魔神とバアル
「バアル、お前の部下はあっさり殺られたぜ?」
ジークは笑って言う。
「所詮は雑魚だからな、貴様の仲間と同じように」
「あぁ? それ以上俺の仲間を侮辱すんなよ。殺すぞ、雑魚野郎」
ジークはバアルを睨んで言う。
「魔神ソウル“第二形態”!」
ジークは臨戦態勢を取る。
「はっ! 虫けらは虫けららしく、地に這いつくばれ!」
バアルは刀を抜いて突っ込んでくるが、その途中で吹っ飛んだ。
「……何か言ったか?」
ジークがそれに正面から迎え撃ち、ぶん殴った。
「……雑魚が!」
バアルが怒りを露にし、紫のオーラを纏う。
「はっ!」
ジークは笑って、魔力の球をいくつも放つ。
「効くかよ」
一振りで全てが斬られてしまう。
「ん?」
ジークは、球が色んな方向から斬られているのに気付く。
「……仕方ねえ。魔神ソウル“第三形態”!」
ジークは第三形態を使う。
漆黒の翼が生え、ねじ曲がった漆黒の角が生え、先の尖った漆黒の細い尻尾が生え、全身が漆黒に覆われる。漆黒の長い爪が生え、牙が生え、纏った漆黒が毛のようになる。
それは最早、魔神というよりも、黒の化け物だった。
「かっ!」
ジークは翼と跳躍、二つの推進力を使い、バアルとの距離を一気に詰める。
「アスラブレス!」
そこから至近距離で、漆黒のブレスを放った。
「斬る!」
バアルが刀を一振りして、ブレスを掻き消すが、そこにはしっかりとバアルの剣が写っていた。
方向がバラバラな斬撃が。
「……なるほどな。一振りでいくつもの斬撃を放つかもしくは……」
ジークには他の可能性が頭にあるようだった。
「確かめるっきゃねえな!」
ジークは拳に漆黒のオーラを纏わせ、近接戦闘に挑む。
「懐に来るとは、バカめ!」
バアルが刀を一振りするーー前に、ジークが刀を止めた。
「なっ!? ……ふん、バカが!」
バアルは最初は驚いていたが、すぐにニヤリとする。
「ぐっ!」
何故か、バアルが刀を振っていないのに、ジークは六回斬られる。
「……そういうことかよ」
ジークは一旦距離を取り、納得したような笑みを浮かべる。
「……てめえの能力は刀とは別に、見えない刀があるって考えればいいか。別々に攻撃出来るみてえだしな」
「ほう? これを見切ったのはお前が初めてだ。だが、もう一つのネタで終わるだろうがな」
バアルは一つ種を明かされたというのに、余裕そうな態度を崩さない。
「ネタ? 地中にいる、こいつらのことか、よっ!」
ジークはおもむろに地面を殴り付け、軽いクレーターを作る。
「っ!」
そこにいたのは、紫の蟹と紫の蠍。バアルの殺した三人を殺ったのは、こいつらだったということらしい。
「こいつらは最初に出てきただろうが。俺が忘れてるとでも思ったのかよ?」
ジークはしてやったり、と嫌な笑みを浮かべる。
片っ端からぶん殴って倒すジークが、敵の観察をするようになったらしい。かなりの成長だ。
「……まあいい。スコル! ラク!」
バアルは二体に命じ、ジークを襲わせる。
「はっ! 直接来ねえのかよ」
「はっ! 俺が直接殺るまでもない。二体は身体から猛毒を出している。触れただけで、貧弱な人間ごとき、動けなくなる!」
「……忠告どうも」
ジークは両手に漆黒のモノを溜めていく。
「アスラニードル!」
それを無数の針にして二体に飛ばす。
「はっ! 堅い殻を持つこいつらに、そんなモノ効く訳がーー」
「ギギィ!」
「グギィ!」
バアルが嘲笑した時、二体の身体を針が貫いた。
「なっ!?」
「驚くなよ。甲殻系モンスターは弱点魔法で攻撃するか、一気にぶっ壊すか、コツコツ攻撃するか、比較的軟らかい関節部分を狙うか、しかないだろ?」
「……そうか、関節部分……!」
ジークの放った針の一部は二体の関節に刺さっており、二体は動けない状態になっていた。
「ああ。アスラバースト!」
ジークは左手を前に出し、漆黒の波動を放ち、二体を倒す。
「っ!」
「さあ、殺ろうぜ? ボコボコにされて、腸ぶちまけて、死ね」
その数分後。
内蔵を辺りに散らばらせたバアルの死体が出来上がっていた。
そのジークの戦い方は凄惨で、近付いたら内蔵引っ張り出す、みたいな戦闘だった。
そんな中、恐怖で鈍ったバアルをぐちゃぐちゃにして笑うジークは、まさに悪魔と言っていい。
まあ、魔神だが。




