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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第5章 転換!!
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第55話 相模

【元亀四年

足利中将義昭】


「武田、今川軍、退却!」


この知らせを受け、諸将がざわつく。


「つまり、徳栄軒信玄が死んだたということか……」


「恐らくそうであるだろう」


わしの質問に上総介が答えた。


「義昭公」


「なにかね?」


「酒宴を開く許可をどうか」


ふっ。信玄が死んだ祝い酒か。この男も第六天魔王を標榜しながら、人間らしいではないか。


「よかろう。ただ、わしも飲むぞ」


「はっ」


上総介は、平伏し諸将へ向き直り、

地鳴りのような雄叫びをあげた。


【元亀四年

山田大隅守信勝】


「うよっしゃああああー」


二条で開かれた酒宴では、色々な武将が奇声をあげている。まあ、皆、浮かれているんだ。


「ハハハ!信玄も殿を恐れておっ死んだのでしょう!ワハハハ」


一番、騒いでいるのは秀吉だ。扇子を両手に持ち、踊っている。


「さすが、筑州殿です!」


手を叩き、喜んでいるのは光秀。お前が手を叩くと魔物を召喚しているようにしか見えないからやめろ。


てか、この酒宴の米、思い出したが光秀の領地の坂本産だそうな。めっちゃ旨い。


「日州殿」


「なんですか?」


光秀がいつも通り、笑いながら言った。というか、その隠れた左目はなんなんだ。


「坂本の米は旨いですな。どうやったら、こんなに旨い米を作れるんですか?」


「民を大切にすること」


間髪入れずに返ってきた答えはうまく言えないが光秀らしいが、どこからしくないものだった。


【元亀四年

山県三郎兵衛尉昌景】


御屋形様が死に、その後継者は5歳。その陣代は

今まで我らより格下だった勝頼。


「くそが……」


不満ではない。どこかよくわからない感情がわしの胸を覆っていた。


「山県殿……」


「……釣閑斎か」


武田の奉行の長坂釣閑斎光堅。わしらとかかわり合いのないものがどうしてここに。


「死んだ兄を追うのはやめなされ」


わしの血は沸騰し、逆流したようだ。


「貴様……」


わしは、釣閑斎の胸ぐらを掴み持ち上げた。


くっ……


なぜこんなに怒っているのだ。わしは……


自分でもわからない。


図星……だからか?


無性に胸がざわつき、胸ぐらから手を離した。


【元亀四年

諏訪四郎勝頼】


陣代など、幻よ。一武将とかわりなく、風林火山の旗も、御旗も、武田に伝わる盾為もわしのものではない。


しかし、その地位は飛躍的に昇った。


この戦国の世で多くの守護が没落するなか、武田家はその守護の座を守り通してきた。


その武田家は成り上がりものを嫌う。


わしのこの陣代就任は、成り上がりではなく、

下剋上の類に入る。


フッと、笑みがこぼれる。


真田家ですら、信濃先方衆の枠内に収まり、それより上の地位は与えられていない。


このわしこそ父が唯一行った大抜擢か……


使命感などない。この成り上がり者が、家中をまとめるには勝つしかない。それも強大なる敵に。


つまり、織田に。


「相模……」


「あっ。勝頼様」


辿々しく頭を下げるのは、我が新しき妻の相模だ。まだ12歳。先の妻が亡くなってから、北条氏政公の妹である相模を貰い受けた。


この幼き妻には、なんだか素直になれる。


「陣代とは辛き道よの」


「そのようですね」


うん?相模が理解しているのか。


「ほう。わかるかね?」


「ええ」


「何故?」


ふっと、相模は微笑んだ。


「あなた様をずっと見ていますから。相模の夫はこの世で勝頼様たった一人なのですから」


「礼を言う」


まさか、相模に励まされるとはな。


「その、勝頼様。今夜こそ夜伽を……」


「我は年増しか抱かぬ」


わしがそう言うと、相模はひどく残念そうな顔をした。


……嘘だ。相模。お主のような可憐なる花を摘むことができぬのだ。




史実とは違い、もう相模が勝頼の妻になっております。


あと、勝頼陣代説を参考にしました。

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