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床に散る髪きぬぎぬの初夏の朝
平成二十五年七月
ワイフが亡くなって二年が経過した。
施設に甘えて部屋を整理もせず其の侭に放って置いた。
本心は手を付けるのが嫌だったのだ。
ベッド、鏡台、小箪笥も処分できなかった。
想い出が其の侭消えてしまいそうな怖さがあったのだ。
いつかは決別しなければなるまい。
幸い私はバリバリの現役とは言えないまでも何かと東京に出なければならない用事がある。
此処を出よう。
段々とその思いが固まってきた。
手始めにベッド周りから始めた。
床に銀色に輝く髪の毛が散らばっていた。懐かしいワイフの面影がよみがえってきた。
掃除機で吸い込むことは忍びがたい。一本一本、床に座り込んで拾った。
そうだ、これを句に纏めよう。しかし悲惨な語彙しか浮かばない。
その結果、こんな艶っぽい句に変身した。
別れの句なのだ。これでいいのだ。
そして、最期の人生を懸命に生きてみよう。そう思った。




