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7 ハーフの扱い

 マテルットに着く十日間で、粉石鹸は完成していた。八日に及ぶ実験では肌荒れが起こることなく、セリエに使ってもらっても大丈夫だった。

 能力上昇系の薬も一つだけ能力が上がる分が完成し、裕次郎とセリエでわける。

 町に着くまでに二人の関係は変わらなかった。裕次郎が一方的に好意を向け、セリエは受け止めない。時間はたっぷりあるのだからと、裕次郎は焦ることなくセリエにどこまでもついていくつもりだ。

 ちなみに裕次郎は水浴びなどの覗きを実行し、警戒していたセリエに補強薬抜きの魔法をぶつけられていた。まともに魔法を受けて、青あざ一つ作らない裕次郎に、セリエは呆れた視線を向けていた。


 十日目の昼過ぎ、二人の視線の先にマテルットの町が見えていた。

 ここは人口千五百人とセーゲントよりも大きい。高さ四メートルの外壁に囲まれた町で、入り口は北と南に一つずつだ。

 木綿や麻といった布の材料を中心に作っている町で、織物がそれなりに発達している。

 

「入り口からずれてるけど、入らないの?」

「ハーフの私が入れるわけないでしょう」

「じゃあ配達ってどうするのさ」

「受け取り人が外にいるから、そいつに渡すのよ」


 二人は入り口から外れて、外壁に寄り添うにして立つボロ小屋やテントの前を進む。

 ここには税金を払えない者たちや町外の方が暮らしやすい者たちが集まっている。どの人間も平原の民で、セリエがハーフだと気づくと険しい目で見ていた。

 それに慣れているセリエは気にせず、目的地へと進む。相手にしてもなんの意味もないとわかっていた。

 視線を不快に思っているのは裕次郎だ。どの人たちもセリエより下に見えるのに、蔑みの視線をセリエに向けている。そんな汚れた目で見るんじゃないと怒鳴る前に、目的地に着いたため一度は気分が落ち着く。

 ほかのボロ小屋と同じに見える小屋の前に立ち、セリエは一定リズムで扉をノックする。

 十秒ほどで、扉が開き周囲の人間よりは小奇麗な男が出てきた。男の目も蔑みのものだった。ただし隣に立つ裕次郎を見て驚いた顔も見せたが。


「なんだ?」

「届け物よ」


 ぶっきらぼうに荷物の入った袋を差し出す。その場で中身を確かめた男は扉を開けたまま、中に戻るとお金を持って出てきた。


「報酬の七千ミレだ」

「聞いていた報酬と違うんだけど? 予定では二万ミレのはず」

「今それしかなくてな。用事はすんだろ、帰れ」


 そう言うと男はすぐに扉を閉めた。

 少しだけ扉を睨むとセリエは小さく溜息を吐き、扉から離れていく。


「ちょっとセリエ、それでいいの!? あれ絶対嘘だって!」

「いつものことだもの、仕方ないわ」

「いつもって、いつも報酬を誤魔化されるってこと!?」

「それがどっちつかずのハーフの扱いよ。いい加減慣れたわ」


 全員が全員そういった扱いではないのだが、平原の民や森の民や山の民がそれぞれ中心となっている場所で、まともな扱いをしてくれる人は少なく出会うのは難しいのだ。

 それぞれの種族が混ざって暮らす混成都市という場所が世界にいくつかあり、そこではまだましだ。ましというだけで差別から解放されるわけではないが。

 大抵のハーフは差別しない人に出会う前に捻くれてしまい、好意を素直に受け取れなくなる。

 裕次郎は知識ではこういった扱いを知っていたが、実際に目の前で見ると少なからず衝撃を受ける。

 裕次郎が黙りこみ、セリエは喋らないので、静かなまま二人は町から離れようと歩く。その二人に声をかけてくる者がいた。


「そこの二人止まれ」


 背後から聞こえた声に二人は振り返ると、町の住民となんら変わらない服装の男がいた。年の頃は四十手前で、やや鋭い目つきで二人を見ている。

 

