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残照 ~俳句と人生、老いの旅~  作者: 松涛/編集:山鳥はむ


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鍋の夜確か聞こえし父母の声

平成十九年一月



 鍋は冬の定番とされているが、顔をつき合わせて夕餉を採ることはわが国の文化といる。

 ウチでは丸い大きな茶ゃぶ台で食事をした。その都度、折り畳んだ脚を伸ばして組み立てる。

 その真ん中に鍋敷きを置き鍋を載せた。



 結婚した直後に母はワイフに告げたそうである。

「これからはあなたがウチを取り仕切りなさい。お手伝いさんで間に合うことはやらせなさい」と。



 わたしは両親に感謝している……と最近になってつくづくそう思う。大学も行かせてもらい、この歳になるまで胃に穴が明くこともなく円形脱毛症にも罹っていない健康な遺伝子を受け継がせてもらった。



 一方、わたしは両親になにを報いたか? 息子に一体何を与えたのだろうか?


 母は、「お前は、初美さんと結婚したことだけが、唯一の親孝行だった」と吠えた。

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