何事も、ポジティブにいきましょう(願望)
お、お久しぶりです……震え声 今後は更新頑張ります……はい。
(そうよ。こっちは生半可な覚悟でやっていないの。教師役にも、生半可な気持ちでやってほしくない……!)
それは、いわばポジティブに捉えすぎとも取れる。が、相手がこの調子ならば、こういう風に捉えたほうがいい。きっと、エヴァリストならばそう言ってくれる。
ジゼルは、そう思う。
だからこそ、ギャスパルのほうに顔をぐっと近づけた。彼が、思わず顔を引く。
「えぇ、構いません。ぜひとも、厳しく教育してください」
ジゼルのその態度に押されたのか。はたまた、ちょっと引いたのか。
ギャスパルが、頬を引きつらせる。しかし、すぐにふっと口元を緩めた。
「そっちがその気なら、こちらも容赦しませんよ。……後悔しても、知りませんからね」
「……望む、ところです」
そうだ。これには、今後のジゼルの人生がかかっている。
元より周囲のバカにしたような態度には慣れている。合わせ、ギャスパルは貴族のような陰険さが薄い。
まだ、可愛いほうだろう。
(えぇ、そうよ。そうに、決まっているわ――!)
そう思い込んで、自分を奮い立たせる。ぎゅっと膝の上で手を握れば、ギャスパルがソファーの背もたれに背を預けた。
「ったく、なんていうか、完全なじゃじゃ馬娘と言いますか……」
彼がちらりとジゼルに視線を向ける。……誰がじゃじゃ馬娘だ、誰が。
心の中でそう思いつつ、ジゼルがギャスパルを睨みつける。彼は、先ほどよりは柔らかな表情をしていた。
「やりましょう。……とりあえず、スケジュールを決めましょうか。あなたさまだって、ずっと暇というわけではないのでしょう?」
ギャスパルのその言葉は正しい。ジゼルにだって、予定がたくさん詰まっている。
貴族令嬢として、社交の場に赴く予定。さらには、エヴァリストとの予定も……。
(……そう。私は、エヴァリスト様の婚約者)
それがたとえ偽装のものだったとしても。エヴァリストに、ただならぬ感情を抱き始めていたとしても。ジゼルは、彼を支えるのだ。持ちつ持たれつと、彼も言っていたから。
「エヴァリスト殿下によれば、この後剣術や魔法の実技の家庭教師も雇うそうですね。そうなれば……週に二度が、限度でしょうか」
手早くスケジュール帳を取り出し、ギャスパルが予定を組み立てていく。
その姿をぼうっと見つめていれば、彼が怪訝そうな視線をジゼルに送ってきた。
「なにされているんですか。あなたさまも、予定のチェックを」
「……ぁ」
彼の言葉に、ジゼルはハッとして予定を思い出す。
(とりあえず、社交の場が少ない曜日がいいわよね。……あとは、時間)
出来れば、社交の場に参加するからという理由で、授業を欠席するのはやめたい。
ならば、社交にあまり精を出さなくていい曜日が理想だろうか。
「……曜日的な感じですと――」
ジゼルがつらつらと自らの予定を口にする。……すると、ギャスパルが目を見開いた。
もしかしたら、ジゼルが自らの予定を把握しているとは思いもしなかったのかもしれない。
(……でも、私はこれでもバティスト殿下の婚約者だったから)
だから、記憶力には自信がある。次期王太子妃。いずれは、王妃として。ジゼルはこのフォルジュ王国を導いていく存在……と、思われていたのだ。……殺され、バティストに愛想を尽かすまでは。
(……バティスト殿下は、私にただならぬ感情を抱いている、か)
ふと、マリーズの言葉が脳内に蘇る。
一度目のバティストは、ジゼルのことを邪魔者のように扱っていた。ほかの令嬢と恋に落ちて、邪魔者のジゼルとの婚約を破棄し、刺殺するほどに――。
(だけど、何度考えてもおかしい)
でも、いつも同じところで引っかかる。どうして、彼はジゼルを殺したのだろうか? もしかして、ジゼルが生きていては不都合なことがあったから――。
(もしくは――)
頭の中に浮かんだ、一つの可能性。けれど、それを考えるよりも早く、ギャスパルがスケジュール帳を閉じた。
その後、ジゼルに視線を送る。
「では、こんな感じでいきましょうか」
彼が小さなカレンダーを取り出し、的確に書き込んでいく。
それを見つめ、確認しつつジゼルはこくんと首を縦に振った。
「これで、大丈夫です」
ふわっと笑って、ジゼルがはっきりとそう告げる。瞬間、ギャスパルの頬にほんの少しの朱が差した。
「……なんて、言いますか」
彼が自身の額を押さえる。……一体、なんだというのだろうか。
(まさか、見るに堪えない笑みだった……?)
不意に、その可能性にたどり着く。エヴァリストはジゼルのことをある意味可愛がってくれているが、ほかの人間は違う。
……そもそも、幼少期から悪意や嫉妬、憎悪に晒されて来たジゼルである。あまり、好意的に捉えられない。先ほどのポジティブとは、また違うから。
「あなたさまは――」
ギャスパルが、ジゼルのほうに手を伸ばす。そして、その手がジゼルの傷一つない頬に触れそうになったとき――部屋の扉が、開いた。
驚いてそちらに視線を向ければ、そこにいたのは――ほかでもない、エヴァリストだった。彼は、肩を揺らしつつ、真剣な眼差しでジゼルを見つめてくる。……ただ事じゃ、ない。
ジゼルの直感が、そう告げた。
次回はあんまり間があかないようにしたいですね……。
あと、こっそり新連載始めております。
『あなたに利用される私は、この世にもう存在しません。~残りかすの聖女と(偉大な)お茶飲み大魔法使い。~』
というお話です。こちらのあないなが好きな方は、好きになってくださるんじゃないかなぁとは思います。
どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします……!




