魔神と九人の魔王と大魔王
「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!」」」
俺の姿を見てか、大魔王軍が歓声を上げる。
「違えよ! 俺はお前ら側じゃねえ! 魔王二人とルシフェルが倒されたんだよ!」
俺は勘違いしてる野郎共に怒鳴る。
「「「ええええぇぇぇぇぇぇ!?」」」
「わかったらさっさと消えろ! じゃねえと、全員デスペナルティに苦しんでもらうが?」
「……逃げろ! 撤退だ!」
「魔王が殺られた!」
「嘘に決まってんだろ! てめえら全員、生きて返すか!」
俺は背を向けて逃げる大魔王軍の後ろから、波動を放って追撃する。
「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!」
「くそっ! なんてヤツだ! 悪魔め!」
「ははははっ! 死ね死ね死ねぇ!」
俺は逃げ惑う大魔王軍を、殲滅するまで追撃した。
「……ふぅ」
もうMPがすっからかんだ。
「……相変わらず酷いな」
リューシンが呆れ顔で言う。
「むっ。敵発見、死ね!」
「待て! 俺は味方だ!」
俺はリューシンに波動を放ち、攻撃する。
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
逃げるリューシンを殴り飛ばした。
「止めなさい。ゴミに構ってないで、ガイアの正体が魔王だってこと、皆に伝えないと」
シュリナがそんな俺を止める。……リューシンのことゴミっつった? シュリナが? シュリナもすっかりアンチ・ブレイズの一員だな。
「シュリナ、そんなこと言ってたら可哀想だろ、ゴミが」
「それもそうね」
「……ってことで、ガイアは魔王ルシフェルでした! ーー以上!」
俺は大声でそう言い、メンバーを連れて領土に戻り、ギルドホーム造りに精を出した。
▼△▼△▼△▼△
「……魔王ルシフェル」
若い男の声がルシフェルを呼ぶ。
「……はい」
ルシフェルは膝を着いてそれに応える。
「……まず、今までご苦労だったな。人間側への潜入、長い間よくやってくれた。お前のおかげで、大体のプレイヤーの実力は判明した。これで、最終決戦までにレベル上げをし、デスペナルティ分を取り返せば問題ないだろう」
「ありがたき幸せ」
「ーーだが。まさか、気付かれるとはな。お前の警戒していた老人でも総指揮官でもないヤツに。ジーク、と言ったか。バアルの件といい、防衛の件といい、厄介なヤツだ。しかし、お前の失態で重要拠点を落とせなかったのは痛い」
「……申し訳ありません」
ルシフェルは人間側に潜入するにあたり、いくつかヒントを与えることが条件となっていた。しかし、わかりやすいヒントを与えるわけにもいかず、うやむやなヒントを与えていたのだが、そのせいでバレてしまった。
「……いや。謝罪など必要ない。失態は成功で取り戻すのが、ここだ」
「はっ」
「これからは、魔王の一角として、俺に貢献してもらおう。魔王ルシフェル、お前にこれを返す」
男はルシフェルに、今ルシフェルが持つ大剣と同じような大剣を渡す。
「……はっ。大魔王様」
ルシフェルは恭しく両手で大剣を受け取る。
ルシフェルは元々、大剣二刀流だ。しかし、人間でそれが出来るのはステータス的に厳しいので、隠していた。
「ルシフェルも手加減するから負けんだよ。ま、次は俺が殺るけどな」
「……要注意」
「手に余るようだったら手を貸してあげてもいいわよ?」
「……所詮は雑魚なり」
「手を貸すのはやぶさかじゃないよ。ま、五百万で」
「めんどくせぇな」
ここに、七人の魔王が揃う。
傲慢を司る魔王ルシフェル。悪魔の王。黒マントに黒い鎧、黒い二つの大剣。
暴食を司る魔王ベルゼブル。悪魔公爵。襟、裾、袖の広い黒いロングコートに逆立った黒髪、両手の黒いクロー。
嫉妬を司る魔王レヴィアタン。海竜悪魔。漆黒の浴衣。
色欲を司る魔王アスモデウス。女帝悪魔。黒いボンデージに鞭。爆乳の長身、色気のある美女。
憤怒を司る魔王サタン。魔界の王。黒い和服、長いポニーテールに日本刀。目の細い男。
強欲を司る魔王マモン。守銭悪魔。黒いズボン、黒いシャツ、黒いパーカーに黒いナイフ数本。ショートカットの美少女。
怠惰を司る魔王ベルフェゴール。だらけ悪魔。黒いよれよれのスーツ、ネクタイに黒髪オールバック。二丁の銃。
「……さらに二人、いるんだが?」
虚飾を司る魔王スパーヴィア。隠れ魔王。全身の黒いアクセサリー、黒いシャツ、黒いズボン。二本のレイピア。長髪の男。
憂鬱を司る魔王アセディア。隠れ魔王。黒い巫女服に黒い薙刀。左目を隠した暗い美少女。
「これは人間も驚くでしょう、大魔王様」
大魔王。黒い襟のあるマントに黒く輝く王冠。
「……ああ。レベル上げが済んだら、人間を根絶やしにするぞ」




