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残照 ~俳句と人生、老いの旅~  作者: 松涛/編集:山鳥はむ


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虹の橋妻が渡って来るような

平成二十五年十月



 ワイフに会いたい。もう一度お喋りしたい。

 両親も一緒にいつもの様に和やかな鍋を突つきたい。



 一人切りで居るとついそんな事ばかりを考えている。

 そして写真に向かって喋りかける。



 ヘミングエイの「老人と海」に独り言をつぶやく老人が、近頃大きな声で喋っている……という描写がある。

 私もそれに近いことを無意識の中でやってしまった。



 青い空に架かった虹を見ながら、大声ではないとしても声を出して「おいで、おいでよ」と呼んでいた。



 耄碌かもしれない。

 でも「そうではないか?」と思えることは「認知症」ではないそうだ。

 しかし「ヤバイ」ことには違いない。



 思い出の詰まった此処を出るべきなのかも?



 とはいえ独居老人に部屋を貸してくれるだろうか? 年齢もお金だって……

 まるでタクシーのメーターが上がっていくのを後部座席から恐々と見詰めている様な気分がする。



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