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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第8章 弾正軍神!!
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第80話 弾正、謀反

テストが終わりましたので、投稿再開します。

【天正二年 山田大隅守信勝】


一方的に、臣従を破棄しやがった上杉クソボケ不義野郎ケンシーンの快進撃は遠くここ畿内まで聞こえてくる。


曰く、越中東部をその支配下とし

富山城を囲んだらしい。


それと同時に多羅尾の手の者が来た。


乃美助四郎率いる五千、小寺討伐を掲げて姫路上陸。


「乃美かっ!」


おれは思わず叫んだ。この乃美っていうのは織田水軍をぼこぼこにした毛利の船大将だ。


多分、目的は幕府方を明確に掲げる―官兵衛に掲げられている小寺藤兵衛を討ち取る一種の示威行動。


……のはず。


まさかの播磨制圧を目的としていたらもう駄目だ。


ここ摂津は播磨の隣国。だから危機に陥る。


今、戦闘を有利に進めている本願寺も息を吹き返すかもしれない。


おれは紙と硯と筆を用意し、信長への手紙を書いた。


乃美助四郎、播磨入りを果たし、播磨の豪族、

その足下に膝まずくこと疑い無し。ここは、この信勝に播磨入りの御下知を下されるべきと愚考致すばかりに候。


おれはこの手紙を安土まで送った。


信長の命を受けずに播磨入りをすれば、この首が飛んでしまう。


しかし、謙信のせいで四国方面軍も大変らしい。


秀吉は信長の命で、讃岐から淡路に退却し、淡路の土豪共を制圧しているらしい。

淡路の土豪共が秀吉の背後をつけば三好と挟まれ壊滅の恐れがあるからだ。


今までは、淡路の土豪共は大人しかったが、この謙信南進で不穏になっているらしい。


一旦、四国方面軍は仕切り直し。


はあ。


思わず出てきた溜め息だけがこの部屋を覆った。



今、目の前で官兵衛が嬉しそうに喋っている。


内容は、乃美を官兵衛が追っ払った話だ。


姫路に出てきた乃美軍5千を、官兵衛が夜中、

民に頼んで、声や、鐘を鳴らさせたらしい。


で、慌てふためいたところに、夜襲を仕掛け、乃美軍を撃退。


官兵衛はわずか一千の兵で五千の兵を退けたわけだ。


「わはははは!まるで手応えがありませんでした!」


……お前はどんな笑い方してんだよ。


目から涙を出さんとばかり笑うこの小寺官兵衛は面白いとも思った。


「小官」


「はい?」


「首尾は?」


「……え?」


あー。通じねえか。おれらは安土の右大将がこんなんだからな。


「播磨の豪族は幕府方についたか?」


「いえ、それは、あの」


今までの有頂天からうってかわり、しどろもどろになる。


「まだ、機は熟していないと申しますか、はい……」


なるほどね。


てか、官兵衛はみんな仲良く幕府方なんていう

頭残念な子みたいな思考をしてやがる。


別に構わないが、それはおれのイメージする軍師、官兵衛ではない。


「小官。悪いことは言わねえ。ようく聞け」


「はっ」


「御着を乗っとりな」


官兵衛は飛び上がったかと思うと、手を振りながら後退りを始めた。


「てめえは小寺一族だ。今、謀反を起こせば間違いなく御着を落とせるぜ」


おれは、膝を付きだし、扇子で官兵衛を指した。


五倍の軍勢を追い払った今の官兵衛であれば小寺家もつく。


「で、その後は勢いに乗って、周りの土豪共を指揮下に置きな。で、別所を牽制するんだ」


播磨随一の勢力を持つ別所をなんとか抑える力を持つ家は残念ながら、ない。ないならこいつにやらせるだけだ。そしたら、おれの播磨経営もうまく行くっていうものだ。


官兵衛は何も言わず、ただ黙って俯いている。


「安心しな。おれの知り合いに呂宋っていう商人がいる。そいつにも支援させるからよ」


「……父が」


「あん?」


「御着には父の宗円がおりますれば……」


そういうことかよ。つまり父がいるっていうことは、御着を攻めれば被害が及ぶということか。


へっ。断るなら父を使うんじゃねえよ。


「そうか。悪かったな。変なこと言って」


「……いえ」


退出しようとする官兵衛の後ろ姿におれは問い掛けた。


「……悪党は嫌いか」


「ええ」


最後に官兵衛はにこりと微笑んだ。


おれはそのまま、信長に播磨入りの必要が無くなったことを書いて、安土に送った。



「一大事よ」


嬉しそうに祐光が笑いながら入ってきた。


「なんだ?随分嬉しそうじゃないか」


「はっ。義輝公遺臣にとっては、いい知らせだ」


眉がピクリと動く。義輝公遺臣にとってか。


「織田にとっては?」


「悪い知らせだ」


そうか。では当ててやろうか。


「弾正か」


「正解だ」


祐光がおれをビシッと指指した。


「松永弾正忠、石山から陣を引き払い、信貴山に籠城。謀反の意思は明確だ」


あの爺。ついに頭まで呆けたか。いや、昔からか。


「信貴山にいく」


「そう言うと思ったわ」


「祐光もこい」


「ああ」




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