表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第7章 包囲網!!
77/157

第77話 小寺官兵衛孝高

【天正元年 上杉不識庵謙信】


毘沙門天よ。わしは戦が好きだ。籠城、攻城、野戦、夜襲、奇襲、海戦、小数での戦、多数で少数を圧倒する戦、破れかぶれの戦、余裕の戦、この世のすべての戦が好きだ。


ただ、わしはそこに義を求める。


だからこそ、毘沙門よ。われに惜しみ無く力を与え給へ。


【天正元年 山田大隅守信勝】


多羅尾から送られてくる情報というのは、なにか役に立つのかと言われれば、そうじゃない。むしろ役に立たない。


何某と何某の小競り合いとか、別所が東播磨で勢力を誇っているとか、そういう糞みたいな情報。


だが、海老で鯛を釣るということもある。


ただ、それが鯛とわかるのはおれが未来人だからだが。


多羅尾が放った忍に一人の男が食い付いた。いや、忍が山田家の手の者と知ると、その忍におれへの紹介を頼んだらしい。


名を、小寺官兵衛孝高という。


「官兵衛かっ!」


恐らく、部屋で一人で叫んだおれはどうかしてる。だが、叫びたくなる。


黒田官兵衛。正史において秀吉の軍師となり天下統一を助けた男。それだけではなく、野心家のようでどこか義理固い。そんな不思議な人物。


それがおれとの面会を望んでいるのか。


成る程なぁ。


今まで有名人とは何度も会ってきたが、慣れるということはない。いつも胸が高まり、振動を刻む。


「会おう。通してくれ」


さて。官兵衛とはどういう御仁かな。



この池田山城は、田舎の城の癖に遠侍の間がある。遠侍の間とは、侍と謁見する場所。


そこも普通だ。畳が敷かれ、おれがいる場所は一段高く、肘掛けがあり、後ろにうぐいすが書かれた掛軸が掛けてある。


来たら、既に男が平伏していた。


顔は見えない。が、この男が官兵衛なのだろう。


「面をあげい」


大名らしく言ってみる。官兵衛と思われる男は

顔を上げた。


これが官兵衛か。


月代を申し訳程度に剃り、眉は極細まで剃り、顔は細く、目が大きく、何よりにやついている。


例えるなら、不良中年か。


「小寺家筆頭家老、小寺官兵衛孝高にございます」


筆頭家老を強調し、自己紹介をしている。


播磨情勢に詳しくなったおれは小寺についてもわかる。


中播磨の御着に本拠を置いている播磨の豪族。元は赤松家の家来であったが、やがて独立した豪族。当主は小寺藤兵衛政職。


この官兵衛は小寺の一族ではなく、元は黒田家だったが、長年の忠勤と能力を認められて、小寺の名字と姫路城を賜った。


まあ、そんなこの時代はまだ箸にも棒にもならないやつ。


「小寺家は公儀にお味方致すか」


公儀、大公儀は幕府のことだ。


「いえ。拙者にお任せを。播磨すべてを大公儀への忠勤を誓わせます故」


「本当か」


半分せせら笑いながら返事をした。なんていう自信家なんだ。


「今、公儀方は小寺家だけと聞くが?」


旗色を鮮明にしているのは、公儀方は小寺家、

毛利方は英賀城の別所某だけだ。別所姓とか多すぎて覚えれねえ。


で、他はどっちつかず。だから、毛利か、幕府、早く播磨入りをしたほうに靡くはずだ。


「毛利の播磨入りはあるか?」


「本格的なものはないでしょう」


ほう。官兵衛が言い切ったので、思わず身を乗り出した。


「なぜそう思う?」


「毛利は播磨を緩衝地帯としたいのでしょう。あの家はあくまで狙うのは御家存続」


「小官」


「はっ」


大して暑くないが扇子で風を入れる。


「小寺を乗っ取って別所を組み従わせ、播磨の国主となる気はないのか?」


これは疑問だった。小勢力がうじゃうじゃ溢れている播磨で、姫路城を持つ官兵衛なら、その気になれば播磨の国主になれると思うのだが。


「ハハハ、拙者は大名じゃなくて天下一の軍師になりたいのですよ。そこまで拙者を買っていただくのはありがたいですぜ」


大言壮語野郎だ。全く。


「ま、播磨入りまでまだかかる。今は下がってくれ」


「承知」


……小寺官兵衛孝高か。大口叩くが、頭は切れるようだな。


おれが官兵衛と会った3ヶ月後、天正二年となり、正月を祝ってすぐ、織田三十郎信包殿を主将とし、畿内のほとんどの兵を率いた軍が本願寺を包囲した。


おれは後詰めとして池田山に待機。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