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閑話 勇者と人々 前

 魔王の行方を知るために、ロンタたちはソルヴィーナに戻ってきた。

 五月の始めをすぎており、ソルヴィーナを出た時は寒さが残っていたが、すっかり春も盛りを過ぎて暖かな空気が街を包んでいる。

 宿で荷物を解き、身支度を整え占い神殿に向かう。神殿の門番に通行許可を示すペンダントを見せて、案内役がくるまで待つことになる。

 すぐにやってきた案内役に客室へと通され、たいして待たずに神殿のトップ神官長が挨拶にきた。国から派遣された異能のない人間で、神殿の経営を行っている。少し前からバグズノイドとの交流も仕事に加わった。


「勇者様におかれましては、ご機嫌麗しく」

「お久しぶりです。カートルーナさんたちにまた占ってもらいたいのですが、大丈夫ですか?」

「もちろんです。今ほかの方の占いをしているので、少々待ってもらうことになりますが」

「急に来たのだから、待つのは当然ですよ」

「そう言ってもらえると助かります」


 主にロンタとトップが話していき、オロスは聞き手に回って、カルマンドとレラは旅の疲れからか互いにもたれかかり眠りだしていた。

 話はロンタたちが無管理地帯にいる間にあったことで、一つを除き特にこれといった大事件はなかった。


「森の民と山の民から抗議ですか」

「ええ、なんでも聖域に侵入した者がいると。その犯人は既にわかっているのですが、捕まえ差し出すことはしないでしょう」

「どうしてです?」

「この国の人間ではないということ。無管理地帯で起きたことには関わる気がないということ。抗議が軽いものだったということ。これらの理由で目撃情報や行方を知らせるくらいですんだのですよ。その侵入者も聖域を荒らしたわけではなく、そこにある祭壇を使っただけなので大きな抗議にはしにくかったのでしょうね。防衛を突破されたのは森の民と山の民の不手際ですし」


