悪魔とゴブリン帝国
「ここです」
着いた先には、大きな国があった。
「「「……」」」
皆呆然としていた。
城下町はゴブリンで賑わい、門番もゴブリンだった。
……ゴブリン普通に住んどる!
「……周りは高い塀に覆われてて、正面の門から突破するしかないな」
国に喧嘩売るとか、久し振りだな。
「突破しないで普通に入るとかはないのか」
「……残念ですが、ゴブリン以外入国禁止です。それと、全滅させなければクエスト達成にはなりません」
「虐殺ってことか」
「……何でお前は笑ってんだよ。怖えよ」
しまった。
「悪い。血が騒いでな」
「……サイヤ人かよ」
地球人だ。
「……広いな。何組かに分かれて行った方がいいのか?」
「いえ。正面から攻めていれば集まってくるハズなので、大丈夫です」
ならいいか。
「あたしが門番殺っていい?」
すでに戦闘モードのクアナが言う。
「……住民にバレないように殺れよ」
レアとガラドの二人が驚いているが、気にしないでおこう。
「わかってるわ」
酷薄な笑みを浮かべて左手を伸ばす。少し指を動かすと、門番の二体のゴブリンの首が落ちた。
「「……」」
レアとガラドの二人が驚いているが、まあ、説明してやろう。
「クアナはアレンシアみたいに戦闘になると性格が変わってな。指から糸を出して操れるんだ」
「……怖い人れすね」
ゾンビだろ、お前。気にすんな。
「門番ゴブリンを一撃ですか。強いですね」
「まあ、このギルドに弱いヤツはいねえからな」
難職だらけだが。
「では、いきましょう」
アレンシアが言って、十二人でゴブリン帝国に入った。
「……おい、アレンシア」
「何ですか?」
俺は住民を見て固まった。
「こいつら、全員エリートゴブリンかよ」
「はい。ただのゴブリンはいません。いたら国が成り立ちませんよ」
まあ、そうか。
「それで25までしか上がらないって、割りに合わないだろ」
「そうですか? ……まあ、30前後のゴブリンも出てきますしね。30まで上がるようになります」
……権限持ってるんだな。
「いや、35で」
「これ以上は無理ですよ」
「……嫌な予感がするんだよ。ってか、35にしないんなら国盗りに参加しねえぞ」
「……それは脅しですか」
「おう。上げろ」
「……仕方ないですね。その代わりちゃんと参加してくださいね」
よっし。
「国に喧嘩売るなんて久々だからな。ちょっと中学ん時に戻った気分だな」
ワクワクするぜ。
「……こいつのキャラ崩れてるが、中学ん時は不良や犯罪者がいたらぶっ飛ばす。みたいだったから気にすんな」
リューシンがいらないフォローを入れる。
「さあ、ゴブリン帝国を滅ぼそうぜ!」
「……言ってることが完全に悪役よね」
こうして、ゴブリン帝国襲撃が始まった。
「おらおらおらぁ! もっと歯応えのあるヤツはいねえのかぁ!」
俺はエリート共をソウルを使わずに倒していく。
「……あいつはもう悪役でいいだろ」
リューシンは剣でエリートを倒していくが、俺は素手で殺していく。
「はしゃぎすぎよ」
シュリナがエリートゴブリンの喉や頭、心臓を高速の突きで貫いていく。
「……ジーク、テンション高い」
ティアナが二本の鎌を舞うように振るいながら、エリートを狩っていく。
「……進行が速いぞ」
ジンオウがマシンガンでエリートゴブリンを蜂の巣にしていく。
「悪魔だね」
ディシアが嬉しそうに笑いながら後ろに剣を召喚して串刺しにしていく。
「……少しは静かにしてよね」
シャリアが地面からトゲを出現させエリートを貫いていく。
「いい戦いっぷりね。好きよ、そういうの」
クアナが嬉しそうに笑ってエリートゴブリンを糸でバラバラに切り刻んで恍惚の笑みを浮かべる。
「個性的でいいれすね、皆さん」
レアが一発で五体のエリートゴブリンを粉々に吹き飛ばす。
「……不安」
ガラドが木の板で四体のエリートゴブリンを吹き飛ばす。
「……頼もしいのだが、怖いな」
クレイスが騎士剣でエリートゴブリンを切り捨てていく。
「……いい」
アレンシアが扇子でエリートゴブリンを切り裂く。
……アレンシア、嬉しそうな顔しながらエリート共を狩ってるぞ。大丈夫か、アレンシアの国。
「……ふぅ。結構狩ったな」
城下町にはゴブリンっ子一人いねえぜ。
「……来ました。ゴブリン帝国帝国軍」
アレンシアが言うと、王宮までの道の途中に軍勢がいた。
「軍か。キングゴブリンもいるな」
王が前線にいんじゃん。
「そうですね」
「軍は、超エリートゴブリン百体、キングゴブリン五十体、ジェネラルゴブリンが指揮をとる構成のハズです」
ジェネラル? 聞いたことないな。
「厄介ですね。本隊ではないのですが……」
さらに上があるのか。
「じゃあ、ここは俺がやろう」
「いきなりマスター? 皆で戦えばいいんじゃないの?」
「俺は多人数をボコボコにしたい」
「私情で突っ走らないで。却下よ」
くそっ。副マスターが厳しい。
「じゃあ、しゃーないな。……けど、奥のヤツとはサシでやらしてくれよ」
「……しょうがないわね。他は皆でやるわよ」
了解。
「超エリートゴブリンとか戦ったことないからな。皆、出し惜しみせずに戦えよ!」
スキルを隠してることは知ってる。
「サタンソウル“合成悪魔”」
サタンソウルは悪魔系の魂を使うスキルだ。
背に黒い羽が生え、全身の肌が変わる。黒い、鱗のような鎧のような肌になり、歯が全部牙に変わる。耳が細長く尖り、髪は逆立って頭には金色の角が生える。爪は尖り、先がハートのような形になっている黒い尻尾が生える。
……服、関係ねえな。
「……本物の悪魔か、お前は」
リューシンのツッコミが入るが気にしない。
「ったく。何言ってんだか。似合ってるよな」
俺はリューシン以外に聞く。
「「「見事に似合ってる」」」
ほら。見てみろ。
「いや、似合ってるけどさ」
じゃあいいだろ。
「お前ら、俺より先に手を出さないと、手柄ないぞ」
「へ?」
「一発で消し飛ばす」
「マジかよ? でも、そんな大技放つ前にこっち来るぞ」
「あん? 誰が大技放つって?」
「……へ?」
「でもま、五秒は必要だな。……クアナ」
「何? あたしに足止めしろっていうの?」
「ああ。やれ」
「……しょうがないわね。はい」
クアナは指を動かして前列を切断する。……超エリートは戸惑って、止まった。
「……サンキュ」
両手に黒い球体を作る。
「とりあえず、消し飛べ」
その球体を軍勢に向かって放つ。まあ、巨大な波動としてだが。
「「「……」」」
全員呆然としていた。
「……こっからが本番だな。アレンシア、あのちょっとデカイのは何だ?」
明らかに違うのが混じってる。
「オーガゴブリン!? 何で……」
「……前言撤回だ。オーガを各個撃破、あの奥のヤツを皆でやろう」
「らしくないな。どうしたんだ?」
あの奥のヤツはヤバい。俺一人でやると勝てない。
「別に。連携もくそもないこのギルドのチームワークを試そうと思ってな」
それは試したいが。