「なにか?」


 返事をしたセリエを見て、顔を顰める。

 それを見て、裕次郎の不快ポイントはまた一つ積み重ねられた。


「お前たちが荷物を届けた場所について話を聞かせてもらおう」

「依頼で届けただけでなにも知りませんが」

「黙って、俺の問いに答えればいいんだっ」

「ならばさっさと言ってくれませんかね? こっちも暇じゃないんで」


 とげとげしい裕次郎の言葉に男はいらついた表情を見せたが、小さく深呼吸すると続ける。


「あそこにはなにを届けた?」

「知らないわ。中身なんて見てないもの」

「あそこがどういった場所かは?」

「まともな場所ではないでしょうね」

「あそこにいた男とお前たちの関係は?」

「配達人と受け取り人よ」


 求める情報がでないことに男は期待はずれかと小さく舌打ちをしたが、すぐになにか思いついた顔になる。

 それを見たセリエは厄介事だとしか思えなかった。


「協力してもらおう。でなければお前たちの手配書を作成し、国内に配る」

「は? 馬鹿言うなよ! さっきから聞いてりゃ上からもの言いやがって何様だ!」


 どうしてだとセリエが問う前に裕次郎が口を開いた。


「子爵家直属警備隊だ」

「偉そうにしてたから大層なものだと思えば、そんなものか。行こうセリエ」


 なんでもないように言いきった裕次郎を男は驚いた表情で見る。

 知識では貴族は偉いとある。けれど日本には貴族がいないので、そのすごさが裕次郎にはいまいち理解できず、貴族配下といっても脅しにはなりにくいのだ。実際に目の前に子爵本人がいれば話は別だろうが、その配下に威張られてもといった感じだ。

 それとこの国の兵ならば、この国から出たら関係ないとも考えていた。


「待ちなさい。なんでそんな態度なのかわからないけど、受けるわよ」

「なんで?」

「なんでって相手は貴族の部下よ。面倒事を大きくしないにこしたことはないでしょ」

「でも」

「嫌なら一人で行きなさい。ここでお別れよ」

「……わかった。受ければいいんだろ」


 不満だという表情で、その場に留まる。それにセリエは表情に出さないが意外に思っていた。男が高圧的に接してきたのは自身がハーフだからだ。これが裕次郎のみならばもっと穏やかに接してきたはずだ。

 ここでセリエを斬り捨てて裕次郎がいなくなっても、男は同種族のよしみや証拠不十分で見逃すだろう。裕次郎一人ならば厄介事に関わらずにすむのだ。なのにわざわざ自分と離れることを拒否して、厄介事に関わろうとする。それに驚く。男もセリエと似たような思いを抱いていた。


「なにをすればいいんだ?」

「……ああ、お前たちが荷物を届けた場所は、この町の荒くれ者たちが潜んでいると見ている場所だ。俺たちはそれを潰すために動いていた。だが俺たちは顔を知られているから、相手も警戒して隙を見せない。そこでお前たちを使うことを思いついた。話を聞いていたが、報酬を減らされたらしいな? それを不満に思って報復目的に奴らの情報を探るといった感じの行動を起こせ。お前たちの動きを牽制するか排除するかはわからないが、なんらかの行動は起こすだろう。ようは囮だな。それを利用して、俺たちが奴らの本拠地を突き止めて、根絶する」


 どんなところにも暗い部分はあるものだ。男が潰そうとしているのはそういうところだろう。大きな場所ならば、そういった暗部は荒くれ者をまとめ治安維持の役割を果たすこともある。しかしこの町程度の規模ならばそういった存在は必要なく、男たち警備隊で治安維持は間に合っている。それを男も理解していて、潰そうとしているのだ。