 森の民は聖域に入ったことに怒っていたが、山の民は強行突破する気概に感心する様子を見せていた。

 だが森や祭壇を壊していたら、軽い抗議ではすまなかった。山の民も怒っていただろうし、最悪二種族の軍が動いて侵入者引渡しを要求してきた可能性もある。

 そうなった場合、侵入の手助けをした占い神殿もただではすまかっただろう。

 そこまで無茶しないとわかっていたから、カートルーナも手助けしたのだが。


「そんなことをしたのは誰なんです?」

「勇者様に渡した薬を作った者ですよ。サワベユージローという名ですね、覚えていますか?」

「カートルーナさんから聞いた覚えが。あの薬師がそんなことを」

「抗議の件を聞いた後、手助けをしたとカートルーナから聞いて少々肝を冷やしたものです」


 でしょうねとロンタとオロスは頷き、雑談に移っていく。

 昼食もご馳走になり、待ち始めて二時間ほどが経ち、ようやくカートルーナたちが客室に入ってくる。


「お待たせしました」


 カートルーナたちは申し訳なさそうに頭を下げる。

 無理を言っているのはこちらなのだからと、ロンタは頭を上げてもらう。


「お久しぶりです。元気そうで安心しました」


 ロンタとまた会えたこと、無事な様子を見れたことにカートルーナは花咲くような笑みを向ける。


「元気なのがとりえだから」

「困っている人を助ける優しさや強さもとりえだと思いますよ」

「そうだよ! 私たちもその優しさに助けられたんだから」


 カートルーナの言葉にレラが同意する。これまで静かだったが、カートルーナ相手だと負けていられないと口を挟む。

 急な発言にロンタはやや驚いたように目を開いたが、すぐに両者に礼を言う。

 軽い雑談が続いて、本題に入る。カートルーナが勇者に会うことを楽しみにしていたと知っているゴーベルは、会話を邪魔することなく静かにしていた。


「魔王討伐の方はどうなったのでしょう? ここには結果を知らせに来られたので?」

「いや逃げられたんだ。もう少しというところだったと思うから、次は成功するはず。それで魔王の行方をまた占ってもらいたくて」

「わかりました。ではゴーベル、お願いします」


 頷いたゴーべルは本を開いて集中し始める。

 本を閉じ、テーブルに置かれた地図に視線を向けたゴーベルは、指をライトルティ南の無管理地帯に置いた。


「今はここにいるらしい。滞在しているわけではなく、少しずつ西へと移動しているようだ」

「今からそこらに行ってもいないし、移動している個人を無管理地帯で探すのは難しいな」


 オロスの言葉に、ゴーベルは頷き口を開く。指は一度離され、さらに西に移動する。


「来年の始めくらいに、ここにたどりつき滞在するようだ」

「ずいぶん大きな森だけど、名前は……」


 トンっと置かれた指の下にある森を見て、カルマンドが言う。その森の名前は深淵の森と書かれていた。


「深淵の森ってーと三魔域? とんでもないところにたどり着くんだな。正直、俺は行きたくないかな」

「俺もだよ」


 カルマンドが嫌そうに言い、それにオロスも頷き、ゴーベルを見る。


「ここにたどりつく前にどうにか捕まえられないか?」

「難しい。ほかの地に滞在することもあるが、十日もいない。先回りして上手く捕まえられるかわからない」


 無管理地帯でずっと人探しするのは不可能だ。補給などでどうしても街に戻る必要がある。そういった補給で時間を食っている間にすれ違う可能性がある。

 そういったすれ違いを繰り返すよりは、居場所のわかっている場所に向かって行った方がましではないかとゴーベルは思えた。

 それにまた逃がすと行き先を変更する可能性もある。そうなるとまた遠くへと移動するだろう。そういった追いかけっこは避けた方がよいとも思う。

 人海戦術で探していけば見つけられるだろうが、それだけを動かす資金力がないし、魔王と対するには薬が必要で、多くの薬を揃えるのも一苦労だ。


「そこに行くとして、時間が余るな。冬に無管理地帯に行くのは止めたいから、魔王に会うのは来年の春以降ということになる。これからヘプシミンに行って、最西部の街で滞在する? 一度セジアンドに戻るのもいいかな」


 ミュールに会いたいしとロンタは心の中で呟く。

 そういうルートで深淵の森に行こうとするなら行程は、半年かけてライトルティに戻ってきて、ぎりぎり雪が降る前にヘプシミン入りして、雪が降る中ゆっくりとヘプシミン最西部へと向かうということになる。

 春になってすぐに深淵の森に向かうならばという条件でだが。もっとゆっくりするなら、セジアンドに長めに滞在し半年以上かけてライトルティに戻ってきて、冬をここで越し、春になってヘプシミン入りするということになる。


「私はこれからヘプシミン入りする方がいいかな。面倒なことはさっさと終わらせたいし、時間余ったほうが深淵の森の情報収集とか準備に時間かけられる」


 もっともらしいことを言うレラだが、本音はミュールに会いたいという考えを乙女の勘で察して、阻止しようという考えだ。


「俺もレラに賛成だ」


 オロスもこれからのヘプシミン入りに一票を入れる。レラの考えを察して支援するというわけではなく、そろそろ終わると思っていた魔王討伐が延期され、このままのんびりしているとさらにずるずると延びていきそうで、そうならないため動こうと考えた。


「オロスもか、カルマンドはどう?」

「俺は特に考えなしです」


 早かれ遅かれ魔王は倒すという考えで、どちらになってもいいと思っている。


「ヘプシミンに行くとするか」


 三人の意見からロンタは帰郷は諦めた。

 少しだけ残念という思いを抱えているが、早く終わらせれば早く会えると気持ちを切り替えた。

 かわりに長く戻れていないことを謝る手紙を出すつもりだ。


「来年魔王に会ってどうなっているか占いますか?」


 カートルーナの提案に、ロンタは頷く。

 ロンタに手を出してもらい、触れて未来を見る。

 わずかにノイズがかかっていることにまず驚いて、剣を構えたセリエと対峙していることにさらに驚く。

 セリエがいるということは裕次郎もいて、魔王のことを占って彼らが出たということは、場所は深淵の森なのだろうと予測する。

 ロンタから手を離し、どうしてそこにいるのかどうしてそうなっているのか、戸惑いながら考えていく。

 

