「「「……死ね」」」


 女子全員から絶対零度の視線を向けられ、斬撃やら何やらがリューシンを包み、消し飛んだ。……このゲームのいいとこは味方にも攻撃が当たることだよな。まあ、ダメージは通らないからただ転送させただけなんだが。それなのにリューシンのあの慌てよう、バカみてえ。笑えるよな。


「じゃ、行くか」


 俺が言うと、全員晴れやかな顔をして頷いた。


 ▼△▼△▼△▼△▼△


 そうして数日が過ぎ、セイアからトップギルドとトッププレイヤーに対して招集がかかった。


 場所はセントラルエリア中央に位置するキャピタルシティ、その最重要拠点、ギルド本部。集められたのはその会議室だ。


「んだよ、ったく。やっとギルドが軌道に乗ったとこなんだぜ?」


 会議室の円卓に座るトップギルドのマスターやソロプレイヤーが醸し出す重々しい空気をぶち壊すかのような乱暴な口調は、少数精鋭ギルド、アンチ・ブレイズのギルドマスター、言わずと知れた戦闘狂、そしてかつては東京最強の不良とまで言われた血塗れの真紅こと、ジークである。


 その後ろに立つ二人の内一人は、同じくアンチ・ブレイズの副マスターにして暴走気味なジークの抑制力でもある、最強種のモンスターの名を冠する職業を持つ不死鳥の騎士、シュリナである。最近の悩みは上手くメンバーをまとめられないこととデスペナルティ。


 そしてシュリナの隣に立つのが、元βテスターも多いこの場では知っている者も多い眼鏡微ケメンにしてアンチ・ブレイズの参謀と知恵袋を担うリューシンである。所属したギルドが別で、その能力を買っていたなら、然るべき扱いを受けただろうと言う噂の人。


 そんなジークの態度に、目くじらを立てた者がいた。


「……戦闘狂。これは今後に関わる重要な会議だ。口を慎め」


 トップギルドの一つ、虚夢の宴。そのギルドマスターであり、五メートルもある超大鎌を振り回して戦う、ジークとは現実で因縁がある、フリードである。


 その背後には誰も控えていない。虚夢の宴で二番目に強い??? という名でジンと呼ばせているプレイヤーが来るハズだったのだが、本人がかなりイラついている様子で手がつけられなかったので一人だ。


「へいへい」


 ジークはそんなフリードを、手をひらひらと振って軽くあしらった。そんなジークの態度もフリードの気に障るが、フリードは会議を乱さないためにも我慢した。


「フリードの言う通りだ。大魔王軍との最終決戦に向けて、ある程度の場所に見当をつけ、日取りに応じて戦力を集結させなければならない」


 真面目な口調で言うのは、LORDロードが自動的に解散し、残ったメンバーの大半を取り込み最大のギルドとなった盟約城騎士団のギルドマスターにして、グランドクエスト対策において総指揮官を務めるセイアである。


「場所だが、調査を進める内に未開の地に魔界とこちらを繋ぐゲートがあり、そこのすぐ近くの平野と谷や崖、丘が隣接するネシスオクスの戦場で待ち伏せすることになるだろう。日付はそうない。こちらで目が利く者を選んで見張らせるが、一週間もないと考えてくれ」


 セイアの言葉に、数人が息を飲む。そんな中でニヤリと笑う者が一人。


 ちなみにネシスオクスの戦場とは、この世界の創世神話において、英雄達が雌雄を決するべく戦地とした場所であるとか。最終決戦に相応しい場所である。


「……やっとか。長かったんだぜ、今まで。やっと、殺し合える」


 戦闘狂、ジークである。ジークは口端を吊り上げ、裂けるように笑い、少し尖った犬歯を見せる。その笑みに、見る者は寒気と恐ろしさを覚えた。


「……。各自、いつでも決戦に挑めるよう、準備すること。以上だ」


 セイアはこほん、と咳払いを一つして空気を整えて締める。


 たったこれだけの会議。


 だが、プレイヤー達の心の炎を、業火にまで変えるのには充分だった。

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