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残照 ~俳句と人生、老いの旅~  作者: 松涛/編集:山鳥はむ


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崩れ落つ怒涛北斎音えがく

平成二十六年十二月



 葛飾北斎、富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」



 天才、鬼才として名高い北斎は、はるかに見える富士とか、今にも沈没しそうな小舟に拘ったのではないと思う。



 むしろ大怒涛の飛沫を描きたかに違いない。

 その結果、大音響の海鳴りが聞こえてくる……私はそんな風に思っている。



 それに加えこの大天才の画業に応えた彫師、刷師の技のキレに感心する。



 北斎が絵筆を握った処は「江の島」に違いない。富士の向きからそう思う。

 逆巻く怒涛の裏に茅ヶ崎沖の「三つ石」がある筈だ。



 「江の島」は、かつての私にとって絶好なデートコースだった。妻との思い出も深い。


 神社の階段を上り詰めると土産屋と海原が眼下に広がる。


 岩に押し寄せては引く白波。何よりも箱根の山に沈んでゆく夕日は素晴らしい。



 肩を寄せ合う男女が目につくのも江の島の祭神が「裸弁財天」の由縁だからだろう。




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