「どうしたんだ?」


 難しい表情を浮かべたカートルーナに、ロンタはわずかながら不安が湧く。

 声をかけられてカートルーナは、ロンタたちの不安を晴らそうと取り繕ったような笑みを浮かべる。


「ちょっと意外なものを見てしまいまして」

「どんなもの? 俺たちが負けるところとか」

「いえそうではないんです……申し訳ありませんが、今日のところはこれでお開きとしていいでしょうか。もっと話したかったのですが、今見えたことの整理をしたいのです」

「わかった。見えたことはいずれ教えてもらえるのか?」

「ええ、明日明後日には。使いを出すので、宿の名前を教えてください」


 宿の名前を言って、部屋を出て行く四人を扉まで見送る。

 扉を閉じたカートルーナに、ゴーベルが声をかけた。


「なにを見たんだ? あんなに勇者と会えることを楽しみにしていたお前さんが追い返すほどだ。なにか特別なものを見たんだろう?」

「さっきも言ったようにロンタ様たちの敗北とかじゃないの。それは見えなかった、見たのは同士討ちといえそうなもの」

「どういうことだ?」


 ロンタやオロスが仲間割れするところでも見たのかと考えた。


「以前、雰囲気の独特な髪の白い女が占いにきたと思うけど、覚えてる? 隣には黒髪の男がいたんだけど」

「どれくらい前のことだ?」

「雪が降る前、半年ほど経ったのかしら」

「……母親の居場所を知りたいといっていた奴のことか?」


 なんとか記憶を掘り起こし、自信なさげに聞く。


「ええ、その人よ。女の名前をセリエ、男の名前をサワベユージローというんだけど」

「本来勇者の仲間になっていた奴と薬を作った奴だったな? 同士討ちと言ったか、つまりその二人と勇者たちが対立していたと?」


 ゴーベルの推測に、コクリと頷きを返す。


「しかも場所は深淵の森みたい」

「どうなってるんだ?」

「私もそれが知りたい。とりあえず来年あの二人が深淵の森にいるか、調べてもらいたいの」

「わかった」


 裕次郎のことは相変わらず占いにくいが、セリエのならば大分ましなので、そちらの居場所を探る。

 今二人はヘプシミンの最北部にいる。そこらの行動を探り、深淵の森にたどりつくらしいことを確認した。正確にはわからなかったが、移動先は深淵の森がある方角だったので間違いはないのだろうと判断する。


「深淵の森に行くことは確実なのね」

「確実とはいえないだろう? いくつもの未来を変えたんだから」

「そう、でしたね」


 今回の未来も変えてくれれば、杞憂ですむのにと思いつつ、続きは夕食後にすることにした。二人だけではなく、皆の力を借りてどうしてそこにいるのかといった理由を探ることにしたのだ。

 そうして彼らは、群れる影犬が原因で側室殺しの濡れ衣を被せられることを知った。

 国中から追われる立場になった二人を、裕次郎を嫌っていた者たちでさえ気の毒に思う。

 

「あの人たち悪い人じゃないのに」


 一番接点のあったフィナが悲しげに呟く。カートルーナは励ますように肩に手を置いた。


「どうにかして濡れ衣を被せられるのを阻止できないかしら。群れる影犬をどうにかしてしまえば」

「こっちの奴らをどうにかしても意味はないな、やるならヘプシミンにいる組織の人間だ。だが間に合うか? 残り時間は二ヶ月と半月だ。移動だけで一ヶ月は時間を必要とするし、依頼を出してもすぐに冒険者が動くとは考えづらい。ましてこっちじゃなくヘプシミンでの依頼だ。依頼料が良くても積極的に受けようとする人間がいるかどうか」


 難しそうだとゴーベルが首を振る。


「俺としては逃亡生活する前に、タンター家だったか? そこに事情を話して、ライトルティへと逃がしてもらうよう働きかけてもらう……いや駄目か」


 考えている途中で実行できない事情を思い出す。

 それは異能者は政治に関わらないという約束だ。裕次郎たちが巻きこまれるのは、跡継ぎ問題も含めた王族殺人。政治がらみで、彼らには手が出せない。まして他国の問題なのだからなおさらだ。内政干渉などやった日には、裕次郎たちの心配する暇もなくなる。


