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Dive in the world   作者: 星長晶人
第三章 大魔王軍の侵略編

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魔神と男子風呂会

 湿気があり、湯気が覆う。


 温かく、風呂だと確信する。


 もうすでに身体は洗ってあるので、足からゆっくりと湯に入っていく。


 やがて肩までどっぷり浸かると、


「あ~っ……」


 生き返るような心地よさと共にそんな声が漏れた。


 というわけで、現在アンチ・ブレイズギルドホームの大浴場にいる。


 ログアウト不可になってからは一度も味わってないこの感覚。


 毎日風呂に浸かってのんびり温まりたい日本本州に住む俺としては、言葉にしがたい極楽だった。


 ……バトってるのも楽しいが、こういうリラックスの場って大事だよなぁ。


「「「ふーっ……」」」


 アンチ・ブレイズの野郎陣が全員入っている。それでも広いくらいの広さはあって、ゆったり出来る。


「……なあジンオウ」


 俺はふと気になってジンオウに聞いてみる。


「何だ?」


 ジンオウは気持ち良さそうに目を閉じて浴槽の縁にもたれかかっている。


「お前機械だけど大丈夫なのか?」


 職業が進化する度に機械度が増えていくアンチ・ブレイズ古参のメンバー、サイボーグ野郎を少し心配する。風呂入って水のせいで機械が壊れてデスったとか情けなくて嫌だぞ?


「……ああ。防水機能があるからな」


 ジンオウは少しも慌てずリラックスして答えた。……どうやら、本当に大丈夫らしい。


「それならいいけどよ。錆びるなよ?」


 俺はそう言って同じように縁に身体を預ける。


「……そういや、大浴場って男女分かれてるよな」


 俺は女湯とを分かつ壁を見て呟く。壁は上が少し隙間があって、迎撃を省みず登れば覗けそうだ。


「……リューシン対策だ。ジークの部屋は広いから個別にシャワールームでも付けるか?」


 ギルドホームを設計、建設した大工のガラドが言う。……まあ、リューシン対策なら仕方ねえか。ちょっと甘い気もするが。


「遠慮しとく。メンバーで五人は裸見てるし、別に毎日毎日覗かなくてもいいしな。そこまで欲求不満でもねえし」


 俺は性欲が一般かそれ以上だが、他のヤツらにはない戦闘欲があるからな。ゲーム内だとどうしてもそっちが先行しちまうし。


「……カリン、カレン、シアス、カナ、とセリアだろ」


 リューシンが不貞腐れた顔で言った。その後でケッと吐き捨てる。


「ま、三人は事故だけどな」


 カリン、カレン、カナだ。シアスはまあ、あれだし。セリアは昨日見たし。いや、今日だな。昨日はメイド服で楽しんでた。


「……ケッ。リア充が。こちとら娼館のお姉さんに焦らされて終わりだぞ!? 嘗めてんのか!」


 リューシンはどうも機嫌が悪い。自業自得だってのに。


「……自分の顔と股間見てから言えよ」


 エルフ補整があるとはいえ微妙イケメンだ。


 眼鏡でエルフなのに知的に見えない。それがリューシンの凄い所だ。


 残念エルフ。微ケメンと呼ぼう。


「顔はエルフ補整でいいハズ……」


 リューシンはそう呟いて俺達の股間を見比べていく。


 ガラド、ジンオウ、俺、ディシアの順だ。……んん?


 一人、男だけで気心知れたギルドのメンバーでありながら、無礼講じゃない輩がいやがった。


「……おい、ディシア?」


 俺は人一倍小柄で中性的なルックスの剣召喚師君に声をかける。俺に声をかけられたディシアはビクッと肩を震わせる。


「……何かな、ジーク?」


 そう言うディシアは俺と目を合わせようとしない。


「……お前、何でタオル巻いたまま風呂に入っていやがる?」


「っ!」


 俺が核心を突くと、ディシアは風呂のせいじゃなく汗を、冷や汗をかいていた。


「俺やジンオウ、ガラドはもちろん、股間に自信のないリューシンだってタオルは巻いてないんだが、隠してるのか、ディシア?」


「いや、見せる程のモノでもないよ」


 ……自信ねえのか、それとも精神的に男同士でも恥ずかしいと思う程子供なのか。


「……おい。湯船にタオルを浸ける非常識な野郎がいるぜ? 男同士なのに隠してる小心者がいるぜ?」


 俺が言うと、他三人が目を怪しく光らせる。


「剥ぎ取れぇーーーーー!」


 マスター命令を下す。


 三人は一向に見せようとしないディシアからタオルを剥ぎ取るべく、手をわきわきさせながら迫っていく。


 ……端から見るとゲイだよな。ディシアが童顔なのもあるし、ジンオウとガラドがむさ苦しい程漢ってのもあるが。


「……後で風呂上がりの女子を拝まないとな」


 目が腐りそうだ。


 俺が一人悩んでると、三人はディシアを取り押さえ、タオルを剥ぎ取った。


「……僕、汚されちゃった」


 涙目でぐったりと地面に倒れるディシア。……止めろ。マジでガチなゲイは許容出来んぞ、俺。普通にエロエロでいいと思う。女子とのな、もちろん。


「「「人聞きの悪いこと言うんじゃねえ!」」」


 三人が嫌な顔をしながらツッコんだ。


 ……ガラドがツッコむのって珍しいよな。イメージに合わないと言うか。


 まあ、職人だったガラドもアンチ・ブレイズの空気に毒されてきたってことだな。……いいこと、なのか?


 まあ、ギルドの抑止力、シュリナがいるから何とかなるだろうな。


「……ふーっ」


 俺はディシアの演技にシャレにならんと怒る三人を尻目に、のんびりと風呂を満喫していた。


 ……やっぱ、最高だな、風呂って。


 改めて風呂の偉大さを実感する。


「ジーク、見るか?」


 ジンオウに声をかけられてそっちを向くと、ちゃんとタオルを巻いてないディシアがそこにはいた。


「……やっぱリューシンが最小だったか」


 小柄なディシアにも負けるとは、終わったな。


「うるせぇ。お前だって最初からデカかった訳じゃねえんだろ!? このヤリ〇ン野郎!」


 誰がヤリ〇ンだこの野郎。


「ああん? 誰がヤリ〇ンだこの野郎。そんな粗末なもんぶら下げといて俺に何か言える立場か? ああん? この童貞の不能野郎が」


「誰が不能だ! 童貞は認めるけど不能は認めねえぞ! 確かにこの中じゃ小さいけどよぉ!」


 最後の方は悲痛な叫びになっていた。


 ……残念だな。ブサイクでもデカければエロゲみたいに寝取ることだって出来ないでもなかったのにな。


 俺がヤリ〇ンを否定したのは、俺の大半の相手をしたあいつがヤリ〇ンってことになるからだ。なんてビッチな響きだよ。巫女服が似合わねえ訳だ。


「……ジンオウも小さい方なのか?」


 俺はふと思って聞く。体格と比較すると、リューシン並みとも言える。


 男の象徴の大きさは、俺、ガラド、ジンオウとディシア、リューシンの順だった。


 ジンオウとディシアは体格が違う割りに変わらない大きさだった。


 俺はあれだ。


 最強の不良として、喧嘩も強くないといけないが、夜の戦いも強くなけりゃあならねえっつう神の思し召し的な?


 まあ、天性のもんだしな。


 俺はまたギャーギャー騒ぐ四人を余所に、今度こそ風呂を満喫した。

次回は女子の風呂会の予定です

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