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乱れしこの世で夢見たり  作者: 泰兵衛
第5章 転換!!
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第48話 多羅尾四郎右衛門光俊

【元亀三年 山田大隅守信勝】


早朝。峠の上より伊賀が見える。見晴らしがいい。


見晴らしがいい早朝に伊賀に乱入する。

軍師のあほ弾正の言葉だ。


采は弾正に任されている。が、大将の源五郎殿はこれだけ言っていた。


「兄上のお言葉だ。昼でも夜でも松明を持ち行動すること」


なぜかわからない。夜なら、奇襲が上手い忍を警戒してだろうが、昼はわからない。


が、信長の命令だ。


おれは、体で炎の熱さを感じていた。


いくか。


先鋒はおれで、その山田軍の先陣は慶次だ。


4つの口より4万5千の大軍が伊賀に乱入する。


「攻め込めー」


おれは采を降り下ろす。


元亀伊賀の乱とでもこれは呼ばれるのか?


【元亀三年

風間平助】


朝霧の中より金唐傘の馬印をいかめしく差し出せば甚だ朝日が出づるに異ならず


おれはお師匠がなにか書いているのをみた。


「なにしてんの?」


「後世の人にこの伊賀攻めのことを伝えるのだ」


「ふうん。まあ確かに朝日に見えないこともないね」


おれは織田一門の馬印である金の唐傘を見る。


でも、あんなきらきらしたものを朝日なんかと

例えてしまうのは、所詮、大名に顎で使われるしかないおれたち忍らしいと思う。


「平助。近江口の福山甲斐が織田に降伏したと」


「まあ、そうだろね」


こんな大軍じゃ当たり前だ。


「一応聞いとくけど、お師匠は降伏しないんだよね」


「ああ」


自信満々に頷いたお師匠はさらに言う。


「わしたち忍が侍になれるはずもない」


【元亀三年 山田大隅守信勝】


「落ち着け!落とし穴なんぞにまどわされるな!」


くっ。至るところに落とし穴がある。これが忍か。


「敵襲!」


おれたちが混乱している間に、数十人の忍が攻めかかってきた。


なるほど。大軍故の弱点をつくつもりか。だが


「鉄砲隊!はなてー!」


鉄砲には反応できまいよ。


火縄銃の命中率は3割。だが、その轟音で忍は

驚いているようだ。


「弓うて!忍を殲滅しろ!」


そこを命中率が高い弓で攻撃する。


「よし、次の攻撃に備え、穴から味方をひきずりあげろ」


ふう。たしかに奇想天外な連中だが、まとまっていない分だけ大丈夫だ。


聞けば。この伊賀には100を超える土豪がいるが、

それらが勝手にこの織田軍と戦っている状況らしい。しかも、中には裏切るものも多く、近江口の

信忠殿は破竹の勢いで進んでいるらしい。


拓殖家を大将とする大和口方面は裏切りがないな。


と思って地面を見ると、忍の一団が平伏している。


「あ?」


おれは思わず声が出る。


すると、その先頭の男が


「拙者、甲賀の多羅尾四郎右衛門光俊と申すもの。それがしらを軍に加えてほしく馳せ参じました」


「甲賀?伊賀と敵対するつもりか?」


「はっ」


後世では、伊賀と甲賀は敵対していたと言われるがそれは違う。かれらは協力関係にある。


「まあ、その顔あげてくれ」


「はっ」


……顔あげねえし。おれは馬から降りて、平伏する多羅尾の横に座る。


「顔あげてくれー」


「え??は、はい」


ちょっとびっくたように多羅尾は顔をあげる。


やべ。超イケメンじゃん。くそ、リア充爆発しろ。


まあ、このイケメンが驚いた理由もわかる。

忍はおれたち侍に人間あつかいされていない。

ものぐらいにしか扱ってもらっていないからな。


「で、馳せ参じてどうすんの?」


「はっ。武功を立てた後、銭をもらうつもりですが……」


「だったら、おれに仕える?」


「え?」


イケメン多羅尾は驚いている。


「ほう。信勝にしてはよい考え」


「けっ。祐光。にしてはとか言うな」


祐光も反対しないか。へえ。さすが、軍師。変態だけど。営み魔神だけど。


「もちろん、馬に乗って、政治にも口だしてもらうし、武士だからそれなりにめんどいこともあるけど、ま、アットホームだよ?」


あ、アットホームなんて言ってもわからないな。


「馬にも、政務にもですか?」


めっちゃ驚いている。


「多羅尾殿。この者は軽薄極まりない男にござるが、なせか運もあり、度胸もあり申す。信じてやってはくれませぬか」


祐光は、頭を下げた。


「頭を上げてくだされ!」


このイケメン、今日慌てすぎだ。


「そ、山田家に支えてくれよ。多羅尾さん~」


「忍のわしにこんなお言葉をかけてくれるとは……」


感激しているみたいが、泣いてはいないようだ。


「この多羅尾四郎右衛門以下忍50名、山田家にお仕え申す」


……今後とも、必ずいるんだ。こういう間者働きにすぐれているやつらは。


領内を治めるためにもな。



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