「できることはないのかな」


 フィナの言葉に誰も答えることができない。


「王に手紙を書きましょう。事情を書いて、せめてこの国では手配書などでないように。私に思いつくのはそれくらいです。皆協力ありがとう。私は神官長のところに行ってきますから、自由に過ごしてて」


 落ち込んでいるフィナをほかの者に任せて、部屋を出て行く。

 仕事を終えてゆったりとしていた神官長に会い、話をしていく。


「集まっていたのはそういったわけか。思いのまま動かないで正解だ。そんなことをしたら、ここの生活がめちゃくちゃになっていたかもしれない。サワベだったね、彼らには恩がある。私から王に手紙を書いておこう」

「ありがとうございます」


 カートルーナが頭を下げる。

 神官長の言う恩とは、バグズノイドと穏便に縁を繋いでくれたことだ。彼らの遺跡調査や知識は、魔法道具の発展にとても役立っていた。技術力に差がありすぎるのですべてが理解できたわけではないが、わかったことだけでも職人たちにとって良い刺激となっている。

 バグズノイドと敵対していれば、このような進展はなかったのだから、手紙の一つくらい出すのになんの問題もなかった。

 翌日にカートルーナはロンタへ使いを出し、神殿に来てもらう。


「なにが見えたか教えてもらえるのかな」

「はい。見えたものは魔王との戦いではなく、深淵の森でとある人たちと敵対しているあなた方でした」


 それだけでは昨日驚いたことがわからないので、先を促すように見る。


「その人たちは皆さんに渡した薬を作った人たちです」

「なんでそんな人たちと対立するんだろう? 戦う理由なんてないはずだけど。それに深淵の森にいる理由もわからない」

「対立理由は不明です。見えなかったので」

「あなたが見えないなんてことあるんですか?」


 少し驚いたようにカルマンドが聞く。


「私もなにもかもわかるわけではありません。それに加えて、今回の占いの対象をサワベさんというのですが、その方の未来は見えづらいのです」

「占いの力を阻害する力でも持っているのですか?」


 オロスの問いに、カートルーナは首を横に振る。


「わかりません。サワベさんは理由を知っているそうなのですが、信じてもらえないだろうと説明しなかったらしいので」

「戦うのはその薬師ということか」

「あともう一人、セリエという森と平原の民のハーフの女性がいます。見えたのはこちらの女性と対立している姿ですね」

「ハーフか、珍しい。薬師との関係はわかる? 無理矢理従わせているとか」

 

 ハーフという立場上、まともな扱いは受けていないのではとロンタは考えた。対立ももしかすると裕次郎に命じられてのものかもしれないと思う。もしそうならば解放してやりたかった。

 だからカートルーナの次の説明に虚を突かれる。


「サワベさんがセリエさんに惚れていて、一緒に行動しています」

「……え? 薬師がハーフに惚れてる?」


 思いもしない事情にレラが呆気にとられたように聞き返す。皆似たような表情だ。


「サワベって薬師、平原の民よね? 他種族とかって説明なかったし」

「ええ、少し特殊かもしれませんが平原の民ですよ」

「ハーフに惚れるってことはありえなくはないんだろうけど、実際に聞くとありえないって思ったわ」

「ハーフと恋仲になってそれを反対されたから、国を出て深淵の森まで行った? んで俺たちのことを追っ手と間違えた? それはさすがにないな」


 オロスは驚いたまま予想を口に出し、自身で否定した。ほかに理由を考え、わからずカートルーナを見る。


「二人が深淵の森にいる理由が想像つかないんだが。駆け落ちにしても無管理地帯に逃げ込むなんて自殺行為だろう?」

「行った理由を詳しくは話せません。なのでぼかしての説明になります。厄介事に巻き込まれる二人は、罪がないのに国中に手配書をだされます。弁明は不可能と判断したか、捕まらないように国を出て、行き着く先が深淵の森です」

