悪魔とアンチ・ブレイズ解散危機
「はっ! 『大魔王軍の侵略』ってのは、プレイヤー同士戦わせるためのクエストってわけか」
俺はニヤッと笑いながら言う。
「……嬉しそうね。ゲームに閉じ込められたってのに」
シュリナが呆れて言うが、構わない。
「まあ、俺はいつだってこんなもんだ。デスゲームになろうが、ログアウト不可になろうが、構わねえよ」
実際、それを楽しむのが俺ってもんだろ。
「それで、どうする? このままフィールドに出るのか? それとも、出ないのか?」
リューシンが怯えたように言う。
「……じゃあ、マスターとして言う。お前ら、抜けていいぞ」
「「「っ!?」」」
俺の言葉に全員驚愕する。
「アンチ・ブレイズは解散。お前らは他のギルドに入ればいい。俺も戦闘狂集団のいるとこに入ればいいしな。……まあ、何も抜けろっつってんじゃねえよ。よく考えてみな」
「……私は抜けないわよ。ログアウト不可で怯える程繊細な神経はしてないわ」
シュリナが言うが。
「まあ、ロリババアが言ってたことを信じれば、だがな。ログアウト不可とか言っといて、デスゲームだったり、あのデスペナルティがフェイクだったりな」
「それは……」
「ないとも限んねえだろ? それに、お前らを欲しがるギルドなんて結構いるぜ? 俺ら、ギルドランキング上位に食い込んでるからな」
「……」
「まあ、三日待ってやる。答えを出しな。あと、残るなら新メンバーを加えようと思ってるから」
俺はそう言って、立ち上がる。
「ジーク、どこ行くんだよ!」
「ああ、三日後の昼にここ集合な」
俺はリューシンに答えず、ギルド集会所をあとにした。
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「おいてめえ! ジークだろ?」
俺はフィールドに出ると、よくわからん集団に絡まれた。
「あん?」
「……その目、やっぱジークだな。マスター! 当たりっぽいっすよ!」
そいつは後ろを振り返って言う。
「そうか。じゃあ、てめえら、戦闘だ!」
一番後ろにいた、筋肉隆々の俺と歳がそう変わらない男が言う。
「おらぁ!」
俺に殴りかかってくるマスターの付き人達。
「るせぇ!」
全員殴り飛ばした。
「弱いな。何だよ、お前ら」
「俺らはギルド、喧嘩上等。てめえを勧誘しに来たぜ」
「はっ! んで、お前らは挨拶代わりに襲ってきたわけか!」
面白い!
「いいぜ! 相手してやる。不良気取りにモノホンの不良を見せてやるよ!」
俺は楽しそうに笑って言った。
「ああ! 最強の不良直々に相手してくれんだ! 手加減しねえよ!」
……名前で俺に目を付けてた、か。それで実際に見て確認した、と。
「はっ! すぐ死ぬんじゃねえぞ!」
俺はそいつと、殴り合いを始めた。
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私ーーシュリナはジークの言ったことを考えていた。
確かにクイーンは嘘をついたかもしれない。しかも、マスターのジークが戦闘狂だから、進んでフィールドに出ていく。
「……はぁ」
ジークが去って、皆は散り散りになった。
「あの、シュリナさんですよね?」
「えっ?」
同い年くらいの女の子に声をかけられた。
「そう、だけど」
「あっ。シュリナさん、私についてきてください!」
「ちょっ」
わけがわからないまま、女の子に引っ張られていく。
「皆、連れてきたよ!」
女の子が手を振るその先には、十数人のプレイヤーがいた。
「え~っと、誰?」
「私達は鳥系職業の集まったギルド、鳥王国なの! シュリナさんに入って欲しいんだけど」
「……考えさせて。でも、三日ぐらい、体験していい?」
「もちろんだよ!」
女の子の笑顔に、少し罪悪感が湧いた。
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「……」
私ーーティアナは皆と別れてから、とりあえずフィールドに向かった。
ジークの言葉を聞いて皆黙った。けど、私には皆がバラバラになるのは考えられない。
「……あの、ティアナさんですよね?」
「……? ん」
同い年くらいの女の子に声をかけられた。
「あの、ちょっと来てください」
「……」
私は女の子に引っ張られていく。
「……」
やがて、数人のプレイヤーがいるところに来た。
「ティアナさん、私達はあなたをこのLUK最悪のギルド、大凶八転びに引き抜きたいんです」
……。
…………。
「……体験させて」
「はい、喜んで」
……ギルド全員私みたいだったら少し気になる。
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「……むぅ」
俺ーージンオウは考え込んでいた。
が、特に抜けるつもりはない。
「ジンオウ、だよな?」
「ん?」
サイボーグのような姿をした少年が立っていた。
「お前に、俺のギルド、機械兵団マキナに入って欲しいんだ。機械っぽいヤツらが集まってるんだ」
「少し、体験させてもらおう」
俺は他が抜けてアンチ・ブレイズがなくなる懸念をしていた。
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「剣士芸団に入ってください!」
僕ーーディシアはギルド勧誘を受けていた。
……剣士芸団って、ギルド名決める時に僕が言ったヤツじゃないっけ?
と思いながら。
「体験させてもらっていいかな?」
そう答えた。
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「中国を司る我がギルド、中国四千年の歴史に入ってくれ」
私ーーシャリアは引き抜きを受けていた。
「それって……。まあ、体験ぐらいはさせてもらうわ」
私が適当にボケて考えたヤツじゃ、という言葉を飲み込んだ。
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「モンスターの虐殺を活動とした、虐殺集団に入ってくれ!」
私ーークアナは暗いイメージのある人達に声をかけられました。
「あの、今は体験だけで」
ジークよりも楽しそうな人はいない、かな? と思って受けてみました。
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「屍鬼に入ってはくれないだろうか?」
私ーーレアはゾンビみたいな生気のない人達に声をかけられました。
「まあ、体験ぐらいならいいれすよ」
アンチ・ブレイズは解散の危機ですからね。
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「建築株式会社ファインに入ってくれ!」
ふむ。勧誘されているようだが、会社とはいい響きだな。
「いいだろう。三日ほど体験させてくれ」
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「裏表リバースに入ってください。多重人格が集まってるんです」
私ーーアレンシアはギルド勧誘をされていた。
「まあ、どこで情報を入れたかは知りませんけど、様子見をさせてください」
ジークが早速ギルド紹介に書いたのかもしれませんが。
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「俺達のギルド、守護神に入ってください! 囮として」
「その紹介で入るヤツなんざいないけど、様子見させてくれ」
俺ーーリューシンは呆れながらそれを受けた。
ジークが新メンバーに迎える人って、あいつだよな。
俺が巻き込んじまったから、後で殴られるだろうな。




