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Dive in the world   作者: 星長晶人
第三章 大魔王軍の侵略編

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魔神とギルドの領土

「……」


 俺は悪魔ソウル“ブラッドデビル”で空を飛び、見渡しのいい場所で浮いていた。


 リーニャはウリ、ファル、ユザに敵襲警戒巡回を任せてギルドホーム建設場所を探している。


 クアナは糸を最大限に伸ばし、張り巡らせている。糸にかかったヤツがいれば、敵かもしれない訳だ。


 シュリナは炎の翼で飛び回っている。真面目にやっているらしい。


「……風通しがよくて、水が近い所がいいんだが」


 川か湖があるとか。


 ……軽い別荘だよな、それ。


「理想は湖だが、そんなとこあったっけな?」


 俺は辺りを見渡してみる。


「……フィールドにはあるんだが、フィールドにギルドホームって作れるのか?」


 答えは返ってこないが、気になるところだ。


 俺はリューシンへの強制通信をする。


「リューシン、フィールドにギルドホームって作れるのか?」


『ん? ……まあ、作れることは作れるが、面倒だぞ』


 作れるのか。


「いい場所を見つけた。でかい湖があるとこだ。そこに皆集合させてくれ」


『湖? はいよ。まあ、面倒でもいいんならいいさ』


 呆れたようにリューシンは言って、俺は通信を切る。


 さて、行くか。


 ▼△▼△▼△▼△


「「「……」」」


「どうだ? いいと思うんだが」


 黙り込む皆に聞く。


「俺はいいと思うぞ。まあ、面倒な手続きがあるのが難点だが」


「その手続きってのを教えてくれ」


「……まず、ここら一帯のモンスターを全部狩らなければならない。もちろん、湖の中のヤツもな。それが俺達の領土になり、モンスターは出てこなくなる。んで、マスターが領土申請すれば完了だな。ちなみに、領土にする場合、領土ボスってのを倒せば大丈夫だ」


「へぇ。まあ、面倒じゃねえな。一番面倒なのは、領土申請だろ」


「「「申請書類とか書くの苦手そうだ」」」


 その通り、苦手だ。


「申請って言っても、マスターの名前と場所を書くだけだから大丈夫だ。俺が言う面倒事ってのは、モンスターを狩る方だ。領土ボスを倒さない限りモンスターは現れるからな。周りのモンスターを抑えつつ、領土ボスを狩るんだ。湖も含めるなら、二体倒さなきゃいけないしな」


 へぇ? ま、俺らなら大丈夫だろ。


「領土ボスってのは強いんだろうな?」


「ああ。とりあえず、ヒューマンゴブリンよりは強いな」


 ……何か、ビミョー。


 ヒューマンゴブリンって、帝国攻めた時の、俺が一瞬で消し飛ばしたヤツだろ?


