魔神と新規施設
かなり遅れました
新年明けましておめでとうございます
一週間後。
待ちに待ったギルドホームが完成間近に迫っていた。
あとはアンチ・ブレイズの看板を設置するだけだ。
「……よしっ」
それはマスターの俺がやることになっている。
「……」
トンテンカン。
俺は看板の四隅を釘で止める。
「完成だ!」
「「「いええええぇぇぇぇぇい!!」」」
歓声が上がった。
「よしっ! 部屋割りを決めるぞ!」
ガラドは部屋を多めに作ってくれたので、三十二部屋ある。
「悪いが、俺には部屋がある」
俺はリューシンの言葉に胸を張って返す。
「お前、狡いぞ」
「マスター特権だ」
「……で、どこだよ?」
「ベランダのど真ん中の二部屋分だな」
ガラドに頼んで広くしてもらった。
「……狡い、狡いぞ。俺がベランダを取ればベランダから女子の私生活覗けたのによ!」
出ました、変態発言。
「じゃあ、リューシンは予定通り別館な」
別館もガラドに頼んで造ってもらった。
「別館?」
「ああ。あそこにあるだろ?」
俺は庭の一角を指差す。
「って、犬小屋じゃねえかよ!」
そう、リューシンがギリギリ入れるくらいに犬小屋だ。
「何で俺だけそんな扱いなんだよ!」
人生の負け犬が吠えるが、無視する。
「見取り図はガラドが書いたから、それに合わせて部屋決めをしてくれ」
俺が言うと、ガラドが見取り図を取り出す。
俺達アンチ・ブレイズのギルドホームは木造の三階建て。
一階は部屋十一個ぐらいを貫いた広さを持つリビングが玄関を入ってすぐに設置されていて、それがホーム一階の左を占めている。
右にはリビングから廊下が真っ直ぐ伸びていて、その両側に五個ずつ部屋がある。
二階は一階の右のような感じになっていて、部屋が二十個ある。
三階は屋上と屋根裏部屋が半々だ。
この広さでこの速さ。さすがはガラドだった。まあ、皆の協力あってこそだろうけどな。
「共通はリビングとキッチン、屋上、屋根裏部屋、あと一応ベランダだな。ああ、風呂もあるぞ」
身体が汚れないとはいえ、風呂という癒しは必要だ。……俺が無理言ってガラドに作ってもらったんだが。
ゲームの中に閉じ込められてから、三食睡眠風呂は絶対だったアンチ・ブレイズが廃れていることに気付き、風呂とキッチンと個室のベッドを用意してもらう。
……料理ってスキルなくても出来るのか? まあ、建築の手伝いは出来たし、本来の料理スキルに頼るのかもしれない。建築も下手なヤツは下手だったしな。ステータスじゃなく、現実に依存してる可能性が高い。
「……どっちにしろ、炊事担当のプレイヤーが欲しいな。補助系職業ってのが少ねえし」
このままじゃ、ただの戦闘集団だ。
「……だったらいいとこがあるんだが」
リューシンが俺の独り言を聞きつけ、声を小さくして話しかけてくる。
「……何だよ」
うぜぇな。
「……いいから聞けって。このDive in the worldっつうゲームは、現実にかなり忠実に出来てる。それはいいな?」
「……バカにしてんなら腕へし折るぞ」
それくらい俺にだって分かる。大体、モンスターの解体が出来る時点でおかしいだろ。
「……確認だよ。でさ、このゲームの交際、結婚のシステムって知ってるか?」
……。リューシンがそういう話題を出した時は、ろくなことを言わない。
「知らねえよ」
「じゃあ教えてやる。お前だって彼女の一人や二人、欲しいだろ?」
……何で二人っつってんだよ。浮気する気満々か。
「……このゲームの交際は、同性異性関係なく行える。交際を申し込んでオッケーされれば成立だ。交際のコマンドってのがあってな。しかも、何人でも際限なく交際可能だ。結婚も似たようなもんで、結婚はアイテムが共有される。……くらいか」
ふーん。あれだろ? 結構人数多くて同性結婚が
認められてる国とか一夫多妻または一妻多夫制の外国人も違和感なく結婚出来るようにってことだろ?
「しかも、年齢制限ないし、肉親でも別にいいしな。ゲームだし」
……このゲームはあれか? シスコンブラコンファザコンマザコン、百合ゲイ等様々な特殊性癖を持つヤツのために作られたのか?
「……で、遠回しに言って子作りのシステムなんだが、女性プレイヤーが許可すれば出来る。まあ、どうしても命を作ることは出来ないから子供は出来ないけどな。ーーここからが本題だ、ジーク」
……ナンパして女見繕うって話か? 最低だな。大体、性別が現実と違うヤツだっているんじゃないか?
「……実はな? 新たに新施設が二つ出来たんだが、その一つがなんと、娼館なんだよ!」
……俺の予想と大差ないな。
「……で、もう一つの施設は?」
俺は呆れてそう返す。……ったく。これだからモテない童貞は。
「……おい。娼館に興味示せよ。……ギルド用の闘技場、コロシアムだよ」
「……っ」
俺は思わずニヤリとしてしまう。
「……おい。その悪魔の笑み止めろ。娼館に興味示せ」
「……何だよ。正当にセイアとかを殺れるんだぞ? これ以上面白そうなことはねえよ」
「……一生童貞だぞ」
「……あ? 誰が童貞だこら。お前と一緒にすんじゃねえよ、ああん?」
「……怖いから睨み利かすな。って、まさか、シアスとか?」
「……企業秘密だ。で? 娼館行ってどうすんだよ?」
「……話そらしやがって。まあいい。結構値は張るんだが、現実ではブスでこっちでしか経験出来なそうなヤツとか、元々ビッチでゲームだしいいやって思ってるヤツとか、たまに純情な初めての娘とかが一晩相手してくれるんだってよ。達するまでの耐久は現実と一緒ぐらいらしいけどな。相場は十万ぐらいだってよ」
……ハズレ多いな。まあ、現実では会わないだろうから、後腐れなく出来るのか。
「……リューシン。俺も男として興味が出ないでもない。行ってやらないでもないぞ?」
「……素直にいきたいって言えよ。じゃあ、無難なところでジンオウでも誘って、今日の夜いこうぜ」
「おう」
ディシアは男らしくない、ガラドは女に興味なさそう、ジンオウはなんか、耐久高そう。機械だし。
ってことでジンオウだけ誘って、部屋決めをしてから、夜に戦闘へと向かった。




