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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第7章 包囲網!!
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第70話 毛利、順風満帆

【元亀四年 羽柴筑前守秀吉】


旭が登るようなきらめきを放ちながら

上洛を果たした織田は、ここ坂祝で

眩いばかりの光をさらに際立たせている。


上洛を果たしたころ、この光をまがい物と称す者もいた。


その者らは口を揃えてこう言った。


武田がいると。


その武田はここ坂祝で大損害を被り、その敗者の姿を白日の元に晒した。


正直に申せば。


わしも生きてここに立てるとは思っていなかった。


だが、それをわが主君、織田上総介信長が果たした。


織田に光を放たせる信長様は、その目で何を睨むのか―


ただ、わかるのは。


わしはまだまだ上にいけるということだ。


息を吐き、空を見上げた。


ああ、眩しい。


【元亀四年

斉藤内蔵助利三】


「織田様の天下、ですかな?」


「そう思いますか?」


殿の質問にわしは少し、考えてみる。確かに武田を破った。


だが、ここから順調にいくのか。


「少々、引っ掛かりしものが」


正直に申してみる。


「そうですね」


それは、肯定か、はたまた只の相槌か。


それは殿の表情からは伺いしれなかった。


【元亀四年

随風】


織田方が勝ったか。そして山田は死ななかったか。


……


そうだな。山田を討ち取るのはおれだ。そこを間違えちゃいけない。


「弾正殿」


弾正は、無言で窓から外を向いている。


「信長……」


「信長が如何した?」


おれは弾正の呟きを逃さなかった。


「別に……」


こいつは、この松永弾正忠は争い大好きな火事親父だ。


その老人が天下様になろうとする信長を見て何かを思わないはずがない。


おれは剃った頭を丸く触った。


【元亀四年

雑賀孫一】


「諏訪四郎勝頼は大器じゃなかったんですか?」


「そう言うなや」


頬杖をついてむすっと尋ねたおれに、顕如さんは

苦笑いを浮かべる。


しかし、武田大敗。今川に至れば滅亡。


しかし、いつもスイカの種を飛ばすが如く捲し立てる顕如さんだが……


「ま、まあ、その、なにか考えでもあるんですか?」


静かすぎて逆におれが気をつかう。


「毛利を抱き込む」


ああ、毛利。山陰山陽の覇者。だが、義昭方でもなければ義栄方でもなく中立を保っていたはずだが。


毛利を抱き込めれば、勢力図は変わる。


義昭方は、織田、徳川、上杉。


義栄方は、武田、三好、北条、本願寺、紀州、

それに加われば毛利。


「ふうん」


どう毛利を抱き込むかは興味はない。


おれにとっての天下なんざ紀州だ。ただそれだけ。だからこそ、日ノ本を手中に収めようと邁進する上総介信長におれはただただ圧倒される。


だからこそ、勝ちたい。


だれの下でもなく、だれの上でもなく。


口笛を吹きながら、大通りを闊歩する。


そんな人生を送りたい。


【元亀四年

山田大隅守信勝】


「もう一度言ってくれ」


おれは手を震わしながら、長盛に聞く。


「は、ですから毛利陸奥守元就、遠行……」


そこはいいんだよ。そこは。


「後継者に毛利備中守隆元が当主に……」


「そこだよ、長盛くぅうん!」


そこだよ。隆元存命ってなに?順風満帆すぎるぞ。毛利。


あのアホでのろまでお人好しと名高き輝元が当主じゃないんかい。


「殿、それと……」


「あ!?なんかあるんならはよ言え!」


「いや、殿がもう一回と……」


あ、そうだった。


「あの、すまん。じゃあ、張り切ってどうぞ」


「奈佐殿より文が」


日本助からか。戦勝祝か?


おれは、手紙を預かる。


『当衆にて客人を預かりたり。』


客人?誰だ。


おれは読み進める。


『客人の代表の名を尼子孫三郎勝久』

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