「その言い方だと、手配書はまだ出されていないように思えるんですけど」


 カルマンドの確認にカートルーナは頷く。手助けできないことを思い、表情が沈む。


「ええ、まだ出ていませんね。もう少し先のことです。それを阻止できないかと皆で考えたのですが、理由があってちょっとした手助けしかできなくて」

「国中に手配書が出されてるなんてよほどのことだろう?」


 ロンタの言葉にカートルーナは再度頷く。


「ヘプシミンに行ったらわかると思います。ですが私たちは政治に関われないので、この場で口に出すことも避けた方がいいのです」


 政治という言葉を出すことで、ヘプシミンの貴族か王族の厄介事に巻き込まれていると匂わせた。この情報だけで話せるギリギリの線だろう。


「政治? 本当に厄介事に巻き込まれたんだな。無実ならどうにかしてやりたいが」


 ロンタも他国の人間だ。セジアンド王たちの了解なしに口を挟むのは不味いという判断くらいできる。勇者の発言はどこでも無視されることはないだろうが、だからといって国政にまで首を突っ込んでいいわけはない。


「できれば会った時、ライトルティに来るように言ってもらえませんか? こちらでは手配書がでないように働きかけていますので」

「戦いは避けたいし、必ず伝えるよ。深淵の森なんかより、ライトルティの方が絶対に過ごしやすいだろうし、頷くと思う」

「それで対立が避けられるか?」


 オロスが疑問を口に出す。どういうことだとロンタが聞き返した。


「深淵の森に行った理由はわかった。そこで静かに暮らすことになるんだろう。じゃあどうして俺たちと対立するんだろうか? 隠れてやりすごせばいいと思うんだが。俺たちが神殿からの伝言を持っていると向こうは知らないんだろうし、わざわざ出てくる必要はなくないか?」

「賞金目当ての傭兵や冒険者と勘違いしたんじゃないの? 先手をとろうとしたとか」


 レラの言葉に、オロスは首を傾げる。そうかもしれないと思う心の片隅に、そうじゃなければという疑問が消えずにあるのだ。情報が少ないせいで、疑問は明確な形にはならない。

 オロスの疑問は、魔王もいつかそこに行くということから生まれていた。魔王と平原の民が手を組む可能性が思いつかないので、関連付けて考えられないが、万が一という思いが疑問となって現れた。


「もし戦闘になるとして、二人の強さはどれくらいなんだろうか」

「私も詳しいことは知らないのですが、三魔域の一つで月単位で過ごせるのですから、弱くはないと思います。あと無管理地帯を二人と一匹のラグスマグで何度も行き来してますね」

「弱くはない、むしろそれなりの実力者と見ておいた方がいいか。というか深淵の森に滞在って補給もままならないんじゃないか? どうやって過ごしているんだ」


 疑問は解消されずに、積み重なっていくばかりだ。

 とりあえず出会っても油断はしない、カートルーナからの伝言を伝える。この二つを忘れずに行動しようと考える。

 それを決めた後、肝心の魔王についての対策が決まってないことにロンタたちは頭を抱えた。それはヘプシミンに移動しながら考えることになる。

 その移動時に、今のうちに裕次郎たちを探してライトルティに誘導すれば面倒事はないのではと気づいたが、それを思いついたのはあと一日で無管理地帯を越えるという場所だった。ここから引き返すには食料などに不安があるので、一度ヘプシミンに入る。

 移動の疲れを取り、四人でもう一度ライトルティに向かうか話し合う。結論は行かないことになった。居場所を聞いても占いできちんと情報が得られるかわからず、その場合移動の約二ヶ月が無駄になるかもしれない。魔王との遭遇まで時間は余っているとはいえ、二ヶ月は少なくない時間だ。

 そのまま四人はヘプシミンの王都に向かうことにした。王都ならば深淵の森の詳しい情報があるだろうと。

 到着したのは緑の月終盤、六月の終わり近くだ。ヘプシミン王に挨拶するため、城に上がる。セジアンド王からの書状を見せて、謁見の間まで案内してもらう。

 三十手前の若い王を前にして、ロンタたちは片膝をついて礼を取る。セジアンド王やライトルティ王と比べると、若さゆえか威厳が足りていないように思われる。それを口に出すような真似はしないが。


