悪魔と虐殺デート
「ちーっす」
あらかじめ決めておいた集合場所に行くと、もう皆集まっていた。まあ、ギルド集会所だが。
「遅いぞ。ギルドマスターが一番遅いって何だよ。シュリナは一番に来てたぞ」
そうか、さすが副マスター。頼りになるぅ。
「クエスト完了したぞ」
受付嬢のところにいって報告する。
「クエスト報告ですね。……はい、確かにクリアしていますね。報酬として、1000Gが配られます。……あなた方の腕を見込んでお願いがあるんですが」
「何だ?」
「個人的で申し訳ないんですが、こちらのクエストを三日連続で受けてくれませんか?」
ゴブリンの群れ一日で二十回討伐か、いいな。
「これならいいぞ。この程度なら、一日に五回は受けられる」
「そうですか? では、一気に五回分を受注させますので、今日中にクリアして私のところに来ていただけませんか?」
「わかった」
「事情、聞かないんですね」
「まあな。人には聞かれたくない事情だってあるしな。あんまり人の事情は探らないようにしてるんだ」
「ふふっ。そうですか。面白い方ですね。まあ、いずれお話しますので」
何故か、受付嬢と仲良くなった。
「じゃあな」
とりあえず、メンバーにこのことを伝えるか。
「皆、聞いてくれ」
真剣な顔をして話しかける。
「ゴブリンの群れを一日で二十回討伐するクエスト、五回分受けた」
「「「はあ?」」」
「一人で十回討伐する計算だな」
「……期限は?」
「今日中」
「……後先考えないで受けたわね」
シュリナが呆れ顔で言う。
「何言ってんだか。このメンバーなら大丈夫だろ」
「……受けたものは仕方ないわ。けど、一人十回は効率が悪いわ。二人一組で、二十回討伐するのはどう?」
いいな。グッドアイディア。
「ペアはどうする?」
どうやって決めようか。
「じゃんけんとか?」
リューシンが適当に提案する。無難な考えだが、一人だけ、反対する者がいた。
「駄目、絶対」
別に薬物乱用防止ポスターみたいに言わなくていいけどな。
「何でだ?」
「リューシンとだけはなりたくないから」
「なるほどな。わかるぜ、その気持ち」
LUK低いからじゃんけん負けるだろうしな、ティアナ。
「わかるな! そして俺の扱い酷っ!」
「でも、五人に別れて、それぞれの勝った順で組めばいいだろ」
「……それならいい」
けど、俺はクアナと組んだ方がいいんだよな。
「じゃあ、ここで分けるか」
俺、リューシン、シュリナ、ティアナ、ジンオウ。
ディシア、シャリア、クアナ、レア、ガラド。
「じゃんけん、ぽいっ」
おぉ、一発で俺が勝った。
それで、結果。
俺、クアナペア。じゃんけん一位。
ガラド、ジンオウペア。じゃんけん二位。
シュリナ、シャリアペア。じゃんけん三位。
ティアナ、レアペア。じゃんけん四位。
リューシン、ディシアペア。じゃんけん五位。
「また、似たようなヤツが組んだな」
面白い組み合わせだ。
「ジークが命名すると?」
「戦闘ドSペア。筋肉隆々ペア。しっかり者ペア。ホラーペア。俺の黒歴史知ってるペア」
「……自分がドSだって言うんだ」
「まあ、中学ん時は荒れてたからな。それを知ってる男子二人、と」
「くそっ。何でジークばっかり! 俺だってクアナちゃんと組みたいのに! 最低限女子が良かったのに!」
……止めとけ。ガチでキモいぞ。
「とりあえず、協力して今日中にゴブリンの群れを二十回討伐してこい。出来なかったメガネはクビな」
「俺だけか!」
「お前、こうでも言わねえとちゃんとやらないだろ」
やらないとお前の評価が下がる一方だぞ。
「わかったよ、ちゃんとやるから」
「そうか。なら、行くぞ、皆」
言って、皆で広大な草原まで行く。
▼△▼△▼△
「ジーク、さん」
「ジークでいいぞ。で、何だ?」
「あのじゃんけん、どうして私と組みたいって思ったんですか?」
何で知ってんだよ。
「あの、じゃんけんとかの確率だと、意志の強さとシンクロでペアが決まるんです。ペアを作る時、二人が互いになりたいって思えば、なる確率が高くなります。LUKの高さがないと確率は低いですけど」
なるほどな。
「だから、俺がクアナとなりたいって思ったのと、ガラドとジンオウは気が合いそうだから組めたんだろうし、ティアナはLUKの高いレアになれて、多分、ディシアはリューシンに俺の昔話でも聞きたかったんだろうな」
シュリナとシャリアは余りもんだ。
「私も、あの、ジークとなりたかったです」
だからなれたわけか。
「おっ? 早速発見だな」
キングゴブリンもいて、いいな。
「私は、どうしましょう?」
俺に聞かれてもな。
「変わったら参加してくれればいい」
「はい。……あっ、来ます!」
ギュッと目を瞑ってクアナが言う。
「……」
目を開くと、雰囲気が変わっていた。
「あら。今回はジークが一緒なのね。丁度いいわ」
……あっさり変わるな。
「何が丁度いいんだ?」
「実は、あたしも一応女の子だから、彼氏が欲しいのよ」
……そうなのか? 意外だな。
「で?」
「……鈍いわね。ドSのあたしに釣り合う男なんて早々いないでしょ? けど、あたしの近くには趣味の合いそうな男がいたのよ」
「……誰だろうな、それ」
俺は趣味が合わなさそうだ。
「……そんなに嫌ならいいわよ。でも、ちょっとデートするぐらいならいいでしょ?」
別に、嫌ってわけじゃないが。
「で、そのデートってのは?」
「名付けて、虐殺デート」
「……恐ろしいデートだ」
そんなデートが存在していいのか。
「あたしとジークが仲良くSにモンスターを狩りまくるデートよ。いいでしょ?」
いいのか、それ。
「彼氏ってのは無理でも、狩りに付き合うのはいいぞ」
「ホント? やっぱり、ジークってSよね」
……そんな嬉しそうな顔してたら断れるかっての。
「ったく。しゃーねえから、一回中学ん時の俺の喧嘩の仕方見せてやるから、最初は見てろ」
中学ん時に戻るのは嫌なんだけどな。
「全盛期のドSでお願いね」
……マジか。
「はいよ」
わかりやすく、スキル使わないで殺るか。
「……」
まず、ゴブリンの群れまで走って、手前のゴブリンの頭を掴む。
「……」
残酷な笑みを浮かべ、ゴブリンを地面に叩きつける。
さすがにゲーム内の方が強いので、叩きつけるとゴブリンの頭が砕けて血が噴き出す。
「……懐かしいなぁ」
この臭い、感触。手が返り血で汚れるが、気にしない。むしろ、それらが俺に昔を思い出させる。
説明不足ですが、ジークは頭を砕いたことはありません。返り血と地面に叩きつける感触が懐かしい、ということです。




