悪魔とゴブリン帝国の壊滅
「……んで、ちゃんと反省したか?」
「「「……はい」」」
とりあえず九人に修理代とめり込みをプレゼントした後、再びクエスト集会所に集まった。
「ったく。折角人がいいクエストを持ってきてやったのに、人の元カノの話をしてんだもんな」
「……それはすまん」
メガネが一時割れてるリューシンが申し訳なさそうに言う。
「そのクエストの説明は、アレンシア・シャーマルにしてもらう」
仲良くなったクエストの受付嬢を紹介する。
「アレンシア・シャーマルです。クエストの受付嬢をしております。この度は私の勝手なお願いでご迷惑おかけしました」
アレンシアは深々と頭を下げる。
「ゴブリンの群れ討伐を一日で二十回するクエストは、アレンシアに頼まれてたことでな。三日連続を、五回分にしてもらったんだ」
「……増えてるし。で、何でそんなことを頼んだんだ?」
リューシンがアレンシアに聞く。
「……折角人が事情聞かないでやったってのに、お前は何でそうデリカシーがないんだよ」
「……いえ。ちゃんとお話しするつもりでしたので……」
ほら、逆に気を遣わせてんじゃねえかよ。
「……はぁ。んで? 何でそんなことを頼んだんだ?」
仕方なく聞く。
「ゴブリンの群れ討伐を一日で二十回するクエストを、三日連続か一日で三回以上すると出現するクエストがあるんです」
ほほう?
「ゴブリン帝国の壊滅、それがクエスト内容です。……元々は私達の国で、ゴブリンに奪われてしまったんです」
なるほど。そういう事情か。
「報酬はどうなんだ?」
「レベル25まで上がる経験値と、グランドクエストの解放、参加者全員に限定装備が貰えます」
……めっちゃ破格じゃん!
「……普通にその帝国と戦ったら、それだけの経験値が貰えるのか?」
「レベルにもよりますが、大体レベル5ぐらいは上がります」
「……いいな。受けようぜ。んで、どこなんだ?」
ニヤリと笑って、俺は引き受ける。
「広大な草原です。場所は私と連れで案内しますので」
「アレンシアも戦うのか?」
「はい。私の国ですので」
アレンシアの?
「王女なんです。……ゴブリンに奪われて、両親を亡くしたので、女王ですが」
王女様だったのか。
「まあ、いいけどな。明日でいいか? 今日はもう夕方だし」
「はい。引き受けて下さり、ありがとうございます」
アレンシアが深々と頭を下げて、話は終わった。
「で、ゴブリン帝国ってどれくらいの難易度なんだ?」
話が終わって、リューシンに聞いてみる。
「βテスト時にはなかったが、まあ、ゴブリンの群れを十回やるみたいな感じだろ」
そんなに楽なら、レベル5以上も上がらないだろ。
「まあ、要注意だ。今日はここで解散にするが、明日のために準備をしておいてくれ」
「待ち合わせ時間は?」
「十二時半までにここ集合だ」
ギルド集会所にな。
「了解。装備や、回復アイテムを揃えるんだな」
「回復アイテム?」
何だそりゃ?
「それくらいは知ってろ! HPやMPを回復するアイテムだ」
「何!? そんな便利なものがあるのか?」
知らんかった。……まあ、回復アイテムはあるよな、普通。
「……はぁ。RPGに回復アイテムがなくてどうすんだよ」
リューシンが呆れて言う。他もうんうん頷く。
「……まあ、各自準備をしておいてくれ」
結局、カッコつかないが、解散した。
▼△▼△▼△▼△
「よっ」
また、十二時半ピッタリにログインする。
「全員集合したわね」
シュリナは俺が来て言う。……何か、シュリナの方がマスターっぽいな。
「今日はありがとうございます」
アレンシアはいつものシンプルな格好じゃなく、何故か花柄の着物を着ていた。
「……その格好とその人は?」
何故国を取り戻すのに着物なんだ。あと、隣にいる甲冑を着た騎士みたいな美女は誰だ。
「とりあえず、歩きながら話しませんか? ……ここだと目立ちますし」
そんな格好で来た癖に人目が気になるのか。
「まあいいか。とりあえず行こうぜ」
しゃーない。
大した説明もないまま、広大な草原に向かった。
「この人は私の側近で、騎士団長を務めていたクレイスです。私を逃がすために私についてきてくれました」
忠実な人なんだな。
「よろしく頼む」
小さく頭を下げる。
「ああ。俺はこのギルドのリーダー、ジークだ。二人程人じゃないヤツが混じってるが、気にしないでくれ」
余計な一言を言う。
ゾンビとロボットな。
「……実力は確かなようだな」
……スルーされた。
「私がこの格好をしている理由は、二つあります。一つは、私の職業の装備だということ。もう一つは、私、性格が変わるんです」
……はい?
「私は幼い頃から英才教育を受けてきたんですが、色々なことにピッタリな私が出てくるんです」
「例えば?」
リューシンが興味津々で聞く。
「国民の前に出る時は高飛車な、人を蔑んで悦ぶように」
ドSだな。
「書類をまとめたり、王女の仕事をしている間は、眼鏡をかけて真面目に」
眼鏡と真面目か。
「戦や出陣の時は、冷徹に残酷に人を殺せるように」
無表情ってことか。まあ、ドSだよな。……こんなヤツが王女って、大丈夫なのか?
「夜は物凄い甘えん坊に」
何でだよ。
「夜ではちょっとえっちになり、いじめられるのが好きになります」
ドMか!
「キャラ濃いだろ」
「……その時その時に最適な自分を作ってしまうので。普段はこうですが」
ありがたや。……普段から変人だったら困る。
って、メンバーにドMと変態と真面目と無表情はいるじゃん!
困ったもんだよな。
「それぞれに適した性格になるためには、この正装がいいんですよ」
アリンシアは少し笑って言った。
Infinite Abilities Online を読んでくださってる方、更新にはもう少し時間がかかりそうです。




