魔神と新メンバー
遅くなりました
「おぉ。ガラド、結構出来てきたじゃねえかよ」
俺は建設中のギルドホームを見て言う。
大体の骨組みは出来ている。
「……皆のおかげだ」
作業を進めながらガラドは素っ気なく答える。
建設の主要メンバーはガラド、ジンオウ、クアナだ。ガラドはもちろん、ジンオウは力仕事が出来るということで入り、クアナは糸を使った器用さで組み立てや、細かい手作業をやっていた。
他の皆もガラドにやり方を教えてもらいながら手伝っていたが、リューシンとディシアはいらないと言われてパトロールと材料調達に精を出している。
「ガラド、何か手伝おうか?」
「ああ、一階の床を作り始めてくれ」
「はいよ。……懐かしいな。空き地に勝手に家作ろうと頑張ったことを思い出す」
「……いつの頃かは知らんが、よく作ろうと思ったな」
「まあな。小学……四年よりは前だったな。二年の頃だ。テレビで豪邸見てな。俺も欲しいって思ったんだよ。本当は庭があれば良かったんだが、生憎と庭がないマンションだったかアパートだったんでな。近くの空き地に自分で作ることにした。そこでゴミ漁って使えそうなヤツ探してミニチュア作ったんだよ」
「……完成したのか?」
「ん? まあな。まあ、結構小さかったぞ。装飾が細かすぎない程度の大きさで。子供用ハウスみたいな」
「……生粋の天才か、ジークは」
「まあ、家で細かい部品作って、そっから組み立てたからな。夏休みの課題にしてはやり過ぎたけど」
「……ミニチュア豪邸が小二の夏休みの課題とは、さすがジークだな」
……何か、ガラドに呆れられてるんだが。
「ジーク! 大変だ! 一大事だ!」
「そしてお前は変態だ。で、どうした?」
リューシンが慌てて走ってきた。
「……さりげなく酷いこと言いやがって。まあいい。今日はLORDのとこに襲撃があった。それで、ガイアが殺されてエリア1は占領された!」
「何?」
“孤高の魔王”が殺された?
「……LORDが一枚岩じゃなかったってことだ。スパイが結構いたみたいでな。ガイアは不意をつかれて、内側から乗っ取ったみたいだ」
……ふむ。いくらガイアでも仲間に攻撃されるとは思ってなかったみたいだな。俺なら、返り討ちにしてやるが。
「あと、昨日幽霊が来てマスターに仲間に入れてくれ、って言っといてくれって言われたぞ」
ああ、レイナか。
「レイナだろ? 結構強かったし、もう加入してる。今は死んだ者同士気が合うのか、レアと買い物に行ってるぞ」
「入れたのかよ。しかも、何でレアまで知ってんだ?」
「俺がお前以外に伝えたからだ」
「酷えな!」
レイナはソロプレイヤーでもトップレベルだし、戦力アップだな。他にも増えるといいんだが。
ああ、ソロプレイヤーと言えば、スレイヤ。あのじいさんは強いぞ。元々の強者というか、何というか。雰囲気からして、そこら辺のヤツとは違う。俺の勘だが、今まで外れたことはない。あのじいさんはガイアよりも強いかもな。
「で、LORDが防衛失敗したからどうなんだ?」
「ああ。セイアがガイアとスパイじゃないメンバーを呼んで、事情を聞いている。あと、エリア1は大魔王軍がうようよしている。気をつけろよ」
「ああ、それなんだがな」
「ん?」
「さっき、クアナがゴブリン狩りにエリア1行ったぞ」
「はあ?」
「最近細かい作業ばっかりでストレス溜まっててな」
発散しに行った。
「……おいおい。今は危険だぞ。いくらあのドSクアナでも、大魔王軍と正面衝突するようなもんだ。今までの襲撃はLORDんとこ以外様子見だろう。あんな雑な攻め方だしな。だから、エリア1には強敵がうようよいる可能性が高い」
なるほどなるほど。
「……それなら、心配ないわ」
クアナが戻ってきていた。
「って、ずいぶんボロボロだな?」
「……そうね。私としたことが、負けて帰ってきたわ」
クアナが、負けた?
確かに、服はズタズタに引き裂かれ、右腕が丸ごとない。左手の小指が欠けている。
「……ほう?」
「相手のバアルっていうヤツ、私の糸が見えてたわ。それで、皮膚が堅くて腕力が強くて、剣で糸を切り裂かれて」
HPを確認すると、レッドゾーンのギリギリだった。デスする直前か。
「じゃ、シャリア呼んで手当てしてもらえ。ちょっと、俺には用事が出来た」
俺は言って、クアナの頭を撫でてすれ違う。
「……シアスとジンオウ、ディシアとレイナでも呼ぶか」
クアナをあそこまで痛め付けたヤツだ。絶対、拷問しまくってから殺してやる。