「……あいつだってホントは強いんだよ。魔法も武器も使えるし、プレイヤーバーサスプレイヤーみたいな感じで戦えるんだよ。お前が不意打ちで消し飛ばしたけどさ」


 リューシンが頭を抱えて言う。


「まあ、楽勝だろ。んで? 領土申請ってのは俺がしなきゃいけねえのか?」


「当たり前だ。マスターなんだからな。それより、モンスターを全滅させなきゃいけないんだ」


「そんなの簡単だろ?」


 とりあえず、片っ端からぶっ飛ばせばいい。


「いや、言う程簡単じゃねえよ。領土ボスを倒す人と、雑魚を倒す役に分けねえと」


「何でだ?」


「だから、領土ボスを攻撃すると、雑魚モンスターが一斉に寄ってくるんだ。さすがにボスと雑魚共を一気に相手すんのは面倒だろ?」


 まあ、確かにな。


「じゃあ聞くが、水中戦出来るヤツが何人いる?」


「俺は出来るぞ」


 まず、リューシンが手を挙げた。


「私は無理よ。水中じゃあさすがに役に立たないわ」


 炎を司る不死鳥、シュリナが残念そうに言う。


「……多分、無理」


「俺も無理だな」


「私も無理ね」


「僕も無理かな」


「無理、だと思います」


「無理れすね」


「……同じく」


「紙を使う私は無理ですね」


「私も皆も無理ね」


 他のメンバーも首を振る。


「だろ? 必然的にリューシンが雑魚、俺がボスをやることになる」


「……俺が雑魚をやるのは決定なのな」


「……そうね。じゃあ、陸の方は任せて。私達で何とかするわ」


「おう。よろしくな」


「いや、ジーク。湖には領土ボスと普通のフィールドボスがいるんだぞ。二体同時は無理だろ」


「余裕だ。ってか、領土ボスってどうやって出現するんだ?」


「領土申請すれば出てくる」


 そうか。


「じゃあ、ちょいと申請してこようぜ。リューシン、行くぞ」


「はいよ」


 リューシンを連れて、領土申請に向かった。


 ▼△▼△▼△▼△


 領土申請はあっさり終わった。


 範囲ってのがちょっと面倒だったが、適当に湖の周りを囲って、家建てる所をちょっと広く取った。


「ん?」


 シュリナ達が石で出来た巨人、ゴーレムとかいうヤツ三体と戦っていた。


「何やってんだ?」


「ジーク! 急にゴーレム三体が寄ってきたの!」


 シュリナがそいつらと戦いながら叫ぶ。


 ゴーレムは茶色と赤と青がいる。属性で変わるんだろうな。


「悪魔ソウル“合成悪魔”。だらぁ!」


 悪魔の姿になってゴーレム三体に波動を喰らわせる。


「くっ! ゴーレム、ファイアゴーレム、アイスゴーレムだ! 中ボスレベルだぞ。領土ボスに連れられて来たんだ!」


 リューシンは走ってゴーレムと皆の間に立ち塞がる。


「リューシン、お前はそっちやってろ。湖は俺一人でやる」


「少しの間だけだ! こっちを倒したら行く!」


 ゴーレムのパンチをガードしながら叫ぶリューシン。


「いらねえよ」


 俺は皆に背を向け、湖に近付こうとする。


「っ!?」


 ゴーレム達がいるその上空。そこにいる三つの影が皆に向かってナニカを放とうとしていた。


「ちっ!」


 俺は舌打ちして影の背後まで飛ぶ。下に集中して俺に気付いていない。


「デビルブラスト!」


 両手から青黒い波動を放つ。


「ぐっ!」


 呻いて、しかし無傷だった。


「……結構やるじゃねえか」


 真ん中にいる、漆黒の鳥のような六枚翼を持ち、頭の上に漆黒の輪が浮いている。金を基調とし、黒が入った長剣を持っている。


 両側にいるのは三ッ首の悪魔、だろうか。蝙蝠のような一対の翼に獣のような顔。二足歩行だが、どこか獣じみている。


「我、天から堕ちし者なり」


「あん?」


 何わけわかんねえこと言ってんだ?


「ジーク! そいつは堕天使・ルシファーだ! 魔王並みの実力を持ってるぞ!」


 リューシンが気付いて叫んでくる。


「……へぇ? ルシファーって魔王じゃねえの?」


 俺は一旦降りてリューシンに聞く。


 今回のグランドクエストの大魔王軍にもルシファーって魔王がいるとか何とか。


「魔王の方はルシフェルな。大魔王軍は大魔王の下に七つの大罪を司る悪魔の王、魔王がいるんだが、その中のルシフェルの双子の兄貴らしい」


 堕天使も魔王もいる設定なのか。


「多分、領土ボスだ。ルシフェルがいるから、限定とかだな」


「まあ、ゴーレムとあいつらに分けて戦えよ」


「ジーク!」


 リューシンの叫びに反応してルシファーを見ると、剣を構えて突っ込んできていた。


「ーー空中で鳥とやり合おうなんて、十年早いわよ」


 だがそれは、割って入った者に阻まれた。


「ナイス、シュリナ」


 我らが副マスター、フェニックスのシュリナだ。


「ガアアアァァァァァ!」


 二体の悪魔も飛びかかってくるが、


「ヒュイイイイイ!」


「グガアアアァァァァ!」


 ファルとユザが阻んだ。


「こいつらは私達に任せていいわよ。ジークが水中戦やってくれないと終わんないんだから」


「ああ。頼りにしてるぜ」


 俺は安心して背を向ける。


「……ジーク、頑張って」


「誰に言ってんだ? ティアナこそ、頑張れよ」


 通り過ぎる時にティアナが声をかけてきたので、笑って返す。


「悪魔ソウル“水穿悪魔”」


 水中に住む悪魔。水系悪魔何種類か狩るとゲットした。合成悪魔に似てるな。ヒレのようなものが身体の所々にあり、翼はない。鎧のような堅い鱗に覆われていて、全体的に水色が多い。


 俺は水中に飛び込む。


「ーーさあ、湖のモンスター共。一匹残らず駆逐してやる!」


 俺は飛び込んできた俺に目を向ける雑魚と、湖底深くにいる二体の強者見て、面白そうに、猟奇的な笑みを浮かべた。

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