「探れって、あんたらの反応を見るにハーフが町に入ってまともな情報収集できるとは思えないけど?」

「それは変装するなりでどうにかしろ」

「できるの?」


 セリエを見ると頷いた。


「長期滞在は無理だけど、短い間ならなんとかなるわ」


 どうしても町に入らなければならない時、フードや帽子をかぶって入っている。セリエの身体特徴で一番目立つのは耳だ。そこを隠せば、平原の民の特徴も持っているだけあって、違和感を与える程度に誤魔化すことは可能だ。

 正体がばれると周囲の人々から追い回されることになるが。


「じゃあそっちは勝手に動け、俺たちは見張っている」


 去ろうとした男を裕次郎が呼び止める。


「情報収集とかどうやればいいかわからないんだけど? いい加減にやったら、見当はずれなことしかできずに、怪しまれることすらないんじゃないか? 基本というかある程度怪しまれるような調査方法を教えてくれ」


 態度はなっていないが一理あると、男は口を開く。


「簡単なのは酒場で男の特徴を伝え、聞きまわることだ。ほかにさっきのボロ小屋を目立つ形で見張る。情報屋を見つけ出し、口止め料を払わずに情報代のみ払って話を聞く。そうすれば情報屋から男たちに探しているという情報が流れる」

「その情報屋はどこに?」


 言っていいものかと少し迷うが、囮として十分に働いてもらわねばならないので、居場所を教えて去っていく。

 

「セリエ」

「なに?」

「次からもう少しまともな依頼を選ぼうよ」

「選べたら苦労しないわ」


 今回の荷物運びは混成都市で受けたものだが、扱いはましといってもまともな依頼はなんやかんや理由をつけられて受けられないのだ。結果、人が避けるような依頼を受けてお金を稼がなければならなくなる。


「ふーん。それはやっぱりハーフだからだよね?」

「ええ」

「んで正体を隠せば町の出入りはできる。ってことは正体を隠せばまともな依頼も受けられる?」

「かもしれないけど、私の変装程度なら見破られる」

「知ってる薬に、体の一部を変化させられるものがあるんだけど、それで耳の形を変えたらわりといける?」


 悪戯用の魔法薬にそういうものがある。


「……それなら変装しているように見えないから大丈夫かもしれない」

「じゃあ作る?」

「……」


 迷う。正体を隠すのは逃げるような気がして嫌だ。変装も同じく。だから先ほども耳を隠さずに町に近づいたのだ。しかし生活が苦しいのは事実で、それを使うことで少しでも楽になるならという思いが湧く。


「……一応作っておいて」


 少し悩んで保留という形で言葉にする。それに裕次郎は頷いた。

 町に入るためセリエは荷物から大きめの白いキャスケット帽を取り出し、耳が隠れるよう髪を帽子の中に入れて被る。


「流したままもいいけど、そういった感じもいいね!」


 グッジョブと親指を立てる裕次郎に、セリエは小さく溜息を吐くと町へと歩き出す。

 入り口に立つ門番がセリエを見て少しだけ首を傾げたが、ほかに出入りする人にも注意を払う必要があり、すぐに目をそらした。隣に裕次郎という平原の民がいたことも気にしなかった要因の一つだ。平原の民が嫌悪感を見せずに、ハーフと一緒にいるのはありえないことなのだ。

 ばれなかったことにほっと息を吐いてセリエは堂々と進む。


「とりあえず、宿を取る?」

「そうしましょうか」


 どこがいいかなと周りを見て、目に入った宿に進もうとする裕次郎をセリエは止めようとしてやめた。安めの宿に泊まりたかったが、減らされたとはいえ収入もあったので、普通の宿の止まるのも良いかと思えた。