「ロンタといったな。勇者誕生の報はここまで届いておる。めでたいことだと思っていた。顔を見ることができて嬉しく思っておるぞ」

「もったいないお言葉です」

「うむ。お主たちの用向きは深淵の森についての情報を知るためらしいな。違いないか?」


 王が深淵の森と口に出すと、控えていた家臣たちの気配が揺れる。それに四人は気づくが、今は無視することにした。


「違いありません」

「どうして深淵の森について知りたいのだ?」

「私は今セジアンド王に命により、魔王討伐の任についております。その魔王が深淵の森にいずれたどり着くと、ライトルティの占い師に占ってもらい判明しました」

「なんと!? それはまことか!?」

「はい。実力の高い占い師によってもたらされた情報です。ほぼ確実かと」

「……既に魔王は森にいるのか?」


 難しげな顔で尋ねる。


「いえ、今はまだ。冬辺りに着くらしいと」

「その前に討伐はできそうにないのか?」

「無管理地帯を常に移動しているようで、そんな場所でたった一人を探し見つけるのは難しく」

「そう、だな」


 王も難しいということは理解できた。居場所が確定している場所に行こうとする考えも理解できた。

 視線を下げて少し考え込んだ王は、視線をロンタに戻し口を開く。


「実はな、我らは来年深淵の森へと兵を出そうとしているのだ」

「それは調査目的でしょうか?」


 野心が閃く王の目を見たロンタは違うだろうなと思いつつ聞く。

 裕次郎たちとの対立原因はこれかと考えたが、軍が押し寄せるのだ、よほどの馬鹿じゃなければ逃げるだろうと考える。


「調査ではなく、開拓目的だな。あそこは豊富でかつ貴重な資源が眠っている。勇者殿は知らないかもしれないが、四十年ほど前にこの国は一度兵を向けたことがある。タイミング悪く、魔物の群にぶつかって深淵の森にたどり着くことはできなかったがな。祖父が目指したことを孫の私が達成しようと思ったのだよ」


 その考えよりも、偉業をなした王として名を残したいという思いの方が強い。

 その名声を持って、独自に動きがちな貴族を牽制したい。先王が早死にして、若くして王位を継いだため経験不足から采配がいたらないことがあった。そのせいで貴族に甘く見られがちになった。貴族に王の威厳を見せ付けるのに、ちょうどよかったのが先々代が失敗したことを成功させることだった。

 周囲の人間の中にはじっくり統治を進めて、貴族たちに認められればいいと助言する者もいた。だが逸る思いを抑えきれずにじっくり進むことを選べなかった。


「あそこは魔物で溢れかえった土地と聞いております。かなりの準備が必要と思うのですが」

「十年ほど前から準備を始めておる。西の国境のさらに先に砦を作って、補給が途絶えないようにもしてあるしな。そこでだ、勇者殿も深淵の森が目的地だという。ともに行かぬか。その方が両者にとって都合がよいと思うぞ?」


 王国にとっては魔王という予定外の大物を勇者に任せることができるし、勇者がいるだけで士気が上がる。勇者にとっては魔王と戦うまでの露払いを任せることができ、移動の際の補給を気にしなくていい。

 それはロンタにもすぐにわかった。


「頷きたいところなのですが、仲間とも相談してから返答してもよろしいでしょうか?」

「今すぐ返事を求めるのというのは急か。わかった、十分に相談するがよい。色よい返事を期待しておる。客室を準備させよう、そこで休むがよい。あと深淵の森の情報は渡そう。のちほど部屋に持って行かせる」

「ありがとうございます」


 次の予定の関係もあって話はここまでとなり、四人は謁見の間から出て行った。

感想誤字指摘ありがとうございます


》マカベルを妾とかにしても、きっと周りは怒ったりしないぞ

現状周りは魔物だらけなので重婚なにそれおいしいの?といった状態。今がチャンス!


