悪魔とオーガゴブリン決着
少し短めです
「首吊り♪」
クアナは上機嫌でオーガゴブリンを吊るす。
オーガゴブリンの皮膚は意外と硬く、今のクアナではスパッと綺麗に切れない。
「……もうモンスターを一々苛めてる暇はなさそうだから、こうやってじっくり殺してあげるわ」
オーガゴブリンは吊るされたまま、首に巻かれた糸を外そうとする。だが、本来は切れ味抜群の細い糸を掴めるハズもなく、じたばたと動くだけだった。動いて悪化したのか、HPがぐんぐん減っていく。
「ーーっ!」
その内、オーガゴブリンは声にならない断末魔を上げて事切れた。
「グガァ!」
オーガゴブリンの拳が振るわれる。
「はっ!」
気合いの声と共に、レアが拳を振るい、両者の拳が激突する。
グシャッという生々しい音をたてて潰れたのはどちらの手か。
「グガァ!」
「あれ?」
……両者である。オーガゴブリンはレアの繰り出された拳の威力によって。レアはオーガゴブリンの皮膚の硬さによる反動によって。
「あー、一応剣交えた時もダメージ扱いになるんれしたね」
レアは大して痛みもなさそうに言う。
……ゾンビだからか。
「……まあ、関係ないんれすけど」
そして、踏み込んで一気に距離を詰める。
「グガアアァ!」
レアが拳を振るい、オーガゴブリンの腹を捕らえると、十数メートル先の壁まで吹っ飛び、壁に激突して消失した。
「ふん!」
ガラドが木の板を振るう。
「ガッ!」
オーガゴブリンは両腕でガードしながら、宙に打ち上げられる。
「ホームラン」
ガラドは力一杯木の板を握りしめ、右利きバッターの構えを取る。
「ギガッ!」
オーガゴブリンは宙で身動きが取れず、ただ落ちてくる。
「ふんっ!」
タイミングを合わせて、木の板を振る。木の板は見事に直撃して吹っ飛んでくかと思ったが、ポリゴン体となって砕け散った。
「……」
アレンシアは薄ら笑いを浮かべて扇子を振るっていく。
扇子は自身の切断能力の他に斬撃を飛ばすことも出来るようで、今は後者だ。
扇子による斬撃で浅い切り傷が全身に出来ていくオーガゴブリン。……休まぬ怒濤の攻撃にオーガゴブリンは近づけていない。
「……いいぃ」
やや頬が赤くなり始めた。
「紙吹雪」
呟くと、アレンシアの周りに紙吹雪が舞う。
「……」
扇子を口元に当てて、バッとオーガゴブリンを指すと、紙吹雪が一斉にオーガゴブリンに向かって飛んでいった。
「グガッ!?」
例えるなら、小さな飛ぶ斬撃か。一枚一枚が刃となってオーガゴブリンの全身を切り刻んだ。
「……ふふっ」
オーガゴブリンが消滅してアレンシアは微笑む。
クアナは苛めることに快楽を得るが、アレンシアは殺すことに快楽を得るんだろうか。
「はっ!」
クレイスは騎士剣を振るう。
「グッ!」
オーガゴブリンは後方に飛び退きつつもガードする。
「浅いか!」
それにいち早く気付いたクレイスは追撃のために踏み込んで、
「一閃」
横薙ぎに剣を振るった。
「ガァッ!」
オーガゴブリンは呻くが、そこまでのダメージはない。
「……騎士閃光!」
クレイスの持つ騎士剣が光輝き、光速で三回斬った。
「ガ……」
小さく声を漏らして、オーガゴブリンは砕け散った。
ーー戻ってジーク視点。
「おぉ、皆やるな。予定通り倒してんじゃん」
俺は皆を見渡して言う。
「当たり前だ。それより、あれがジェネラルゴブリンとかいうヤツか?」
リューシンが俺の後ろの虚空を指差して言う。
「……おいおい」
俺は振り向いて見て、半笑いになって呆れた。
「そうだ。あれが我が軍を苦しめたジェネラルゴブリンだ」
クレイスが少し苦々しい顔をして言う。
ジェネラルゴブリンというらしいそいつは、全長五メートル程の巨大なゴブリンだった。しっかり金属製の鎧を着込んでいて、左手に盾、右手に剣を持っている。
「さて、十二人でやれば何とかなるだろ」
「……十二人で何とかなるって、お前にしては弱気だな」
リューシンが前に出て俺に並ぶ。
「いつも通り、圧倒的にボコボコにしてやろうぜ」
「……ああ!」
頼もしい限りだぜ、お前ら。
「っしゃ! じゃあ、やってやろうか!」
「「「おう/ええ/はい/ああ/……ん!」」」
各々好きなように返事をして、ジェネラルゴブリンと対峙した。




