悪魔とVSオーガゴブリン
オーガゴブリンの全長は目測で三メートルってとこか。
「……丁度十二体。一人一体でいいな」
都合がいいな。
「私は少し不安だな」
クレイスが言う。……まあ、戦ったことがあって負けてたら不安だろうが。
「アレンシアを守るために頑張れよ、騎士」
「……わかっている」
忠誠心の高い騎士は守るべきものがあると強いらしいからな。
「さあ、ボッコボコにしてやろうぜ」
ニヤリと笑って、宣言した。
ーー三人称視点。
「ははっ! いいぜ、その調子だ!」
ジークはファイタータイプのオーガゴブリンと素手で殴り合っていた。
「……ギッ」
……と言っても、かなり一方的だったが。
サタンソウルでは、全ステータスが×5になるので、オーガゴブリンなら余裕だ。
「ギィ!」
オーガゴブリンは反撃に移る。ーーが。
「……ちゃんとパンチ出来るんじゃねえかよ」
ジークに片手で受け止められた。……まあ、それでも十分の一程度はくらっていたが。
「らぁ!」
ジークはオーガゴブリンの右ストレートを左手で受け止めた後、右手に黒い球体を作り、放った。
「ギイイイィィィ!」
オーガゴブリンが悲鳴を上げて倒れるが、まだHPは残っている。
「死ねよ」
そこに、悪魔の笑みを浮かべたジークが、オーガゴブリンの顔面に黒い球体を放って、トドメを刺した。
「……まあ、準備運動にはなったか」
悪魔は、肩を回してニヤリと笑う。
「……」
シュリナは細剣使いのオーガゴブリンと睨み合っていた。
「はっ!」
シュリナの突きも、オーガゴブリンに防がれる。
「フェンシングの試合みたいね」
さっきから、どっちかの突きを防ぐ。それを交互にやっているだけだが。
「フェニックスフォルム」
シュリナは勝負を決めにかかる。
「ギッ……!」
徐々にオーガゴブリンが押されていく。
「火花」
オーガゴブリンが防戦一方になり、シュリナが高速の突きの三連撃を浴びせる。
「ギィ!」
その一回がオーガゴブリンの手を貫き、細剣を落としてしまう。
「炎天下」
シュリナが突きを放つと、周りに炎の爪が出来てオーガゴブリンを襲う。
「……ふぅ」
オーガゴブリンは倒れた。
「結構キツいわね」
シュリナは冷や汗をかいていた。
「おわっ!」
リューシンは無様に転がってオーガゴブリンの棍棒を避ける。
「よくあんな簡単に戦えるな」
リューシンはジークが一方的に殴ってるのを見て言った。
「こちとら、エンブレムの二重使ってんのに」
ーー元々の才能の違いだ。
「……声聞こえたんすけど」
ーー気のせいだ。
「理不尽な……! 俺はモテないし、キモいって言われるし! 全部神様のせいだろ! 呪ってやる」
一人でブツブツとよくわからないことを言う可哀想な子、リューシン。
ーー……そうか。それは残念だな。
「えっ?」
ーー折角、可哀想だからお前に運命の出会いを作ってやろうと思ったんだが、呪われるなら止めよう。
「すいません神様! 俺に運命の出会いをください!」
……オーガゴブリンは、何言ってんだ、こいつ。みたいな目でリューシンを見る。
ーー……はぁ。仕方ない。だが、ちゃんとギルドに貢献しろよ。じゃないと運命の出会いはなしだ。
「うおおおぉぉぉぉ! 俄然やる気が出てきたぁ!」
リューシンは何やら叫んで呆れているオーガゴブリンをぶった切る。
ーーその調子で精進したまえ。
「了解です!」
リューシンは空に向かって敬礼する。……なんて痛い子なんだ。
「……」
ティアナはさほど苦戦していなかった。
魔法と二本の鎌を器用に扱って、オーガゴブリンを翻弄していたからだ。
「ブラッディクロス」
赤黒い十字架がオーガゴブリンを貫き、終わった。
「楽しまないから、加減なし」
なるほど。
「……ふむ」
ジンオウはオーガゴブリンを両手のマシンガンで蜂の巣にしながら頷く。
「この程度なら大丈夫か」
それで頷いていたらしい。
「くっ……!」
ディシアは苦戦していた。遠距離で、高威力の技を持っていないディシアにとってはオーガゴブリンは苦戦する相手だ。
「鋭い剣」
まず、鋭い剣でオーガゴブリンの足を地面に縫い付け、
「木の剣」
木の剣をいくつも召喚してオーガゴブリンを後ろに倒す。
「鋭い剣」
そこで、鋭い剣でオーガゴブリンの手を地面に縫い付ける。
「鋼鉄の剣」
鋼鉄の剣を首に刺す。が、皮膚が硬いのか、切れ味がイマイチなのか、突き刺さらなかった。
「木の剣」
鋼鉄の剣の柄に木の剣を当て、押し込んだ。
「……僕にはキツいね」
ディシアは苦笑して言った。
「金塊」
シャリアはオーガゴブリンの頭上に金の塊を出現させ、脳天にぶち当てた。
「グ……アァ……」
さすがに効いたのか、目を回しながらフラフラするオーガゴブリン。
「牙天爪鱗火」
オーガゴブリンの頭上の遥か上、そこに、紅蓮の炎の渦が広がっていた。
その渦が光り始め、渦から紅い逆円錐が出来て、オーガゴブリンを貫く。ただし、それだけではない。
オーガゴブリンを貫いた逆円錐の先、地面に刺さったその部分から、無数のトゲが生まれる。トゲは渦巻くようにオーガゴブリンの全身を貫いた。
「……ふぅ。こんな大技だったんだ」
少し呆れ気味に笑って、シャリアは勝利した。