》何百年も年上のですが

》そういえば、魔王の異能の力を持つマカべルの寿命はどの位なのかな?

まだマカベルはそこまで生きてません七十年くらい。寿命はあほみたいに長いです。殺されなければ次の破壊地震経験するくらいには生きます。ちなみに次の地震は八百年ほど先


》主人公達の姿ってどんな感じですか?

沢辺裕次郎 19才 171cm 68kg 黒目黒髪 肌は黄色人種 これといった特徴はない、美形でもない こちらに来たばかりの頃はのんびりとした雰囲気をまとっていたが、旅をするうちにこちらに慣れて鋭さが感じられるようになる。でも基本的には穏やか

セリエ 27(人換算で18、外見も二十前) 164 55  白の背中までの髪  エメラルドグリーンの目(やや鋭い 肌は白 スタイル可もなく不可もなく 誰もが振り返るようなとまではいかないが美人 出会ったばかりの頃は常に緊張感を持っていて、森で暮らし始めてからは穏やかな表情になることも珍しくない

マカベル 70(外見12) 148 39  銀の長髪(腰まで レッドブラッドの目  肌は白 気弱そうな表情、裕次郎たちと暮らすことで明るくなっていった   スタイルは子供  保護欲をさそう美少女 威厳のないロリ婆

ゴゼロ 57(もう三十年弱は生きる  182 84  白髪が多くなったぼさぼさの黒茶  穏やかな黒の目 肌は褐色 顔の作りは人から外れている 身長は高いものの若い頃と比べると筋力は落ちてほっそりしている。若い頃はゴブリンというよりオーガといった感じだった

ドライアド  300ほど 167 59  膝まで届く波打つ緑の髪と同色の目 肌は黄色人種 めりはりのきいたスタイルの美女 黙っていれば神秘的、口を開くと軽さも感じられる

水竜とシュピニア 約400と4才くらい?  角の生えた大きな白蛇  水竜は人に変化できるが、人嫌いなのでしない。シュピニアはまだ変化を覚えていない

ロンタ 21 174 72  赤の短髪金眼 肌は焼けた黄色人種 普段は陽気な色男 鍛えられた肉体で、日々精進を怠っていない


》マカベルの力は収束したものなら敵を即死!とかなっても~

直撃したら衰弱死もありえますね。魔法なくても異能だけで十分戦えます


》プニプニの肉球の手で必死にリール巻いてるフォクシン

作業している様子は可愛いけど、やったことの結果はわりと洒落になっていないという


》マカベルを養子にすればみんな幸せ

ドライアドが助言しなければその可能性もあったのかな。養子という方法は考えてなかったんですよね


》きっとここのフォクシン達なら、協力魔法を使う時は遮蔽物の後ろで屈んで~

教えたらノリノリでやってくれる可能性が


》ドライアド式時限爆弾が爆発するのはいつですか

いっつになるっかな~


》マカベルの力は確実に癒しだよね

その方向ですね。恵まれすぎた才能が邪魔してますが

水竜を癒せそうですが、完全に能力制御できるのが最短でも一年先という状態


》規制が厳しいのにこんな卑猥な展開になるとは思いませんでした

そういった想像をされるとも思いませんでした


》マカベルの異能は上に放出してる感じだけどということは頭撫でただけで異能直撃ですか

親しい人以外が撫でようとすると警戒して力を押さえ込まず、直撃で死ぬか死にかけますね


》セリエが魔王化して大暴れするんですね分かります、マカベル×セリエ〇でしょうけど

感想返しで誤字ですね。やっちまった!


》セリエのコスチュームにチャイナドレスが無いこと

チャイナ忘れてた! チラリと見える白く眩しい太腿に裕次郎は拍手をうってありがたがることでしょう。そしてセリエが恥ずかしがってこれもクローゼット行きに


》マカベルは魔王補正で今後数十年間はロリのまま・・・犯罪行為にしか見えないな

責任取ったら犯罪ですよね

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― 新着の感想 ―
[一言] 王様は兵を出す事を占って貰わないのだろうか? 失敗した時の兵の消耗や失われる予算などを考えると、見てもらうべきだと思うんだけどな
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