悪魔とドS
さて、キングゴブリンを倒しに行くか。
「おっ? いたいた」
エリートより一際大きいゴブリンを見つけた。
「俺が一番乗りだな」
キングゴブリンの首は俺がもらった。
「そうはいかないぜ」
リューシンや他の皆がいた。
「ちっ。一番乗りじゃないのかよ」
残念だ。
「じゃあ、誰が一番最初にキングを倒せるか、勝負だな」
笑って言う。
ーーが。
ゴキッ。
キングゴブリンの右腕が折れた。
「あぁ~! 切れ味加減するのって難しいけど、骨を折る感覚っていいわね」
聞き覚えがあるような、聞き覚えがないような声がした。
「……誰?」
ティアナが呆然と呟く。……まあ、そりゃそうだ。
おそらくはクアナであろう人物が、切れ目で頬を赤くし、うっとりした表情で頬に手を当てていた。
……周りに手足のないゴブリンを数体連れて。しかも、宙に浮いている。怖いな。
「……怖いぞ、ジーク。戦いん時にああなるんだったら遠慮したい」
うわっ。こいつ、性格変わると見たら掌返しやがった。
「……ちょっと様子見ようぜ。実力が知りたい」
ボソボソと話す。ああなるとは誰も予想してなかっただろうしな。
「あなた達は手を出しちゃ駄目よ? キングちゃんはあたしが可愛がってあげるから」
嬉しそうに言う。……ドSだな。
グシャッ。
ぐ、グシャッって何だ?
「んん~! この肉と骨が潰れる感覚、最高だわ!」
見ると、キングゴブリンの右手が潰れていた。
「潰すのって難しいのよね。糸を絡ませて、切れないように加減して力入れないと駄目なんだから」
器用さがバカ高いから出来るのか。
「ギィ……」
キングは右が使えなくさせられて怒っているらしい。
「何? あたし、刃向かうペットはいらないわよ? 刃向かうのを止めてあたしに平伏すのは見たいわね」
嬉しそうだ。
「……力加減次第で潰すことも出来るんだから、いい発見ね」
グシャッ。
左手も潰した。
「ギガアァ!」
「はぁ……。そうよ。そういう悲鳴が聞きたかったの」
さらにうっとりした表情になる。
「切り落としちゃうとHPが減って死んじゃうから、折るか潰すがいいわね」
ドSの笑みを浮かべる。
「ギッ」
恐怖を感じたのか、キングは逃げようともがくが、動けない。……糸で動けなくしてるのか。
「威勢のいいこと。けど、どこまでその威勢が続くのかしらね?」
それ、悪役が言うセリフだろ。
スパッ、ゴキッ、グシャッ、ブチッ。
切る、折る、潰す、千切る。
具体的に描写すると、キングゴブリンの左腕を指の間に沿って、肩まで腕を五本に分け、それの骨を粉々に砕き、それをさらにグシャグシャに潰し、引っ張って肩から千切った。
「あぁん! もう最高! いい感じだわ……」
クアナは恍惚とした表情で言う。……グロい。
「ギギャアアアアアアアァァァァァ!!」
キングゴブリンの哀れな絶叫が響く。
「はぁ……。いいわよ、もっと苦しそうな声を上げなさい」
キングゴブリンの全身に切り傷をつける。……俺もちょっと引き始めた。
「……いい玩具が見つかったから、もういらないわね」
クアナは多分糸で吊り下げた、ギリギリ生きているゴブリン達に言う。
「バイバイ」
ゴブリン達は細切れになって消えた。
……哀れ、ゴブリン達。
「脚もいらないわよね」
キングゴブリンの脚を見て言う。
ゴシャッ。
脚を腿の辺からもぎ取った。
「ギギャアアアアアアアァァァァァ!!」
……可哀想に。無駄にHP高いせいでまだ三分の一も残ってる。
ご愁傷さま。
「もう抵抗出来ないわね。さぁて、どうやって遊んであげようかしら?」
怖いな、クアナ。どうしようか。
「あぁ~! これからやろうとしてることを想像すると、もう絶頂に達しちゃいそう。ゾクゾクするわ」
キングを地面に転がして言う。
俺らもゾクゾクしてるけどな。……寒気という別の意味で。
「楽しみぃ」
クアナは両手をキングの顔に近付ける。
「……?」
俺らにはさっぱりわからん。
「ガゴッ!?」
キングが目を見開いて呻く。苦しそうにピクピク動いている。
「まずはどこを弄ろうかしら。喉? 胃? それとも肺?」
……口からキングの体内を糸で探ってるらしい。
「……やっぱり胃かしらね。喉を潰しちゃうと悲鳴が聞けないし」
胃でも潰したらヤバいけどな。
「ゴアアアアアアアアァァァァァァ!!!」
胃が潰されたらしい。……もう皆は目を逸らすか、嫌な顔をしている。
「ああぁん! 内臓潰すなんて初めて……。いいわぁ。もっと、もっと欲しい」
息荒くして、恍惚の表情で言う。……楽しそうだな。
「もう我慢出来ない。内臓一気に潰しちゃお」
極上の笑みを浮かべる。
グシュッゴシュッ。
……内臓が潰される音が響く。
「ーー!」
声にならない悲鳴を上げる。
「あぁ。このままじゃ殺す前にあたしが逝っちゃいそう」
……エロチックになってきたな、おい。
「……っていうか、もう悲鳴上げないの? つまんないわね。じゃあいらないわ」
悲鳴を上げないと見ると、あっさり切り捨てた。
「……」
無表情にバラバラに切り刻むと、キングはやっと死ねた。
……良かったな、キング。ちゃんと死ねて。




