表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第五章 雷の国イスズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/106

雷の国へ行く前に

「マジかよ~……今度はオレんとこ、来て欲しかったんだけどなぁ」


 ハスターは、リビングでトウマが雷の国イスズに行くことを聞き、がっくり肩を落とした。

 トウマは、夕食後のデザートであるカットフルーツを食べながら言う。


「まあ、順番はどうでもいいだろ。それに、風の国も絶対行くし、そんときは案内頼むぜ」

「おう。でも、シロガネに先越されるとはなぁ」


 ハスターは、トウマの隣でお茶をすするシロガネを見た。シロガネはズズーっと緑茶を啜り、ハスターに向かって言う。


「悪いとは思っていない。私は、トウマ様に来て欲しいと願っただけだ」

「はいはい。これで、トウマが来ていないのは、オレのところである風の国と、ヴラドの闇の国だけか」

「……オレぁどうでもいい」


 ヴラドは、何故かナイフを研いでいた。

 長い足を組み、ナイフにオイルを塗っている姿は、かなり様になっている。

 すると、大浴場からマール、カトライアが出て来た。


「いいお湯でしたわ~」

「ふう、ここのお風呂ってすごく綺麗で広いから、つい長湯になっちゃうわね」

「そうですわね。ビャクレンさんはまだまだ物足りないみたいですわ」


 二人ともパジャマ姿だ。共同生活をするようになり、こういう姿を見せても照れなくなっていた。同様に、ハスターたちも気にしていない。

 すると、リヒトがセリアンに支えられ階段を降りて来た。


「あいたたた……ふう、まだ本調子じゃないや」

「リヒト、無茶はダメだよ? ほら、お風呂行くんだよね」

「え、いや、さすがに一緒は」

「湯着を着るから平気。ちゃんと綺麗にして、お湯で温まればすぐ治るからね」

「う、うん……」


 そして、セリアンに連れられ男湯へ行ってしまった。

 その様子をトウマたちは見て、ハスターが言う。


「ラブラブだねぇ……というか、セリアンちゃんってリヒト以外の男性にまるで興味ない感じ。オレも挨拶したけど、社交辞令みたいな挨拶だけだったし」

「クソどうでもいいだろンなこと。それよりトウマ……リヒトのヤツ、マジで七曜月下を倒したのか?」

「そうらしいぞ。でも、直接見たマール、カトライアから聞いた方がいいぞ」

「ふふ、お任せですわ。今回はお留守番ですしね」

「これまでのこと、あんたらに教えてあげる」

「いいね。なあヴラド」

「話に興味はあるな。ん? おい、そういやアシェは?」


 ヴラドがリビングを見るが、アシェはいない。

 ハスターが大浴場の入り口をチラッと見るが、マールが「お風呂じゃありませんわ」という。


「部屋でマギアいじりでもしてんじゃないか?」

「……その通り。アシェは、私のマギアを調整している。私の『タケミカヅチ』は、まだ調整、改造の余地があると……イスズに行く前に、できることはやるそうだ」


 シロガネは再び茶をすする。

 カトライアは、ソファにもたれかかり、不満そうに言う。


「はあ、私も雷の国イスズに行きたかったわ。マールもでしょ?」

「ええ。七曜月下との戦いは大変ですけど、わたくし、強くなりましたわ」

「ほー……じゃあマール、オレと摸擬戦やろうぜ」

「ふふ、構いませんわ」

「じゃあカトライアはオレと。レガリアの力、見せてくれよ」

「ふふん、上等」


 それぞれが話で盛り上がり、トウマはそっとその場を離れた。


 ◇◇◇◇◇◇


 トウマは、アシェの部屋のドアをノックした。


「ん、はーい」

「俺。入っていいかー?」

「え、トウマ? まあいいけど……」


 ドアを開けて中へ。

 部屋にはアシェ、そしてルーシェがいた。

 二人とも、大きなゴーグルを額に掛け、マギア用の部品を削ったり、細かい調整を加えている。

 アシェは、シロガネの『タケミカヅチ』を置き、トウマに言う。


「どうしたの? 何か用事?」


 アシェはラフな格好だった。

 シャツに短パンというスタイルで、胸元が少し開いているせいか谷間がよく見える。トウマはそれを指摘せず、一瞬だけ見てから言う。


「いや、メシ食ったのかなと。お前、ずっとこもり切りだろ? ルーシェも」

「あたしはご飯食べたよ。アシェは熱中すると言っても食べないんだよねぇ」

「お腹空いたら食べるわよ。んで、用事ってそれだけ?」

「ああ。ちょっと、本気で頼みたいことあってな」

「……なに?」


 アシェは作業の手を完全に止める。ルーシェも気になるのか手を止めた。


「俺さ、女を本当に知りたい」

「……アンタ、またそんなこと」

「本気だ。男として成長するためには、異性を知って、度胸を付けたい。コンゴウザンのやつも『女ぁ知れよ』って言ってた。当時は興味なかったけど……今は、純粋に知りたいんだ」

「わーお。アシェ、トウマはマジだよ? どうすんの?」

「ん~……だからその、アンタにはまだ早いというか、まだ十六歳、もうすぐ十七歳でしょ? 十八歳になるまで待つのも」

「俺はもう二千歳超えてるぞ。ビャクレンだってそうだ」

「うぐ」


 アシェは黙りこむ……そもそも、なぜこんなにトウマが『女を知る』ことが嫌なのか、アシェもまだよくわかっていない。


「俺、もっと強くなりたい。だから、女を知りたいんだ」

「……あ、アタシに何を求めんのよ」

「俺の、相手になってくれ」

「…………え」


 ルーシェは「わお」と言い、自分の口を押えた。

 アシェは顔を赤くして、口をパクパクさせる。


「あ、アタシって、その」

「ダメか?」

「いや、その、アタシはその……まだ、っていうか、その」

「駄目ならいい。俺は、ビャクレンのところに行く。だから、邪魔だけはしないでくれ」

「……なっ」


 つまり、トウマは……アシェが相手をするならそれでよし。相手をしないならビャクレンとする。その間、邪魔はするな……と、アシェに言いに来たのだ。

 アシェはため息を吐き、トウマを睨む。


「あのね、アンタの言い分はまあ間違ってないわ。女を抱けば変わる男はいる」

「おお、だったら」

「でも、アンタには無理。アンタ、女をアンタが強くなるための都合のいい道具とでも思ってんの?」

「え、いや」

「まず、気持ちの問題よ。ビャクレンみたいな子は特別なだけ。女が男に身体を許すには、理由があるの。その理由もわからない、ビャクレンはしてくれるからする……そんなんで強くなれると本気で思ってるなら、アンタはクズよ」

「…………」


 トウマは何も言い返せなかった。

 アシェの怒り。トウマは俯き、頷く。


「……だよな。悪かった……俺、部屋に戻るよ」

「……そうして」


 トウマは部屋を出た。

 ルーシェは、アシェに言う。


「いいの?」

「……アタシの言ったこと、間違ってる?」

「正しいと思うよ。で……トウマがその気持ちにきづいたら、あんたはどうすんの?」

「……わかんない」


 アシェは、言い過ぎたと自己嫌悪しながら、今日一番のため息を吐くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんにちは。 ん~アシェちゃんド正論! まぁ童貞捨てて強くなった刃○も、あの当時はちゃんと梢の事は好きだった(相思相愛だった)からなぁ…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