 宿の主もセリエに違和感を覚えたようだが、門番と同じ理由で流す。


「部屋は個室と二人部屋と大部屋のどれに?」

「どうする?」

「二人部屋で」


 裕次郎が聞くとすぐにセリエが返答する。


「わかりました」

「個室っていうかと思ったのに。これは告白ととっていい!?」

「違う」


 一言で切って捨て、鍵を受け取ると先に歩き出す。

 それを追う裕次郎の後ろ姿を、主は仲がいいなと思いつつ見送っていた。

 部屋に入り、荷物を床に置く。


「二人部屋にしたわけは?」


 帽子を脱いでいるセリエに聞く。押し込めていた髪を頭を振って髪を解している。

 フワリと舞った髪を捕まえようとして思わず手を伸ばした裕次郎を、セリエは不思議そうな顔で見ている。


「深い意味はない。囮になるからにはここに押し入られることも考えられる。だからそんなことになった場合、すぐに一緒に移動できるようにしたまで」

「つまり一緒の部屋で寝たかったと」

「ち・が・う!」


 冗談冗談と笑いつつ手を振る裕次郎を睨む。


「んで、すぐに動く?」

「まったく! 動く。ついでに必要な物も買っていく」

「俺は特にないけど、セリエはなにかある?」


 食材はなくなりかけているが、それは町を出るときに買えばいい。薬の材料も今のところはそこらで取れるもので十分だ。そう考えて変化薬の材料に思い当たる。見かけたら買うのもいいなと決めた。ついでにここで売ろうと思って作っておいた治癒促進薬も持っていく。


「調味料がなくなりかけてる。あとほかにあるけど、それは言う気はない」


 生理用の薬とか女特有の薬だ。せっかく町に入ったのだから、買っておきたかった。

 裕次郎に言えば気合を入れて上質な薬を作るのだろうが、できるだけ頼りたくないという思いと、恥ずかしさから言わない。


「出かけようか」

「帽子脱ぐんじゃなかった」


 窮屈だったので、外したのだ。また帽子の中に髪を詰め込み。部屋を出る。


「あ、そういや」


 宿を出てすぐに裕次郎はなにかを思い出し、財布からお金の半分を出して渡す。


「共有って言ったし、半分ずつってことで」

「……本気だったの?」

「本気も本気。それに調味料は俺も使ってるんだし」


 差し出されたお金をおずおずと手を伸ばし受け取る。

 セリエの手持ちでは今の宿に十日も泊まればすっからかんだったが、これで大分余裕ができた。

 これが同情からだったら手を払いのけたが、推測するかぎりでは善意と好意からだ。心をマイナス方向に刺激せず、受け取ることができた。


「始めは買い物から済ませる? 聞き込みしてたら買う暇なくなるかもしれないし」

「その方がいいわね」


 食材を扱っている通りに進み、必要なものを買っていく。次に薬屋に入り、セリエのあっち行っててという言葉に頷き、カウンターに向かう。


「すみません。これを買い取ってください」


 白色の治癒促進薬をカウンターに置く。

 セドルフと同じように効果はあるのか使用期限はいつまでかと聞かれ、使ってもらったこと買い取ってもらったことを話す。


「一つ四千どうだ?」

「以前は四千五百で買い取ってもらったんですけど」

「その時は効果をきちんと確かめたんだろう? 今回はそういったことなしだから、もっと安めになる」

「んー……まあいいや。それでお願いします」

「あいよ。十個で四万ミレだ」


 金貨四枚を貰い、変化薬に必要な材料があるか聞く。必要な材料は四つで、うち二つはそこらに生えている。もう一つは保存してあるものが使える。


「コーマへドの根? あるぞ。保存期限最長は半年の物が十ある。それは一つ三百ミレだな」

「半年のを全部と三ヶ月のものを五本で。あ、ついでにベキルーの太根あります?」


 ベキルーの太根は疲労回復の薬の材料となる。セリエが疲れた時に渡そうと思い買うことにした。疲労回復ならば山の民秘蔵の薬が最適だが、材料が足りないため今回は別のものを作ることにした。


「たしかあったはずだ……ん、あった。五本あるが」

「五本ください」

「全部で五千五百だな」


 角銀貨を渡し、期限別で紐で縛ってもらったコーマへドの根とベキルーの太根とおつりをもらう。

 会計をすませると、セリエも商品を持ってきてお金を払う。

 店を出て、二人は情報収集に動き出す。


「最初は酒場とかで聞き込みでいいかな」

「本腰入れる必要はないし、それでいいと思う」

「なら酒場で聞き込み、情報屋で聞いて、見張りって流れでいいね」


 ぶらぶらと歩き、目に入った酒場に入る。夕方にもなっていないので、人はいないが店自体は開いているらしい。

 入って来た二人を見た主人は食堂と勘違いしたのかと考えた。


「ここは酒とつまみくらいしか出さないぞ? 食事ならほかに行ってくれ」

「いや人探しをしていて、話を聞きたいんだ」


 ついでに薬酒用に酒を買おうと、度数の低いものを小さな樽で頼む。

 主人は情報料と判断したのか、酒を用意しながら先を促す。


「男で背丈は百七十後半、体つきはいい方。髪は深緑で短髪、茶色の目に目つきは鋭く、右手の甲に引っかき傷。年齢は三十過ぎ」

「……悪いが覚えはないな」


 少し考え込み、首を横に振る。準備した酒をカウンターに置き、代金を告げる。

 それにお金を払い、二人は外に出る。


「次の酒場に行きますかー」


 セリエはそうねと気のない返事をして、ちらりと周囲を見渡す。追跡しているということなので、感じ取った視線の方向を見てみた。


「なにを見たんだ?」

「見張りを探してみたのよ」


 いる? という問いに頷きを返す。


「俺はわからないなぁ」


 裕次郎は、能力は高くとも経験不足で気配察知が甘い。対してセリエはずっと一人で旅をしていたので、気配察知は高めだ。そうでないと野宿の時に魔物に不意打ちを受けてしまう。

 この後二人は四軒の酒場を移動し、情報を聞いて行く。

 これくらい聞けば十分だろうと、情報屋がいるという喫茶店に向かう。特別なところのないどこにでもありそうな喫茶店だ。

 テーブル席に座り、注文を聞きにきた店員に警備兵から聞いた合言葉を言う。


「特製コーヒー二つとチョコチップクッキー。コーヒーはマグカップに入れてぬるめで。銀のスプーンをそえて」


 店員は頷き、ポケットからカード取り出し置いた。裕次郎はそれを手に取り、書かれている文字を読んでいく。

 内容はこのカードを持って、喫茶店の裏手に周り、扉の隙間にカードを入れろというものだった。

 セリエにもカードを渡し、運ばれてきたコーヒーとクッキーを飲み食いして喫茶店を出る。

 裏手に回り、指示通りカードを隙間に入れると鍵が開く音がした。扉を開けると三畳ほどの狭い個室があり、真ん中にテーブルと椅子二つがある。

 椅子の一つは全身を布で覆った人間が座っていた。出ているのは目と手と足くらいだ。


「座るといい」


 布越しの声は女のものだとわかるが、年齢までははっきりしない。

 どっちが座ると二人は視線を交わし、座りたくなかったセリエは一歩下がる。


「なにを聞きたい?」


 裕次郎が椅子に座ると早速聞いてくる。


「人探しをしている」


 セリエが酒場の主人に言っていた情報にプラスして、どこで見たのかも言っていく。


「まともな連中ではないとわかっているだろう? それでも情報を求めるのか?」

「ちょっと仕事をしたんですけどね? それの報酬をケチられて、仕返しでもしてないとやってられないのですよ」

「あなたは長生きするタイプではないな」

「俺みたいなタイプはわりと長生きしますよ?」


 自信過剰といった演技もしてみる。

 扱いやすい馬鹿といった情報を流して、相手が油断してくれれば儲けものだった。


「前金として金貨五枚だ」

「まからない?」


 即座にそう返した裕次郎に、女は小さく溜息を吐く。なんとなく裕次郎とセリエは、馬鹿だなという心の声が聞こえたような気がした。


「金貨三枚。これ以上はまからない」

「言ってみるもんだな」


 口止め料が金貨二枚だったのかなと思いつつ、金貨をテーブルに置く。

 

「情報は今もらえるのか?」

「調査に時間がかかる。早くても三日後だ。それ以降にもう一度ここに来い」


 そう言ってカードをテーブルに置く。

 ポケットにしまった裕次郎はセリエと一緒に小部屋を出る。

 二人が出て行った扉とは別の扉から男が出てきて、女と何事か話すと何食わぬ顔で表から出て行った。向かった先は荒くれ者たちが集まる表通りから外れた酒場だ。


「さてこれで後は小屋の見張りだけっと。明日からでいいと思う?」

「いいんじゃない?」


 今日はこれだけ動けば十分だろうと頷く。

 二人は宿に戻り、セリエは武具の手入れや荷物整理、裕次郎は材料の加工をして過ごす。

 夕食は宿つきの食堂で、風呂には入らず、部屋で体を拭いてすませた。

 それまで特別なことはなく、体を拭くのを手伝おうかと言い、断られるといういつも通りの光景があった。

 夜になり、ベッドに入ろうとした裕次郎をセリエが止める。裕次郎が一緒のベッドに入ろうとしたというわけではなく、今夜からの警戒について話すためだった。


「警戒?」

「あれだけ動いて、安全でいられるわけないでしょう?」

「それはわかるけど、早くない? 明日からでもいいんじゃ?」

「念のためよ」


 セリエが言うことに異論を持つはずもなく、裕次郎は頷く。先に裕次郎が起きていることになり、セリエはベッドに入る。

 裕次郎はベッドに座り、能力上昇薬に複数の効果を持たせる方法を考えながら暇を潰してく。

 その夜は何事もなく、時間が過ぎていった。

 翌日は一度行った酒場に行って、もう一度話しを聞いた後、ボロ小屋を少し離れた位置から見張る。完全に隠れず、相手から体の一部が見えるようにして、その場に立ち尽くす。


「早く行動起こしてくれないと暇でしょうがない」


 小声で愚痴る裕次郎に、セリエも頷く。

 セリエはこういった待つという仕事をしたことがあるが、その時とは緊張感が違う。失敗できないと気合を入れていたため、暇だとかは思えなかった。しかし今回はばれてもよく、収入があるわけでもなく、どうにも気合が入らない。

 昼頃まで見張った二人は、お腹も空いたことだしと見張りを止めてその場を離れる。昼食を食べえた二人は見張っていた場所に戻り、見張りを再開した。


 当然、見張られている側は気づいている。昨日の時点で情報が入ってきており、二人に見張りをつけていたのだ。セリエは視線の種類までは察することができないため、見張りが増えたことは気づけたが、見張る警備兵が増えただけなのか、警戒されているのかまではわからなかった。

 二人の動きを見張っている間に、別の者が二人の背後関係を探る。別の町の荒くれ者たちが自分たちの島を荒らすために送ってきた尖兵かもしれないと疑ったためだ。

 結果、初日に誰かと会っていたことはわかるが、その後はおかしな行動を起こしておらず、情報屋から流れてきた情報のまま、馬鹿なだけじゃないかと判断した。

 明日、囲んでぼこって終わりにしようと決め、それ以上の情報収集は行わなかった。


 翌日、裕次郎たちは再び見張りをしようと町を出て、壁沿いに歩いていると男たちに囲まれる。

 それを見た周囲の人間は厄介事だと判断しテントやボロ小屋に急いで入っていく。

 セリエはポケットに入れていた速度上昇の薬を飲み、裕次郎は見覚えのある男を指差し口を開く。

 

「そっちから出てきたか! もらえなかった報酬を払うか殴られるか決めろ!」

「やれ」


 裕次郎の言葉を無視して、男は囲んでいる者たちに指示を出した。

 八人いる男たちが一斉に動き出す。

 相手は無手なので、裕次郎も素手で対抗し、セリエは鞘をつけたままサーベルを振るう。

 

「すかっとするな!」


 セリエに向けられていた侮蔑の視線で溜まったストレスをここで発散するとばかりに、男たちを殴っていく。喧嘩したことなどなかったが、殴り合いが怖いといった感情はなかった。ストレス発散で気にならないということもあるが、格下だと無意識に悟っているからだ。

 裕次郎は問答無用で圧倒しているが、セリエはどうかというと、そちらも圧倒していた。

 セリエは魔物と戦い慣れていて、チンピラにすごまれても怯えることはない。上昇した速さでもって、男たちの間をすり抜け、サーベルを腕やすねや喉といった防御の薄い箇所に当てていく。

 セリエもストレスが溜まっているのだろう、攻撃に躊躇いはなく、男たちは骨にひびが入り、地面に転がっていく。

 四人を地面に転がすと、報酬をけちった男へも素早く近寄って、腹へとサーベルを叩き込んだ。


「ひ、退くぞ!」


 十分も立たずに一方的な展開で、腹を押さえた男は怪我人に手を貸して、去っていく。

 その後を見知らぬ男たちが追っていく。


「これで終わりでいいんだよね?」


 良い汗かいたと気分良さそうな声で聞く。


「言われたことはやったしいいと思う」

「んじゃ、さっさと町から離れようか」


 さらなる厄介事が起きないようにとセリエも頷き、二人はその日のうちに町を出た。

 警備兵たちは目的を遂げ、荒くれ者たちが集まる場所を突き止め、ほぼ全員を捕らえることができた。

 逃げ出した数人の中には、セリエに腹をぶっ叩かれた男もいて、こうなった原因のセリエたちに報復を目論んだ。しかしその時には二人は町を出ていて足取りは掴めず、町から逃げ出すことを優先することになる。

感想誤字指摘ありがとうございます


》主人公

恋する主人公というか積極的に異性に興味を持つ主人公を書いたことありませんでした

しっとりとした恋愛は書けそうにないので、勢いで突っ走る主人公に

組む利点や命の恩人でないと、あっさり振られてもおかしくないですよねこの主人公


》薬を作りたい→薬を作る→効果を確かめたい→ちょうど良く薬を必要とする人がいる

ここは確かに単調でしたね。書いてて思ったけど、そのまま出しました


》一目惚れ後のサワヤのテンションがロリ夢のコースケのそれに似てる

書いてる人が同じですから、似た感じになってしまいます。以前書いた別の話にも似たテンションのキャラがでますからね


》気が向かれましたら、ホームページの方~

妹可愛さの方は更新しました。あと何日かすればまた更新できるかと


》まさかの・・・一目惚れで、定住プラグ~

定住先は決めてますが、そこがでるのはずっと先


》あくまで相手の気持を尊重しつつ、自らの好意は隠さない~

難しいですね、若いから突っ走ってしまう

特撮ソングでも、愛って躊躇わないことだって言ってますし


》セリエちゃんかわいぃよぉお

ありがとうございます。いつかデレるといいなと思う


》能力上昇などの効果があるリップ

セリエがリップとか使ってたら思いつきそうですね。能力上昇でないにしろ、なんらかの効果を持つリップ。使える場面考えてみようかな


》変態紳士という言葉

作中には出さないと思います


》主人公の台詞だけ見たら立派にストーカーだよ

ですよね

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、流石に覗きはドン引きだよ 恋人同士になったのなら怒るぐらいで済むけど 他人なら無いわw
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